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掌編小説シリーズ  作者: 藤泉都理
2019.2.
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瓜二つ




「俺じつはあんたの兄貴の双子の弟なんだ」


 何故こんな虚言を吐いてしまったのか。

 単純至極な話である。

 いちに、ここから脱出したいから。

 にに、父親に会えたと感極まって泣き出す娘に同情、及び、娘を護衛しているであろう忍びの眼光に平伏した為である。


 兄貴(いや、真っ赤な他人だけど)を。娘さん、さららさんの父上を一緒に探そう。

 そう言わされて、牢屋から忍びによって助け出された俺は今、どこにいると思う?

 そう。まだ牢屋がある獄島の中である。

 当然だ。

 父親はここにいると踏んで彼女らは危険を顧みず来たのだから。



「よし。俺が囮になって看守を惹きつけるからおまえたちはその間に兄貴を探すんだ」


 よくまあこんなに調子のいいセリフを吐けるな俺舞台俳優になれるんじゃねどっかに紛れ込んで目指そうかな。

 などなど考えながら、発言のままに看守を一人で惹きつける。

 あれ俺すごくね。身体が超軽い。羽が生えているようだ。捕まる気が全然しないぜ。




「兄さん!」


 看守を撒いて、無事に合流できたと思えば、そう叫ばれて、勢いよく抱きつかれた俺。

 いいえ、人違いです。俺は一人っ子です。俺に似た弟はおりません。


「お父さん!」


 そう叫ばれて、勢いよく抱きつかれた俺。

 いいえ、人違いだったでしょう、さららさん。


「可哀想に。お父さん。看守の責め立てで記憶が曖昧になったなんて。こちらが本物のお父さんの双子の弟さんなのよ」


 どうもありがとうこの状況を教えてくれて。


(じゃねー。いやいやいや。俺の記憶は確かです。確か。だよな。おお。確か。なんにも飛んでないしよ。じゃあ。つーか、)


「苦しいんだけど」 

「これからおまえはさららの父親だ、無事にこの獄島から抜け出して無事に生きたければ俺の指示に従う事だな」


(おいぃぃぃ!この人が本物の父親、ぽい。いや本物かわかんねえけど。わかんねえけど!)


「さらら、さん」


 締め上げて来る父親っぽい男を無視して、忍びと喜びを分かち合っているさららさんに標準を定める。

 さららさんなんて、他人行儀な事を言わないでというお願いはひとまず横に置いて。


「あの。父親だという証はなにかないのか?その写真以外に」

「ええ。脇腹に稲穂の痣があるってお母さんに聞いた事があるわ」


 脇腹!俺の脇腹にそんなのねえ!

 これ以上は付き合え切れない。さっさと脱出する為にも脇腹を見せて違うと証明して、この男の脇腹を見せりゃあいいだろ。

 即断し、着物をたくし上げる。

 さららさんは即座に口に両の手を添えた。

 きたねえ俺の裸を見せてしまって申し訳ない。

 安心してください。ふんどし巻いてます。


「やっぱりお父さんよ。よかったわ。ねえ忍び」

「え゛?」


 いやいやいや。覗き込んだわき腹に何故稲穂の痣が!?

 いやいやいやいや。これはダニじゃね?ダニに噛まれた痕じゃね?

 手に手を取り合って喜んでいるのは数秒。確信を得たらしいさららさんと忍び(本名か?)はさっさと脱出するぞと先導してくれている。いや行くよ。勿論ついて行きますよ。だって早く逃げたいもの。でも、


「俺はさらら様の御父上の影武者で、あの方は今とある組織壊滅の為に影で動いていて。もうじき解決する。それまであの方の振りをして、安全な地でさらら様の父親として共に過ごせ。安心しろ。御母上様には話が通っておる」

「え?御母上って俺の母親の事?」

「さらら様の御母上だ」

「あ、健在なんですか、よかった……って。なんで俺、あんたが「私はあのお方に助力する。何も知らぬさらら様は限界を超えてしまった。もうあのお方を待つ事ができぬのだ。故におまえが欺き続けろ。危険な事をしないように」

「いや。ええー」

「牢屋に戻りたいか?」

「お供します」


 仕方ないのだ。とにもかくにも脱出する事が先決。

 安全な場所だっていうし、もう少しで本物の父親も帰ってくるっていうし。

 ほんのちょっぴり、良心の呵責がうずくけど。


 こうして、無事に獄島から脱出できた俺たちは、さららさんと忍さんと一緒に里へと向かったのだった。

 いつの間にか、自称影武者はいなくなっていた。

 


 



 




「いやいやいや。おかしくない?おかしくない?なんで俺置いて行かれるの?本物の父親。しかも俺国王。国王なのになんで獄島の牢屋に押し込められているわけ?」

「奥方様からご伝言を預かっております。【娘を可愛がってくれるのは大変喜ばしいのですが、仕事に精を出さないと、あなたに瓜二つの男性と人生をやり直しますよ】だそうです」

「いやいやいや。そんなのできっこないじゃん。外見で結婚したわけじゃないですよぼくたちは。内面も込みで結婚したんですよ。そうですよ。そうだと言ってくれないかな?言ってちょうだい!」

「では私は王の代わりに城へ帰らなければなりませんので。看守は国王だと知っていますのでご安心を」

「全然ご安心じゃないよ。あいつら国王だからって無理難題押し付けてくるからね。国王全知全能だと勘違いしているからね」

「獄島の整理整頓が終わりましたら迎えに来ます。早く片付けないといけませんよ。奥方様に愛想を尽かされる前に」

「え?え?ちょっと待って?え?本気で置いて行くの?ちょ、待って。待ってください!!!」





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