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掌編小説シリーズ  作者: 藤泉都理
2019.1.
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ハードボイルドクリスマス




 本日は、クリスマスである。

 そして、何千年かに一度、サンタ長の気紛れで行われる、とてもくだらない勝負の開催年でもある。

 紹介が遅れた。

 自分の名前はトッチー。

 サンタの相棒のトナカイである。

 

 さて、早速だが、とてもくだらない勝負とは何かを説明しよう。

 いかに迅速に、丁寧に、気付かれずに、心を砕いて、家の中に侵入、用意されている牛乳とクッキーを食べて、プレゼントを子どもが用意している靴下に入れるかを競うのである。

 全サンタが。

 とてもくだらない勝負である。


「ねぇねぇ、トッチー。わし、今回こそベストオブサンタナンバーワンサンタになるからね」


 そう言って、毛並みを優しく整えてくれるのは、自分の相棒のサンタである。

 かなり頼りないサンタではあるが、これでも一家を支える大黒柱。家に帰れば、妻と子どもが待っているのだ。

 きっと、彼女らに喜んでほしくて、目指しているのだろう。

 くだらないと思うが、夫として、父親として、誇れる存在でありたいと願う彼の心意気は、まあ、わかろうとはしている。




 

「んん。とても美味しいね」


 確かに旨そうだ。そして迅速に食べている。クルミを食べるリスのようだ。

 けれど、自分は心配で仕方ない。

 気管支にクッキーや牛乳が詰まらないだろうか。

 気のせいではないはず。たぽたぽ腹の中から消化しきれてないよと訴える声が聞こえる。

 普段はゆっくり咀嚼して、まったり消化するから、そんなに急いでは限界が訪れるのは明白。

 しかし、止めない。


「はい。プレゼント」


 サンタはとても慈愛に満ちた言動で、子どもが用意した靴下にプレゼントを入れている。

 自分も真っ赤な鼻を子どもの額に、ぽんっと優しく添える程度に置く。

 これでこの家は終了。あと百件だ。





「んんん。とっても、美味しいね」


 何故だろう。身体の膨らみが増すのに比例して、動きの速度が上がっている。

 身体が危機感を警告して、早く任務を達して休ませようとしているのか。

 生命の神秘である。

 これには少しばかり感動した。




「やった!やったよ。トッチー。一位だって!」

「よかったな」


 あまりよくないと思うが、一応は労いの言葉を掛けてやる。

 頑張った事には頑張ったのだ。


「奥さんと娘さんもさぞ喜ぶだろうな」

「え?」

「ん?」


 何故首を傾げる?彼女らの為に一位を目指していたのではないのか?

 そう言えば、サンタは違うよと朗らかに笑った。


「相棒の、トッチーの誇れるサンタだって、胸を張りたくて頑張ったんだ」

「サンタ。よくやったな。けど」

 

 順位など要らないのに、

 莫迦だな。


「サンタの誇りは、ずっと感じていたさ」

「うん。うん。ありがとう。トッチー。ありがとう。わし、これで、もう、」

「サンタ。メリークリスマス」

「トッチー。メリークリスマス」










「楽しいね、トッチー」


 前略。

 今まで語った事はすべて夢であり、実際のサンタは順位など微塵も気にせず、ただお祭り騒ぎを楽しんでいるだけである。

 それでこそ、相棒のサンタである。


  




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