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掌編小説シリーズ  作者: 藤泉都理
2018.11.
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やつで




 やつで。

 別名、天狗の羽団扇。

 

 うちの庭にはやつでが生えている。

 初冬に白い小花は神楽鈴を形どり、深緑の葉は指を最大限に広げた感じの、天狗がよく持っている植物である。


 まことに迷惑な話である。

 植物には決して罪はないが、どこぞの目も届かぬ土地へと移転してほしいものだ。

 切に、




 季節は11月下旬。

 年の瀬が刻一刻と迫る時期である。

 学生はクリスマスやお正月に心を弾ませ、会社員は年末の仕事に飲み会にと追われている。


 かくや天狗も会社員の一員であった。




「ここは毎年、毎年、見事なやつでがなる。仕事もはかどるというものだ」

「愚かな。吾らが丹精込めて育てた故、当然の摂理である」

「両者とも。まずはやつでを刈らずにいてくれる人間に感謝を述べねば」

「「見えぬ人間にか?」」

「もちのろんである」

「おぬしは毎年毎年、律儀な事だ」

「見えぬ下等な生物に」

「下等だろうが上等だろうが関係ない。これからの仕事を滞りなく行う為にも。はい」

「「「合掌」」」

「「「しかし、」」」

「「「見えておったのなら、貢物でも欲しい所だがな」」」




 ・・・

 ・・・・・・

 ・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・

 どうかどうか!

 私が見えている事は決して、けして。勘づかれませんように気付かれませんように!

 




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