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掌編小説シリーズ  作者: 藤泉都理
2018.9.
32/2265

秋の社日



 

 天高く見上げれば、うろこ雲

 息をしやすくなった、清涼な風

 背に腕にと実感するのは、豊作の証

 自然、鼻歌を奏でたくなるってもんだ


 本日は、秋の社日

 春に山からやって来て、作物を実らせてくれた田の神様が山に帰る日

 なので今現在、土地の産土神を祀る社へ豊作を祈って、感謝するお参りに行く途中であった


 


 いつもなら、ひとっ飛びで終いの石段三段をきちんと一段一段上って、曇り色の鳥居を潜る。

 いつもなら、踏ん張って飛び越えれば終いの石畳の参道をきちんと一歩一歩踏み締めて、本殿の前に立つ。

 いつもなら、お気持ちだけですがと断りを入れるだけなのだが、胸を張って台の上に風呂敷に包んでいた野と田の実りを供える。


「神様あ!今年もありがとうございましたあ!来年もどうぞよろしくお願いしまあすぅ」


 厳かに、地にひれ伏す心持ちで、音を以て言葉を添えた後に、二礼二拍手一礼。

 顔を上げて、瞼を閉じて、微かな音に傾聴。

 い、ろ、は、に、をすべて数える。

 瞼を開けてわかるのは、野の実りだけが抜き取られている現状。

 今年もまた、



「まだまだ神様のお口には合わないかあ」



 悔しいなあ。

 音に出さず、一礼して、田の実りを風呂敷に包み、背に負って、また一礼。


 来年こそは、神様に食べてもらうんだ。


 瞳に力を宿して、本殿に背を向けて歩き出す。

 参道、鳥居、石段までは厳かに、

 それからは駆け走る。




 

 これから訪れる冬の色を乗せた風が、真正面から叩きつけられるようにぶつかって来た。

 それでも、否、なおさら、速度が増していく。

 本当は速度を落とした方がいいのかもしれなくても、止まれない。




 まだまだではなく、まだ、ではないのか。

 

 咎めか、自問か。


 答えは未だに出せてはいない。




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