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掌編小説シリーズ  作者: 藤泉都理
2018.9.
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畳の理




 家族親戚一同が集まる場として特化している畳の部屋。

 主に正月やお盆しか利用されないその場所に、ひっそりと足を運ぶ人物が二人居た。


 


 ああ、今日は機嫌がいいのか。


 あなたの片頬に刻まれている畳の跡を見つけて、心の内でひっそり微笑む。


 嬉しかったり、楽しかったりした事があると、その感情をひとり噛み締めたいのか。

 あなたは畳の部屋に足を運んでは、暫しの間そこに居着いてしまう。

 そんな時、ご飯やテレビの呼びかけ、話したい事をそっと内に留めて、出て来るのを待っている。

 そう時間が経たないうちに、うっすらと畳の跡をつけてあなたは出て来る。




 何かあったの、とは尋ねない。




 あなたが口を開くまでは、

 



 ああ、今日は機嫌が悪いのか。


 あなたの片頬に刻まれている畳の跡を見つけてしまい、心の内でむっすり口をへの字にしてしまう。


 哀しかったり、辛かったりした事があると、ひとりその感情を制御したいのか。

 あなたは畳の部屋に足を運んでは、暫しの間そこに居着いてしまう。

 そんな時、ご飯やテレビの呼びかけ、話したい事をそっと内に留めて、出て来るのを待っている。

 大概が翌日休日で、だからそのまま眠りに就いてしまい、濃く刻まれた畳の跡を見る事もしばしば。



 

 何があったのと、尋ねない、




 あなたが口を開くまでは、





 

 ひとりで抱えたい時、けれどひとりだけでは成り立たない。

 長い刻の末に辿り着いた、音を介さない、理のことのはのコミュニケーションであった。

  




 だから、極まれにその部屋で遭遇しても、見てみぬ振りで、互いに背を向けるのだ。





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