畳の理
家族親戚一同が集まる場として特化している畳の部屋。
主に正月やお盆しか利用されないその場所に、ひっそりと足を運ぶ人物が二人居た。
ああ、今日は機嫌がいいのか。
あなたの片頬に刻まれている畳の跡を見つけて、心の内でひっそり微笑む。
嬉しかったり、楽しかったりした事があると、その感情をひとり噛み締めたいのか。
あなたは畳の部屋に足を運んでは、暫しの間そこに居着いてしまう。
そんな時、ご飯やテレビの呼びかけ、話したい事をそっと内に留めて、出て来るのを待っている。
そう時間が経たないうちに、うっすらと畳の跡をつけてあなたは出て来る。
何かあったの、とは尋ねない。
あなたが口を開くまでは、
ああ、今日は機嫌が悪いのか。
あなたの片頬に刻まれている畳の跡を見つけてしまい、心の内でむっすり口をへの字にしてしまう。
哀しかったり、辛かったりした事があると、ひとりその感情を制御したいのか。
あなたは畳の部屋に足を運んでは、暫しの間そこに居着いてしまう。
そんな時、ご飯やテレビの呼びかけ、話したい事をそっと内に留めて、出て来るのを待っている。
大概が翌日休日で、だからそのまま眠りに就いてしまい、濃く刻まれた畳の跡を見る事もしばしば。
何があったのと、尋ねない、
あなたが口を開くまでは、
ひとりで抱えたい時、けれどひとりだけでは成り立たない。
長い刻の末に辿り着いた、音を介さない、理の葉のコミュニケーションであった。
だから、極まれにその部屋で遭遇しても、見てみぬ振りで、互いに背を向けるのだ。




