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掌編小説シリーズ  作者: 藤泉都理
2018.6.
3/2104

不器用者のごっこ遊び




 人の手を借りなければ起きる事さえままならなくなった身体を横たえたまま、窓の外を見る。


 今日はこの季節にしては肌寒い日であり、紫陽花が生き生きしているように見える日でもあった。



 こんにちわ。お届け物です。



 純白の仮面と漆黒のマントを身に着けたあいつが毎度お馴染みの手紙を枕元に置く。


 白い封筒に入った真っ白な手紙。

 置けば、さっとマントを翻して、この部屋を立ち去る。


 転びはしないかと、幾許か心配する。

 口には出した事はないが。



 次には灰色寄りの白のブラウスとチェックのスラックスを身に着けたあいつが、ゆたゆたと歩み寄って来て、枕元で膝を曲げて手紙を手に取る。


 封のしていない封筒から取り出し、折り畳まれた手紙を広げる。


 間が空く。



 今日も真っ白。



 元気な声音で元気よく笑う。



 そうか。ならまだだな。



 はい。



 読み取れはしないが、文字は透けて見える。


 けれど、あいつが真っ白だと言えば、真っ白なのだ。



 存外、死神も暇なものなのだな。毎日毎日。これで何通目だ?



 151通目。



 全部取ってあるのか?



 はい。



 偶には、自分の目で読みたいが。



 これは、私にしか読めないの。



 そうか。



 はい。



 あいつは手紙を持って、ご飯を用意してくるとそのまま立ち去る。




 いつになったら、届けてくれるのか。


 1通目から変わらないだろうその手紙の中身を。



 早く伝えてほしい。


 伝えてくれねば、返してやれない。


 反面、まだまだ続いてほしいとも思う。


 まだまだ、



 その刻が来るまでは、















「大死神のとう!じょう!」

「年甲斐もなく止めてくれ」

「こしにがみのとう!じょう!」

「手紙の配達かな?」

「はい!」



 大死神にぴったりくっつく小死神の姿に、願望を抱く。


 ああ、はやく腰を治して、孫と思いきり遊びたい。と。


 同時に危惧も抱く。


 ああ、腰を治したら、また近づいてきてくれなくなるかなと。




 誘えない自分も大概なのだが。




(おばあちゃんには何でも言ってくれるのになあ)




「何だこれは?」

「大死神からの手紙」




 こちらはまだ真っ白だ。





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