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掌編小説シリーズ  作者: 藤泉都理
2018.9.
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菊人形




 菊が嫌いだ。

 

 恐怖の依り代である菊人形を思い出すからだ。



 

 菊人形本体はありありと細部まで思い出せるのに、いつ、どこで見たかは全く覚えてはいない。

 両親に詳しく聴いても、その情景さえ思い出せない。


 菊人形もそうであればいいのに、


 そもそも、頭部も菊で作っていればとてもファンシーで問題はないはずだ。

 何故、頭部だけ木彫りで、あんなにもリアルな、今にも不気味に動き出しそうな武者を創り出したのか。


 そして今何故、決して視界に入れたくない菊人形と相対しているのか。


 

 どういう仕組みなのか。

 目玉を四方八方に動かしている自覚はあるのに、菊人形に視線は固定されている。

 

 自分から目を逸らすなという事か。


 諦めきれずに目玉を動かし続けながらも否が応にも目に入る菊人形は、精悍な武者の顔に臙脂一色の菊の着物を身に着けている。

 冷静な部分では、モテそうな顔つきだとの感想を持てるのに、どうしたって恐怖感が拭えない。


 どうすれば怖くなくなるのか。


 諦め悪く目玉を動かしつつ、現状打破を考える。


 ぐるぐる、ぐるぐる。

 ぐるぐる、ぐるぐる。


 答えを見つけられずにいると、菊人形が何故かこちらに一歩、また一歩と近づいてくる。

 その度に、マントのような着物から、一輪、また、一輪と、臙脂の菊が純白の地に落ちる。

 

 血痕と間違えそうなそれは、けれど、刹那の間だけ。


 当たり前に、菊である。

 花言葉にあるように、容易く触れられない高潔さを持つのに、花特有の可憐さも備える一輪の菊。


 頭より先に身体が動く。


 落ちた一輪の菊を拾い上げて、真上に飛び上がり、木彫りの頭部、ご丁寧に再現された耳の中に突っ込む。

 本当は鼻の中、もしくは髪の部分がよかったが、引っかける部分がなく落下してしまう為に断念。


 よし、これで………あまり、怖くなくなった。

 愛嬌が出た。




「怖くなくなったのなら、僥倖。これで、総ての菊人形を浄化できるな」



 夢から覚醒。

 眼前に菊人形の顔。

 頭の片隅に痛いと警告が出るも、危機的状況下での条件反射で拳を作り、横っ面を殴る。




 だから全部菊の花で創ればよかったのだ、




 怖いままでいれば、この状況を創り出す事はなかったのか。

 暫しの間、菊人形と行動を共にしなければならなくなった私は、いつ何時も自問自答するのだ。





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