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掌編小説シリーズ  作者: 藤泉都理
2026.8.
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2512/2533

タイムスリップ運動会




 今年から働き始めた娘に代わり、孫娘の紗和さわの運動会の弁当作りを頑張ろうと思った矢先のことである。

 紗和から言われたのだ。


 運動会は午前で終わるからお弁当は要らないの。

 給食があるの。

 午後は普通に授業があるの。

 ほら、九月といってもまだまだ暑いでしょ。

 だからね、午前中だけになっちゃったの。しかも参加できるのは一人二種目だけになっちゃったの。みんなで踊るのと、リレー。

 え、おばあちゃんの時代は、午後まで運動会をやってたの。しかも一人五種目も出てたの。組体操、リレー、借り物競争、騎馬合戦、踊り。ええ、女の子も騎馬合戦やってたの。うっそだあ。え、え。しかも、おばあちゃんのお母さんが張り切って三重のお弁当箱に、おにぎりといなり寿司とからあげとエビフライとイカフライと卵焼きとポテトサラダと肉じゃがを作ってくれて、しかもデザートはナシとブドウとカキなの。うわあ、いいなあ。ご馳走じゃん。私も食べたかった。え。夕飯に作ってくれるの。三重のお弁当。やった。じゃあ。ポテトサラダは絶対にメイクイーンじゃなくて、男爵にしてね。うん。私、ポテトサラダは男爵がいいの。肉じゃがはメイクイーンがいい。ほんとう。本当に本当。約束。

 やったやったやった。私、頑張るね。リレー。一番にならなくてもいいって先生は言うけど、私一番目指すから。もう、おばあちゃんも頑張ったらそれだけでいいとかやる気を奪わないでよね。






(ふふ。まるでタイムスリップしたみたいだったね)


 運動会当日。

 いつもよりほんの少しだけ早く起きた午前五時から、興奮して早く寝て早く起きた紗和に纏わりつかれながら料理を作っていた紗和の祖母、吉海江きみえは懐かしい気持ちでいっぱいだった。


(私も運動会の日は早く寝て早く起きて、料理をするお母さんに纏わりついて。食べたいってねだって。お楽しみだからだめだって食べさせてもらえなくて。ふふ。私は紗和につまみぐいをゆるしましたけど。いいですよね。だって。お弁当をお昼に食べられないんだから)


「さ。じゃあ、行ってきますね。おじいさん」

「おう」


 おじいちゃんに見られるのは恥ずかしいからと、紗和に運動会に来ることを禁じられた紗和の祖父、松柏しょうはく。吉海江に背中を向けては広げた新聞紙を読みながら返事をした。

 写真をいっぱい撮ってきますからね。

 ふてくされた声音を発する松柏に苦笑しながら、スマホと日傘と水筒とハンカチを持って、吉海江は家を後にしたのであった。




「まだまだあついわねえ」


 水筒を動かしては僅かに鳴り響く氷の音に涼しさをもらい、吉海江は小学校に向けて歩き出したのであった。











(2026.8.31)


【経緯】


〇「メイク」を見て真っ先に思いついたのが、化粧だけれど、化粧でまったく思いつかなかったので、「メイク」のつく言葉を探すと、「メイクイーン(メークイン)」を発見。「メイクイーン(メークイン)」を調べると、「煮崩れしにくく、カレー、シチュー、おでんに合う」、男爵は「煮崩れしやすく、ポテトサラダ、コロッケに合う」とあり、「メイクイーン」と男爵それぞれにこだわりがあるお孫ちゃんを出そうと決める

〇「タイムスリップ」からおばあちゃんが思い浮かぶ

〇「運動会」は「運動会」のままで


 これらを組み合わせて完成しました。





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