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掌編小説シリーズ  作者: 藤泉都理
2026.5.
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2384/2447

スナック菓子の君とアメ菓子のおまえと

「『カクヨム』の自主企画「書き出し指定(「さくっとした、スナック菓子みたいな温度の言葉だった」)で物語を書いてほしい!!!!」参加作品です」






 さくっとした、スナック菓子みたいな温度の言葉だった。


 禁煙に励んでいる六十代男性、元俳優、現新聞配達アルバイトのしゅうは、煙草の代わりにと常に手放せずにいながらも食べ過ぎに自重もしているスナック菓子、ベジたぶるあっさりサラダ味を律儀に一枚一枚取り出して口に含んで食べてのち言った。


 赤、緑、黄、黄、緑、緑、黄、赤、赤、緑。


 三色の網目状の四角い形をしたスナック菓子が、次から次へと幼馴染の秀の口の中に吸い込まれていく様を真正面から見つめていた六十代男性、元警察官の千草ちぐさは、秀と同じく禁煙中の身であり、常に手放せないながらも舐め過ぎに自重もしている黒糖飴を右頬から左頬へと転がして、あっさりと返した。

 さくっとした、氷菓子みたいな温度の言葉だった。

 身構えていた秀はあまりのあっさりさに、それだけなのかと目を丸くしながら尋ねた。


「殴らないのか?」

「殴らないね」

「怒ってないのか?」

「怒ってる怒ってないという問題ではなく。疑問? 何で今言ったんだって思ったね。俺が警官を辞めて、もう、三年ぐらい経つだろ。タイミング的にどうなんだって。いや。そもそも。何で言ったんだって。墓場まで持って行けよって思った。いや。どうなんだ? 言ってくれて嬉しい。いや………どうなんだ? 分からない。何で今言ったんだ?」

「ベジたぶるあっさりサラダ味のスナック菓子が言わせた」

「ふざけてんのか?」

「ふざけてはいない」

「だったら、これからどうこうなりたいって事なのか?」

「………いや。何も考えてはいなかった。ただ、言いたくなった。らしい」

「………ああ、そう」

「いや。もしかしたら、気づかない内に、覚悟が決まったのかもしれない。もう、警察官じゃないおまえに気兼ねする必要はないって。俺ももう俳優を辞めて注目を浴びなくなって。落ち着いて、四十年前のおまえの告白を漸く受け入れる事ができるんじゃないかって。返せるんじゃないかって。自分でも気づかない内に覚悟が決まってたみたいだ」

「ああそう」

「もしかしてもう遅いのか?」

「………」

「そうだよな。独り身だからって。おまえが俺を待っていたって事じゃないよな」

「………そうだね。君にフラれてから、警察官一筋で生きようと決めて、がむしゃらに、誠実に、警察官として生きて来て………そうだね。今は。まだ余韻に浸っている最中かもしれないな。だから。本当はとても好きだった交際したかったパートナーシップ契約を交わしたかったと言われても。現実味が湧かないかもしれないな」

「そうか。そうだよな。告白した俺も現実味が湧いていないからな」

「ふざけているよね」

「そうだな。ふざけていると思われても仕方ないかもしれない。だが。ふざけてはいない事だけは分かってほしい」

「ああ。分かった」

「ありがとう」

「ああ」

「じゃあ。これからも。幼馴染として、禁煙仲間として、そして、恋仲になるかもしれない関係として、改めてよろしく頼む」

「………」


 秀から四つの小袋が連なっているベジたぶるあっさりサラダ味のスナック菓子を差し出された千草。無言で見つめてのち、四つの小袋に仕分けた黒糖飴を秀に差し出しては、同時に受け取ったのであった。


「どう転ぶか分からないが、よろしく頼むね。秀」

「ああ。末永く、よろしく頼む。千草」


 共に開封しては、秀は黒糖飴をひとつ、千草はベジたぶるあっさりサラダ味のスナック菓子の赤、黄、緑の三枚を手に取っては、口の中に入れたのであった。











(2026.5.31)




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