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掌編小説シリーズ  作者: 藤泉都理
2025.12.
2200/2231

ファーストコンタクト






(参考文献 : 「「3I/ATLAS」きょう地球最接近“電波”を観測も「人工物ではない理由」…太陽系外から飛来した謎の恒星間天体(2025年12月19日(金)18:00)






 太陽系の外から飛来した天体。

 東京から大阪の間をわずか十秒ほどで移動するほどの猛スピードで横断。

 人工的な信号とおぼしき電波を放出。

 以上から。

「3I/ATLAS」が宇宙人・知的生命体の乗り物説が浮上している。






 連れて帰ってきてくれないかな。

 少女、加奈子かなこは空を見上げながら思った。


 緑色の尾を引いているらしい「3I/ATLAS」が連れて帰って来てくれないかな。


 宇宙へと飛ばされたニヒルな笑みがよく似合う彼女を、道子みちこを宇宙人または知的生命体が連れて帰って来てくれないかな。

 危険だと認識された道子は逃亡も反撃もする事なく、ただ黙って従った。

 ずっと傍に居ると約束を交わしたのに、道子は行ってしまった。

 加奈子は普通の少女になった。

 もう危険な場面に遭遇する事もなければ、危険な呪いと闘う必要もなければ、危険な怪我を負う必要もない。

 ただの普通の少女、何のとりえもない少女になってしまった。


 別に。

 加奈子は思った。

 別に普通の少女が嫌なわけではない。危険な毎日を送って来た。普通の日常に違和感はある。けれど、送れないわけではない。

 ただ。道子が居たら楽しめるのだろうと、ぼんやりと思った。


 私が生み出した呪い、道子。

 道子が居たから危険な毎日を送る事になった。

 私が呪ったから道子が生まれた。

 私が呪いさえしなければ道子は生まれなかった。


 ニヒルな笑みがよく似合う道子。

 加奈子は一度も尋ねた事はなかった。




(私を、呪いたくないか)




「いたっ!?」


 夜にもかかわらず、昼間、いや、昼間以上の明るさが世界を露わにした刹那。

 あまりの眩さに視覚のみにかかわらず、全身に痛みが生じる中。

 ふと、懐かしい気配に包まれた加奈子は涙を流しながら、使い物にならない目を必死になって開いた。


「迎えに来ましたよ。加奈子」

「………みち、こ?」

「ええ。宇宙人に身体改造をされたニュー道子です。宇宙人は地球で生まれた私にとても興味を持ってくれまして。分析と引き換えに私が宇宙に適応する身体にしてほしいと頼んだら改造してくれました」

「え。はは。なに、それ」

「行きましょう。加奈子。こんなせせこましい星を飛び出して宇宙旅行しましょう」

「私も身体改造をして?」

「嫌ですか?」

「っふ。嫌だと思う?」


 瞳を充血させた加奈子へとニヒルな笑みを向けた道子。行きましょうと囁くと、加奈子は蠱惑的な微笑を浮かべたのであった。











(2025.12.28)




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