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掌編小説シリーズ  作者: 藤泉都理
2025.12.
2199/2231

金の卵ちゃん








 出題です。

 スレンダーで色気ムンムン女性、愛子あいこの艶めいた声音が頭の中でいついつまでも響いた。


 出題です、私の好きな卵は何でしょう。






 偶然だった。

 勇者パーティーの一員である遊び人であり賢者でもある望羅ぼうらは、内心で言い訳を口にした。

 偶然だったんだ。

 初めて訪れる町で。

 勇者、武闘家、魔法使いと別れて単独行動に入り、ぶらぶらしていると。

 たまたま、今、夢中の女性、愛子の好きな卵、イクラを生み出してくれる鮭を発見したのだ。

 今現在不漁で高騰しまくっているイクラを生み出してくれる鮭が、今、そこに、うじゃりうじゃりと池の中いっぱいに泳ぎまくっているのである。


 池の持ち主に頼んでイクラを分けてもらう。

 盗む。


 頭の中で点滅する二択。

 仮にも勇者パーティーの一員なのだ、盗みなどありえない。

 ふっと、微笑を浮かべた望羅。きょろきょろと周囲を見渡しては、池の所有者は誰か歩行者に話しかけた瞬間。盗みよと騒がれてしまった。


「ちょちょちょちょっ! 待って待って待って! 俺は盗んでない盗んでない盗もうかなってちょっと思ったけど盗んでない」

「だったらその両手に持っているのは何なんですか?」

「ええ? 両手には何も………げっ」


 望羅は目を見開いた。

 両手にそれぞれ一匹ずつ鮭を掴んでいたのである。


「え? あ………っふ。なるほど」


 慌てふためいたのは刹那。

 賢者らしく思考を駆け巡らせた望羅は、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。


「なるほど。なるほど。っふ。あなた。魔法を使って俺に盗みの手袋を装着させましたね」

「変な事を言わないでください。私、魔法は使えません」

「ええ。そうですね。あなたから魔法の力はまったく感じられない。だが。魔法の力を一時的に消しながらも魔法を使えるアイテムはある。かなりレアなアイテムですが。ああ。そういえば、聞いた事がある。レアなアイテムを集める収集家の話を。まったく迷惑な事に悪戯好きで、よく騒ぎを起こす一匹狼が居ると。名前は確か。山楽さんらく

「………」


 歩行者の少女は不機嫌な表情を露わにしては、舌打ちをした。


「あんた。面白くない」

「申し訳ないね。一応俺、勇者パーティーの一員だからさ。女性に現を抜かすのはいいけど、犯罪者になるわけにはいかないわけよ」

「へえ。あんた。勇者パーティーの一員なんだ」

「そ。だから」


 望羅は傍目には何も装着していない手の手首を掴んでは、勢いよく指先まで引っ張り上げた。その瞬間、濃紫色の手袋が露わになったのである。


「正体さえ分かれば、この通り。解除できる」

「ほんと。面白くない」

「申し訳ないね」


 もう片方の盗みの手袋も外すと、望羅は炎の魔法で盗みの手袋を燃やし尽くしては消し炭にした。


「金の卵ちゃん。どうだい? 俺と一緒に勇者パーティーの一員にならないかい? 収集家が居れば、魔王討伐にまた一歩近づくと思うんだけど」

「………考えとく」

「あらら。断ると思った」

「あんたの吠え面を見たいなら、近くに居た方がいいでしょ。でも、一匹狼も捨てがたいし。だから保留。じゃ。今日はこの辺で。ああ。ちなみに、その池の所有者は市長だから。鮭愛好家で、指一本でも触れたら、即刻牢屋行きらしいから」

「………いやでも誰も俺を捕縛しに来ないじゃん」

「あんたに話しかけられた瞬間、あんたと私以外の時間を止めた」

「………まじ?」

「まじ。じゃ。たんとお仲間さんに迷惑をかけておいで」


 幼い顔立ちから一変、蠱惑的な微笑を浮かべた少女、山楽に思わず口笛を吹いてしまった望楽。いつまでもお待ちしていますよ金の卵ちゃんと、無数の警備兵に身体を押さえつけられながら言ったのであった。











(2025.12.27)




「『カクヨム』の「カクヨムコン11」【お題「卵」】カクヨムコン11お題フェス短編(2025.12.23-30)(タグ お題フェス11)」参加作品です」




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