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掌編小説シリーズ  作者: 藤泉都理
2025.12.
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未知の領域の餅つき大会




「決着をつける時が来たようだな」

「ああ」


 二十代男性である大寒だいかん大雪たいせつ、大寒の双子の弟である小寒しょうかん、十代の少年であり大雪の弟弟子である冬至とうじは互いに腕を組んで向かい合っていた。

 季節は冬。

 冬といえば、餅つき大会。

 そう、双子の兄弟である大寒と小寒、兄弟子と弟弟子である大雪と冬至の因縁の対決の火蓋が今、切って落とされたのである。


「そなたたちには負けない」

「あなたたちには負けないぞ」


 純白の割烹着とほっかむりを身に着けた大寒と小寒は言った。


「おまえたちには負けません」

「君たちには負けないです」


 純白の割烹着とほっかむりを身に着けた大雪と冬至は言った。

 

「「「「いざ尋常に餅つき勝負だ」」」」






 前日の準備。

 十時間以上もち米を水に浸す。

 設置した石臼に水を浸し、その中で杵の頭の先端を十センチメートルほど一晩水に浸しておく。


 当日の準備。

 もち米の水を十五分ほど切って、蒸す。

 石臼の水を捨ててお湯を張って石臼を温めておき、表面までしっかり温まったらお湯を捨てて中を布で拭く。

 蒸したもち米を石臼の中に入れる。

 もち米の形を全部崩し潰し終えたら、餅つきの準備完了。である。






「小寒。準備はいいな」

「ああ。兄さん。いいぞ」


 双子の兄である大寒が返し手を、双子の弟である小寒が搗き手を担っていた。


「冬至。任せた」

「はい。どんとこいです。大雪兄者」


 兄弟子である大雪が搗き手を、弟弟子である冬至が返し手を担っていた。


 息が合う事が求められる餅つき。

 冬の風物詩でありながらも、返し手がもち米を返している時に、杵で勢いよく返し手の手を突いてしまったらもうその場は阿鼻叫喚と化してしまう恐ろしい行事でもあった。


 ちらちらちらちら。

 粉雪が舞い散り、すでにこの町の特産物と化していた大寒、小寒の双子の兄弟と大雪、冬至の兄弟子弟弟子の餅つき勝負を見ようとギャラリーが白い息を吐いて囲う中。

 蒸気を身体から発生させる大寒、小寒、大雪、冬至の四人は、互いに目配せをしてのち、はじめと声を揃えて言うと同時に、搗き手の小寒と大雪が杵を天高く振り上げては勢いよく振り下ろしたのであった。


「「「「はいはいはいはいはいはいはいはい」」」」


 流石は双子の兄弟だ。

 流石は兄弟子弟弟子だ。

 目にも止まらぬ速さで餅を搗いては返す息がピッタリの四人の姿にギャラリーは寒さも忘れて、否、熱を帯びながら魅入っていた。


「なんだ。なんだ。これ。ええ? なんだよこれ」


 ギャラリーの一人、中学生の少年の立春りっしゅんは、四人の動画を撮っていたスマホを下ろしていた。下ろさざるを得なかった。スマホ越しにあの四人を見たくなかった。この二つの瞳で確り見届けたかった。なのに。涙がしとどに溢れて、四人を確りと見る事が叶わなかった。

 未知の、衝動だった。

 胸の内から震える、腹の内から熱くなる、未知の衝動。

 まんじりともしたくない一方で、身体の限界まで駆け走りたくなるこの衝動。

 大寒と小寒、大雪と冬至の二組がそれぞれ息がぴったりなだけではなかった。

 大寒、小寒、大雪、冬至がまるで一組で餅つきをしているかのように、息がぴったりだったのである。


「なんだ。んん。なんだ。俺。なんで。おれこんなに。うう」


 今回も勝負がつかなかったらしい大寒と小寒、大雪と冬至であったが、何故か顔は晴れやかで。その顔を見た立春はさらに未知の衝動に見舞われながらも、大寒と小寒、大雪と冬至が搗いた餅をそれぞれ、きな粉とすりおろし大根醤油で頂いたのであった。


「ううう。う。うめえっ。すんげえ。うめえぇよお」











(2025.12.19)


「『カクヨム』の「カクヨムコン11」【お題「未知」】カクヨムコン11お題フェス短編(2025.12.16-23)(タグ お題フェス11)」参加作品です」


(餅のつき方の参考文献 : 餅つき機・臼・杵・餅つき道具レンタル専門店(https://www.mochitsuki-rental.com/howto.html))







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