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掌編小説シリーズ  作者: 藤泉都理
2020.11.
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えんむすび




 眼球に触れている間は、まだ透明な雫だった。

 眼球から離れてしまったら、一枚のはなびらになった。

 あおいろ。

 澄んでいなかった。

 くすんでいた。


 一枚、またいちまいと。

 はなびらが地面に落ちる。

 灰色の地面が少しずつ消えていく。

 

 囲っているのか。

 落とそうとしているのか。


 一枚、またいちまいと。

 はなびらが地面に落ちるたびに私は手を動かす。

 はなびらを動かすのだ。

 はなびらを私の周りに置くのだ。

 

 籠にしたいのか。

 海にしたいのか。

 それとも、

 川にしたいのか。


 どれにしたいのかはわからないが確実なのは一つ。

 決してこの灰色の地面を彩り豊かなものにしようとはしていない。

 くすんだ青一色が果たしてその役割を担うかは甚だ疑問ではあるが。 

 確実なのは、それだけ。






 変化が起こったのはいつだったか。

 私の身長よりも長さがある髪の毛、しかも三つ編みのそれをはなびらへと放っていた。

 くすんだ青の上を、くすんだ灰が蛇行している。


 沈みたいのか。

 渡りたいのか。

 それとも、

 繋ぎたいのか。


(いやいやそれはないだろう。だったらさっさと歩いていけばよかったんだ。それをなんでわざわざ手間を取った)











「孤立したい?違うだろう、おまえはただ」

「はいはいはいはいそうでした目印でした忘れてました」


 覗き込んできた顔を片手で押しやって重たい身体を起き上がらせる。

 

「目が疲れて全部灰色に見えてきた」

 

 目頭をもんで、椅子に座る。

 お茶を用意して、真正面に座った相手に凝視されたので、お茶を一口飲んでから、両手を上げた。

 ほっと息をつく空気に乗じて言葉も押し出す。


「はいはい。逃げませんよ」

「終わったらどこへでも行っても結構だ」

「いや。ここで思う存分眠る」


 ふっ。相手が微笑を浮かべる。


「このやかましい世界から逃げたいくせに」

「すぐに戻りたくなるからしゃーない」


 少しだけぬるくなったお茶を一気に飲み干して、勢い良く立ち上がり。

 どこどこまでも広がる空間を縦横無尽に張り巡らせる、色も形も多種多様な糸を一本手に取る。


「さあてとお仕事再開しますか」





(2020.11.5)



 

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