人の振り見て我が身も可能と錯覚する
できる。
できるできる。
ばあちゃんを見ろ。
七個もできたんだ。
七個だぞ七個それも一気に。
丸いのも細長いのもあんなに大きいのを七個も。
それに比べて自分のはどうだ。
ばあちゃんのに比べたら、半分の大きさなんだ。
しかもたったの一個。
できる。
できるできる、
あちらこちらに泳ぐのは、標的を映す瞳なのか、標的を握る手のひらなのか、
わからないままに、視線を移す。
にっこり笑って、できるよと励ますばあちゃんに。
七個も一気に標的を消したばあちゃんに。
できる。
できるできる、
手のひらを唇に強く押し付けて、標的を口の中へと押し込む。
甘い味がするのはフェイクだ。
のちに苦い味になるのを知っている。
それは瞬く間に口いっぱいに広がる。水で消し去ろうとしてもできず、そう短くはない時間、苦みで苦しめ続ける。
嫌なら消し去れ。
躊躇するな。
薬を七個も一気に飲み込んだばあちゃんを思い出せ。
一個なんて、しかも半分の大きさだ。
楽勝だろう。
いつもなら、ぐだぐだぐだぐだ、苦みより喉に引っかかる苦しみを取って、噛んでどうにかしようとするが、それも今日までだ。
カッと。
ばあちゃんを凝視していた眼を大きく開かせて。
口に含ませた水の流れるままに錠剤を喉へと行き渡らせて。
一切の躊躇なく、嚥下する。
喉に引っかかるなよ。
ギュッと。
喉以外に力を入れた身体は、次には飛び跳ねた。
「ばあちゃん飲めた!」
「うんうん頑張ったね」
「楽勝だった!」
「うんうん頑張った頑張った」
「ばあちゃんすごい!」
「えっへん」
すごいと楽勝を連呼した自分の中ではもう錠剤は怖いものではなかったはずなのだが。
「飲めない」
ばあちゃん効果はじかに見なければ発揮しない模様。
次に泊まるのはいつだったっけ。
(2020.9.18)




