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掌編小説シリーズ  作者: 藤泉都理
2020.3.
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124/2527

背中の導




 ぼくは何故怒られているのだろうか。

 小怪我のぼくよりも大怪我を負っている人に、こんな怪我をして、なんて目を三角にさせられるなんて。

 こっちのセリフだと言えば、何十倍もの小言が返って来るから黙っている。



 

 突如として急成長を遂げて、大型の植物だけの世界になってしまった国の都市。

 不可思議な事に、国の都市のみ。

 他の地方には出現していない現状の中、政権の派閥は四つに分かれている。


 下手に手を出さないほうがいいという、静観派。

 早く殲滅すべしという、攻撃派。

 利用できるものは利用しようという、利潤派。

 都市丸ごと存在していないと無視を決め込む、反眼派。


 今、ぼくの怪我の治療をしてくれている、医者であり、植物研究者でもあるこの人は、反眼派に属していたらしい。

 無視をする、は、他の変異していない植物と同様に手を出してもいいと曲解して、都市に入り込んできた。


 植物は何もしなければ基本おとなしい。

 無断で採取しようとすれば暴徒化する。

 

 この人は基本植物に断ってから採取をする。

 ここの植物だから、ではなく、元々そうしていたらしい。

 それが功を奏したのだろう。

 基本、襲われない。

 しかし果たして、例外もある。

 その例外で大概大怪我を負う。


 ちなみにぼくの怪我はドジっ子の宿命、みたいなものである。

 基本、ぼくはおとなしくこの人の帰りを待つ。

 家事をしながら。

 その過程で、なんでと首を傾げてしまう場面で怪我を負う。

 

 注意をして。慎重に。

 なんて言われたところで、無駄なのだ。

 まあ、そうやって諦めているからダメなところも、きっと、あるのだろう。




「不老不死でも痛いものは痛いでしょうが」

「そりゃあ痛い」

「ならもうちょっと気を張って家事をしてよ」

「気を張り過ぎてこうなってんだよきっと」

「じゃあ、気を緩めていいから」

「気を緩めたらきっと転び放題だね」

「……いい塩梅を探してよね」


 ハイ終わり。

 そう言って、この人は包帯と消毒液を救急箱に直してから、今日のご飯はと相当だらしない表情をして訊いてくる。

 逃亡時の凛々しい顔をどこに隠しもっているのか。

 同一人物に見えないこの人は、きっともっと知らない顔を持っているのだろう。




 不老不死のあなたがいるから。

 この先もずっとずっと、あなたが生きているって知っているから、怖いものなんてないのよね。




 怖くないの。死ぬかもしれないのに。

 大抵の大怪我もものともしないこの人だけれど、一度だけ床に就いたことがある。

 やせ我慢でもなく何でもなく、動けないと笑っていたから、痛みには相当強いのだろう。

 だからきっと、怖くないんだろう。

 怪我をしても死なない自覚がきっとあるから、大型の植物に立ち向かっていくのだろうと。

 そう思っていたのに、

 

 ぼくが生きているから?この先永遠に?

 ぼくが不老不死にしてあげたり、窮地を助けてあげられたりできないのに?

 まったく意味がわからない。


 意味わからない。いいの。私の持論だから。

 

 胡乱な表情をしていたぼくに笑ったこの人は、言った。

 

 確信はたった一つだけ。

 私にとってあなただっただけの話。

 正確に言えば、不老不死だけど。


 別に不老不死になりたいわけじゃない。


 きっぱりはっきりそう言って、休憩終わりと駆け出して行った。


「確信はたった一つね」


 恐怖を退ける確信。

 ならぼくにとってのそれは、








(2020.3.11)




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