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掌編小説シリーズ  作者: 藤泉都理
2018.7.
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七夕




 むかし、むかし。

 農村では、七夕の日に水浴びをしたり髪を洗う習慣がありました。

 これは、お盆の前に汚れを祓う意味で行われていました。

 七夕とお盆は一続きの行事として考えられており、水浴びを「ねむり流し」「ねむた流し」ともいいました。




 さてさて。

 髪は神が宿るとも言われていました。

 何故かと言えば、音が同じだからです。

 かみとかみ。

 ですので、髪を長くすればするだけ、神のご加護もより多く授けられると信じられていました。


 美容見た目性別年齢関係なく誰もが髪を長く、そしてとても大切にしていた時代があったのです。


 その中でも特に丁寧に、念入りに洗う日が七夕でした。


 その為に七夕だけに登場する職人が居ました。

 その職人が身長よりも長い髪を、櫛と樹脂を使って、それはそれは丁寧に梳き洗いました。

 普段と違うのはその職人だけではありません。

 普段は川や井戸から汲んできて、家の傍で髪を洗いますが、この日だけは川や滝の中で直接洗うのです。

 ですので、川や滝が黒い髪や白い髪で埋め尽くされます。




 人々が天の川を楽しみ、神への一年の豊作豊漁健康などの感謝を心中で唱える最中、頭皮も髪も心中に負けず清々しく感じてはいますが、彼らに反して職人さんは大変でした。

 川や滝の中に入って、時には流れに逆らい、それはそれは丁寧に、念入りに髪を洗わなければいけないのですから。


 誰の髪なんて考えてはいられません。

 揉んで、洗って、梳いて、洗って、洗いまくります。

 艶々していく髪が川に流れる様は、頭上の天の川にも負けていません。

 職人たちは誇りに思います。

 胸を張りますが、一度だけ、思ってしまう事もあるのです。


 本来ならばやり遂げるまで、川や滝の水のように、神の息吹に感謝しながらも、澄んだ心で成し遂げなければいけないのです。


 ですが、一度だけ。

 職人は誰しも思います。


 どんだけえぇぇぇえ。と。




 おそまつさまでした。






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