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掌編小説シリーズ  作者: 藤泉都理
2018.7.
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小人と座敷童の文通




 ご苦労様。


 気のせいか。いや、きっと、気のせいではない。会う度にほんの僅かにでも、大きく、逞しくなっている蟻に礼を述べて、見送って、荷を解いた。


 いつものように。


 一枚、二枚、三枚、四枚、五枚。

 葉の大きさや形や数も違うし、包み方も三角や四角や巾着袋だったりする。


 彼女からの届け物は。




 一方通行だった。




 彼女が私を見つけたのは、今も、そして、未来永劫続く旅の途中。偶然の出来事だった。


 一緒に行きませんか。


 世界を一人で歩き、世界を丸ごと楽しんでいる、その頼りがいのある笑顔で仰いだ。地に膝をつけて。

 さながら、傅きながらお姫様の手を取る王子様のように。



 私の背の半分にも届かない、その小さき人は、太陽のように眩しかった。




 いくつの質疑応答を交わしただろう。

 唐突の誘いに、けれど、一点も動揺しなかった私はにっこり笑って丁重に断った。


 行きませんよ。

 お仕事があるから?

 そう。

 終わったら?

 終わる事はないですよ。貴女の旅と一緒。未来永劫。終わらない。

 ずっと家の中で退屈じゃない?

 家の中でも変化はありますし、外が見えないわけではないですから。それに、家の人が届けてくれますから。まったく触れないわけではないです。

 葉。花。農作物。肉。虫。とか?

 季節の雨や土や風の匂いも。


 ふむふむと頷く彼女は納得してくれた。

 今は、と。



 それから不規則に届けられる、文字のない荷。



 今日も、今日とて、干からびている荷。

 わざと、なのだろうか。

 本来の色や触覚、匂いを知りたいのなら、と、旅への意欲を引き出す為に。


 心配事が増えましたよ。

 要らぬ、が前に付くだろうが。

 一寸、恨み言を言いたくなる。




 茶に変化したそれは、元は苔だったのだろう。


 ふかふかの苔の上で昼寝るのは格別だと、彼女は言っていた。







 呼ばれたので、行ってみると、床に伏した当主が、見えるはずもないはずなのに、ひたと、私の瞳を見据えて、告げた。

 ありがとうと。

 自由におなりくださいと。


 勘違いも甚だしい。


 居たいから、居ただけ。

 見守りたいから、見守っていただけ。


 結果、災厄を祓う事になろうとも。




 行きませんよ、私は。


 この建物が取り壊されるまでは。


 取り壊されたら、また、違う住み家を探すだけ。



 探しながら、旅をしよう、と彼女は言うだろうか。



 残念。



 叶うとしても、まだまだ、ずうっと先の話。


 だから私は待ち続けるのだ。


 要らぬ心配をしながら。


 干からびた彼女の荷を。




 でも、今日は彼女に初めて、お返しができそうだ。


 字は読めると言っていたから、大丈夫だろう。











「着物の端切れ・・・・・・・・・達筆すぎて読めないって」


 仕方ない。

 彼女は背伸びをして、蟻と共に歩き出した。


 向かうは、座敷童が居る邸。


 干からびていない土産を途中で調達して、いざ行かん。






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