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掌編小説シリーズ  作者: 藤泉都理
2019.12.
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テレフォンカード




 新品だったり、使用していたり、時には使い切ったものだったり。

 月に何度か送られてくるこれは、それぞれ使用できる時間が違っていた。

 三十分、十五分、二十八分、二十二分、十分、十九分、十六分、七分、四分、三分、一分、零。


 一枚を使い切ろうと言ったのは、どちらが先だったか。


 今日は腹が立つ事があったから。

 今日は嬉しい事があったから。

 今日は悲しい事があったから。

 今日は楽しい事があったから。

 今日はただ、声が聞きたくなったから。


 その日の気分で、使うこれを決めた。

 その日の気分で、これを使う場所を決めた。


 人混みの中。

 閑散とする中。

 気に入っている風景がある中。

 見知らぬ場所の中。

 見知っているとは、言い難い場所の中。


 話題が弾む刻は。

 矢継ぎ早だったり、緩やかだったり。

 口元が結ばれる時が少なかった。


 話題が弾まない刻は。

 矢継ぎ早だったり、急いたり。

 口元が結ばれる時が多かった。


 時に苦痛に思える無言の時間が、時に、気休めでもあった。




「今日は、」


 手に取ったのは、零の真上に小さな穴が開いているもの。

 物寂しい夕日に、片手を上げて大きく飛び跳ねる、自分の好きなキャラクターが描かれている。


 どうせなら、未使用のを送ってよ。

 まあ、使わないで保管していただろうけど。


 緊急時以外は。




 公衆電話の差し口にそのテレフォンカードを入れても、音と共に戻ってくるだけ。

 通じるわけがない。

 知っているのに、今日はこの気分だったから。

 通じるわけがないと知っているけれど。

 通じるかもしれないと思ってしまったから。


 奇跡が起きるかもしれないと思ったから。




 仕方ない、か。


 テレフォンカードを財布に戻して、小銭入れを開けて。

 五十円、を掴もうとした指は、軌道修正をして、十円へ。

 先程とは違う挿し口に十円玉を投下。

 ピポパポ。

 電話番号を押して、繋がって、待って、届いて。











「欲しかったもの手に入れた!すぐに持って帰るから!」

「…うるさい」

「…は?なん、え?」

「うちには私しかいないわけじゃないでしょうが」

「…あー」

「帰るよ」

「うん」 






(2019.12.22)




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