第1話・失恋
『ごめん、気持ちは嬉しいけど君とは付き合えないよ。』
…フラレた。初めての告白とは言え、何度も考えた言葉は一瞬で消えた。
告白って、その瞬間までずっと成功することばかり考えているから、失敗した時にはしばらく思考が停止する。
『え…。』
『ごめん、さよなら。』
その場に取り残されて初めて実感ってのがわいてくる。
これがまたやっかいなもので、いろんな感情が一気に外に出てくるカンジ。勇気を出した分だけ辛くなる。一度経験してみないとわかんないだろうが、正直言って、学校なんか来たくなくなる。マジで。
『はぁ…。』
『おいおい、どうした?また苅谷に伝えらんなくて悩んでんのか?』
…そういや、名前すら言ってなかったな。俺をソッコー振った女の名前は苅谷 紗季。高1。結構明るい奴で一緒にいて楽しい。なんていうか、綺麗とかそういうんじゃなくて、可愛いってカンジ。白が良く似合う。
…はぁ。また思い出してきちゃったよ。ちなみに、俺は中野 健助。高1。どこにでもいるような冴えない男。自分のことなんか上手く説明できるわけないが…。
ついでだから、紹介するけど、さっきからからかってくるコイツは、玉城 和哉。同じく高1。俗に言う、天然ってやつ。すぐからかうが、大事なコトに対しては真剣になってくれる良いヤツ。
『…さっき会った。』
『おっ!何か言ったんかぁ〜?』
俺のテンションで想像つかないのか?ったく。
『…はぁ。んまぁ、とにかく俺の青春ってやつは終わったよ。』
『そっか。でもさ、伝えたんだろ?お前の気持ち。』
『…あぁ、でも届かなかったけどな。』
…できるだけ笑顔を作ったつもりだったが、長続きはしなかった。目の下から熱いものがこみ上げてきて…。
『大丈夫か?つか、泣くほど本気だったっていう、お前のその気持ちスゲェと思う。』
『…わりぃ、あんがと。しばらくはずっとブルーなまんまだと思うけど。』
『いいんじゃね。つか、お前は自分の気持ちに嘘つくのは無理だろ。』
『…だな。』
なんだか、少し楽になった気がする。こういう時、友達ってやつの大切さが見に染みる。
『け〜〜〜んすけぇ〜!』
(ギュッ。)
『…な!?おま…ちょっ…真由抱きつくなって!』
いきなり現れたこの女は桜井 真由。こいつも高1。何かといっちゃあ関わってくる。
『別にいいじゃん。減るもんじゃないし♪』
『…そういう問題じゃない…ってか、いい加減にしろ!』
『怒んないでよ〜。こんなんで怒るなんてちっさい男だよねぇ〜。ね、和哉君。』
『…あ、あぁ。そうだね。』
…ちなみに、和哉の初恋の相手でもある。なのに、俺にばっかかまってくる…。そこらへん、色々とフクザツ。
『っていうより、健助紗季になんか言った?物凄く暗かったんだけど。』
忘れてた…。コイツは紗季の親友でもある。
『…なんでもないよ。』
『…嘘丸見え。健助嘘つく時、いっつも目反らすし。』
『わかったよ。まったく。…コクってフラレた。ただそれだけだ。』
『ぇ…あ…ごめん。』
『別にいいよ。』
…別にいい。ホントに。でも、俺は本当にそう思ってるんだろうか?そう思えるようになったってことは、紗季のコト、忘れようとしてるんだろうか?今まであんなに仲良く過ごしたのに。
『…でも、ショックだなぁ。』
『…は?何が?』
『もういい、この鈍感!』
(私ならいつだって…。)
『…。』
その後、フツーに部活してフツーに帰宅。
告白前はあんなに長く感じた時間も終わってみたら早い。本当におわっちまったんだなぁ、何もかも。
こうして、俺の1日が終わった。