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第三章 22話

2014/5/19の投稿です。次回は5/22の予定です。

前回の終わりから時間をすすめました。

 半年後(公爵家と別れて1年)


 エルダートレント討伐が終わってから半年の時が経った。季節も変わり、温かい日が続いている。


 この半年でギムルの街は急速に賑わい始めた。前に聞いた新しい街と闘技場の建設が始まったからだ。そのせいで他所から働きに来た人が多くなり、商業ギルドや冒険者ギルド、テイマーギルドまで大忙しらしい。


 しかし俺はそんな事に構わず、ひたすらランク上げと修行に勤しんでいる。


「……これで、依頼達成だな」


 俺は今、ギムルから一ヶ月程かけて到達したスルレ山にてカリフモンキーという魔獣の巣を殲滅した所だ。カリフモンキーは群れる性質と攻撃されると身軽な動きで樹上に逃げる厄介な魔獣だ。


 だがこれで、訓練が一通り終わるまであと一息の所まで来た。その過程でDランク冒険者に昇格し、この依頼でCランクになれる。


 俺はカリフモンキーの死体をディメンションホームに回収、討伐証明部位の右耳を切り取り、残りの死体をスライム達の餌として食べさせる。するとブラッディースライムが分裂出来る様になったので、分裂させて契約する。最近魔獣を狩り続けていたせいで、ブラッディースライムは現在4匹になった。


 それから少し休憩を取ってから山をおりていく。麓までの道程に大きな崖があるが、迂回すると時間がかかるので直進する。


「『ロッククライミング』」


 俺はオリジナル土魔法、ロッククライミングを発動する。この1年で鍛えた魔力操作によって手足に魔力を纏わせ、その表面でクリエイトブロックを使って手がかり足がかりを作りながら崖を登り降り出来る。


 この魔力を体や武器に纏わせて魔法を使う技は魔闘術と言い、本来は攻撃魔法で行う現代では廃れていた戦闘技術だった。高レベルの魔力操作スキルが必要になるため習得が困難な事に加え、魔法武器が生まれた事で訓練をせずに魔闘術と同等の効果が得られる様になったためそちらを使う者が殆どになり、時を経る内に失伝してしまったらしい。


 また、集中を切らして魔力の膜に穴が空くと火魔法を纏わせていれば火傷するし、雷魔法なら感電するといった具合に魔法の影響を自分が受けてしまうので注意が必要だ。この危険も魔闘術が廃れた理由の一つだと思う。


 きっかけは前世の小説を思い出して、訓練の合間の息抜きにやってみたら結構形になりそうだったから練習してみただけなんだが、思わぬ所で古代の技術を再現してしまった。


 これが気功と併用出来れば良いんだが、今の俺ではまだ無理だ。しかし気功を使いながら魔法を放つ事は少々難しいが可能なので併用は不可能じゃないと思う。とりあえず今は全力で気功を使いながら魔法を放てるようになる事を目標としているが、魔闘術は有用そうだ。手足だけでなく武器に魔法を纏わせる事も出来るからアンデッド系魔獣への攻撃手段が増えただろう。




 そんな事を考えつつスルレ山から下山し、最寄りの街のギルドで依頼の完了報告を行う。


「依頼達成の確認をお願いします」


 ギルドのカウンターで、カリフモンキーの右耳の詰まった袋とギルドカードを提出する。


「かしこまりました……………………はい、依頼達成を確認致しました。凄いですね、お1人で80匹以上のカリフモンキーを討伐されるなんて。最近は数が増えていてDランクのパーティーの方々でも失敗報告が出る場合があるので助かります。


 それから、今回の依頼達成によりCランクへの昇格条件が満たされましたので、タケバヤシ様は本日よりCランクとなります」


 報酬とランクの項目がCになったギルドカードを受け取り、礼を言ってギルドを出る。


 そしてそのまま街からも出て行き、この国にある最西端の街、テレッサへと向かう。


 カリフモンキーの討伐は冒険者ランクを上げるのに都合が良かったから寄り道をしただけで、今回の旅の本当の目的は亡霊の街と呼ばれる迷宮、いわゆるダンジョンだ。




 この世界には人造・神造・魔造の3種類の迷宮があり、それぞれ特徴がある。


 人造迷宮はその名の通り人が作ったダンジョンで古代の遺跡、または冒険者や兵士の訓練用に作られた物がこれに該当する。踏破したからと言って、大きな利益が出る事は少ない。


 次の神造迷宮もその名の通り神が作った迷宮で、この世界が崩壊する程の危険はないが、人々には抗えない脅威や人類滅亡の危機がある場合にガイン達が作る人類への救済策だそうだ。この迷宮を踏破した者は神器や強大な力を授かる事が出来、その力を使って脅威に抗う事が出来る様になるらしい。


 ただし神造迷宮はその性質上、危機的状況下でしか生まれず、一度踏破された迷宮は消えてしまうためまず見る事が出来ない。


 最後の魔造迷宮は誰が作ったわけでもなく、世界にある魔力が溜まった場所で自然発生した物。魔獣が生息している事が多く、一番危険は大きいが魔石や魔鉱石が取れる事もあるので生きて帰れればそれなりに利益が出せる。


 今回俺が行く亡霊の街は魔力が溜まって出来た魔造迷宮で、名前から分かると思うがスケルトンやゾンビ、実体の無いレイス等、アンデッド系の魔獣が多い。昔は罪人の処刑場でもあった場所らしい。


 俺はそこでアンデッド系魔獣を倒し、経験を積みつつ亡霊の街の奥に生える常闇草の採取をする。常闇草はシュルス大樹海に生息するヒルや害虫を寄せ付けない様にする虫除けの材料になる。これを採取して虫除けを作る事で大樹海行きの準備が整うんだ。


 それにしても、シュルス大樹海の魔獣に対抗するための修行ももうすぐ終わりか……終わりが近づくと感慨深いな……色々あったなぁ……




 修行自体は順調だったが、目当ての魔獣と戦うまでにも色々とあった。そのせいか、修行を始めてから新しく習得したスキルまである。例えばさっきの魔闘術を始めとして、錬丹術、建築魔法、無詠唱、拷問、暗殺術、呪歌、活殺自在……後半、何でこんな物騒なスキルが……いや、理由は分かってる。


 錬丹術は何時の間にか習得していた。おそらくメディスンスライムの餌用の薬を作る時に所々錬金術を織り交ぜていたからだろう。


 この事をきっかけに調べてみたら、スキルは何らかの条件を満たして統合、変化、もしくは新しい魔法・スキルとなる事が時々あるらしい。統合されたスキルはステータスボード上でその内容を開示する事も出来る。


 建築魔法は俺が今まで店を作ったりする時に使っていたクリエイトブロックやペイブメント、サークルソー等を魔法神フェルノベリア様によって一纏めにされ、そこに建築・造形・木工・描画の4つのスキルが統合された。


 無詠唱はその名の通り、呪文を唱えずに魔法を無言で放てる様になると得られる。これを会得したきっかけはリムールバード達とウインドスライムだった。


 リムールバードは人の言葉を喋れないし、スライムに至っては発声器官すら無いのに何故魔法を使えるのか? という事を研究した結果、確かなイメージと属性を変換された十分な魔力さえあれば呪文無しで魔法を放つ事が可能である事を発見した。初めは無詠唱だと威力が格段に落ちていたのだが、リムールバードやウインドスライムを手本にして訓練を続けた結果、下位属性の初級の魔法なら無詠唱で威力を減退させずに放てる様になった。




 拷問スキルの習得は旅をしていたある日、一人で山道を歩いていた俺を攫おうとしてきた盗賊達が出た時だ。外見がまだ11……今は12だが、どちらにせよ子供なのでカモだと思われたらしい。


 当然返り討ちにしたが、盗賊の1人が口を滑らせ、俺を攫って売り払う事が目的だった事や既に攫われている子供が居るのを知った。


 だから盗賊にアジトの場所を問い質したのだが、それは喋ろうとしなかったので仕方なく回復魔法で怪我を治しながら、丁寧にO・HA・NA・SHIしたら習得した。




 暗殺術は吐かせた盗賊のアジトに向かい、一仕事終えた後に習得していた。ギムルに帰ってから暗殺術を習得してそうなフェイさんとリーリンさんに聞いてみると、隠密術と暗器術に加え、短剣術、分銅術、投擲術の内いずれかを持っていた場合、とあるきっかけでそれらが統合されて得られるスキルだそうだ。


 俺はスキルだけなら条件を満たしていたが、そのきっかけがその時まで無かった。きっかけと言うのは、人間相手に暗殺を行った経験である。それも一度や二度ではない回数が必要だそうだ。


 俺は魔獣や獣相手には狩りで何度も不意打ちをしていたが、人相手に行った経験はそう多くはなかった。しかし旅を続けているうちに盗賊を仕留める機会が多くなり、とうとうあの時条件を満たした。


 あの時は捕まってる子供を救出する必要があったから、外でスライム達を暴れさせてる内にアーススライムと土魔法で地下道を掘り、こっそりアジトに忍び込んで子供達を救出した後にたまたま接近してきた盗賊のボスの捕縛&取り巻きの始末をした。それが原因だな。


 その事を話した後、フェイさんとリーリンさんの2人に祝いの言葉を頂いた。2人曰く、これで店主も一流の暗殺者ネ。だそうだ……どうやら暗殺者としては経験を積み、一流になったという証として喜ばしい事らしい。


 ちなみに助け出した子供達はアジトから最寄りの村で保護して貰った。ついでにアジトで捕獲した盗賊団のボスから攫った子供の売り先を聞き出していたので、盗賊団のボスだけは生かして大きな街に連れて行き警備隊に情報付きで突き出した。なお、後日聞いた話では売り先の奴隷商人(非合法)も捕まったらしい。




 次に呪歌だが、闇魔法と無詠唱がきっかけになり、楽器演奏と歌唱が統合されたスキルだ。ナイトメアリムールバードのアインスが鳴き声で精神攻撃をしているのを見て、何となく前世の暗い歌を歌いながら、無詠唱で強い不安感と恐怖を与える『デプレッション』という魔法をかけてみた。すると歌を聴いた盗賊全員に影響が出た。『デプレッション』は1度に1人にしか使えない魔法の筈なのでおかしいと思って色々と調べてみたら、歌唱と楽器演奏が消えて呪歌になっていた。


 最後の活殺自在は何でこんな仰々しい名前になってるのか分からないが、要は手加減だ。盗賊相手から情報を取るために生け捕りにしたり、暇な時にギムルの教会で子供の訓練に付き合ったりしていたら習得した。


「内容がどうでも目に見える形で身に付けた技術が分かると達成感があるから嫌ではないけど、もうちょっと穏便な表現にならなかったんだろうか?」


 色々思う事もあるが、この一年で身に付けた事は多い。しかし、修行だけをやって来た訳でも無い。




 先日は一気に3店舗もうちの店の支店を増やした。レナフを含めた4店舗の支店の内3店舗はコーキンさん、トニーさん、ロベリアさんの3人が無事にカルラさんから店を任せられるとのお墨付きを頂いたので店を任せた。


 カルラさんに3人の話を聞くと、意外にも金勘定が一番しっかりとしていて優れていると判断されたのはコーキンさんらしい。昔散財して財産を失ったって聞いてたから気にかかっていたんだが、むしろ一度大きな失敗をした分経営、特に金銭の管理には余念が無いらしい。


 そして最後の店舗はセルジュさんの紹介で雇った男性に任せた。彼の名前はファルゼンさん。俺も何度か会っているが、過酷な旅をしていたからか日に焼けていて、同年代だというセルジュさんと比べると老けて見える男性だった。セルジュさんとは旧知の行商人で、怪我を負い行商を辞めざるを得なくなったため職を探してセルジュさんの所へ来たそうだ。


 彼は従魔術師でもあり、自分の従魔に馬車を引かせ魔獣が多くて危険な地域の村や過酷な道のりを越えて商売をする商隊に居たらしい。しかし運悪く魔獣の群れに襲われた直後に盗賊に襲われてしまい、従魔とファルゼンさんは連戦の疲労が祟ってかろうじて撃退に成功したものの、最後に一矢報いようとした盗賊によって膝に矢を受けてしまったのだという。


 一瞬どこの衛兵だ、というツッコミが頭をよぎったが、この世界では十分に起こりうる事だ。ファルゼンさんも命があるだけ幸運だったと言っていた。




 長年の商売と従魔術の経験に加え胆力もある。そんなファルゼンさんは店の責任者には最適な人材だった。


 さらにファルゼンさんと共に商隊の護衛をしていた人達の一部も別の仕事を探すために一緒にギムルの街に来ていたのを聞いて、話しを持ちかけてみたら彼らも雇い入れる事が出来た。


 彼らはファルゼンさんを含め、何人かの商人を失った事で商隊の馬車が少なくなり、それまでと同じ護衛の人数だと護衛が多過ぎるため人員削減の対象となったらしい。


 ファルゼンさんと雇い入れた護衛の半分に1店舗を任せ、もう半分はコーキンさん達の店の方に行って貰った。ギムルに帰った時は全店舗からの報告を聞くが、どの支店の経営も順調だとの連絡が入っている。皆さん良くやってくれている様で、本当に助かる。




 後は細々とした事だがギムルに居る時が休日、居ない時が仕事・修行中って感じで生活にメリハリが付いたな。旅の途中は修行に集中し、ギムルに居る時は街をぶらついたり街の人達と交流したり、趣味として色々と研究する日々を送っている。




 だから必然的にギムルで依頼を受けることも減ったんだが……時々ギムルの街で出会う冒険者の中に、俺の事を“掃除屋”と呼ぶ人達が近頃増えてきた。


 話を聞いてみると、何か他と違った特徴のある冒険者や一定以上の実力を持った冒険者には俺の“掃除屋”の様に異名が付けられるそうだ。将来有望な新人としてギムル付近の街にもそこそこ知れ渡り始めているらしい。


 ちなみに俺が掃除屋と呼ばれる由来は汲み取り槽の掃除は勿論、店を開いてからしばらくは街のゴロツキを頻繁に退治していて、最近は道中の盗賊を討伐してその全員を仕留めるか捕縛して衛兵に突き出し、魔獣の討伐をすれば討伐証明部位と売り物になる部位以外は骨すら残さず綺麗さっぱり片付けてしまうからだそうだ。


 言われ始めた時は恥ずかしかったが、最近ようやく慣れてきた。まぁ、こんな感じで気楽にのんびりと修行を進めている。スライム達も元気だし、今後もこの調子で少しずつやっていこう。


 ……さて、明日には今回の旅の目的地、テレッサにたどり着ける様に少し急ぐか!


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― 新着の感想 ―
[一言] スイーパーですね?依頼する時はギルドの掲示板に「XYZ」と書くんですね?
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