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第三章 14話

2014/4/28の投稿です。本日も2話連続投稿です。

 三ヶ月後(公爵家と別れて半年後)


 最近平和だな~……


 最近は襲ってくるゴロツキが格段に減った。三ヶ月位前から少しずつゴロツキの雇い主が捕まる事が増えたからだろう、依頼主が居なきゃゴロツキも来ないらしい。


 捕まった雇い主は幾つかの商会の人間で、新参者の俺の店を潰すか脅して自分の傘下に引き入れ、うちの商売の種を巻き上げたかったらしい。俺の店の事を機に商業ギルドが徹底的に雇い主の店を調べた所、彼らはこれまでも他店に同様の事を行っており、中には闇ギルドとの繋がりがあった者も居たらしく、ギムルの街は一時的に大騒ぎになった。あれで幾つかの商会が営業停止になって、潰れたからな。他の街に本店・支店がある店はそこにも調査が入るらしい。本当に、大事になった。


 しかし、潰れた店と何らかの契約や取引をしていた人達は商業ギルドにカバーされ、特に困った事は起こらなかったらしいのが幸いだ。


 例を挙げると俺の店にゴロツキを送り込んでいた連中の中に、消臭液の製法を知りたがっていた薬屋の店長が居た。その店長は専属契約した薬師から薬を仕入れて売っていたらしいが、その店長が今回の件で逮捕されて店が潰れたため薬師の人達は薬の卸先が無くなり、一度失業した。だがギルドマスターがギルドの問屋など、他の働き口を斡旋して対応したことで彼らは何とか新しい職場で働けているそうだ。


 その新しい職場の中にはセルジュさんのモーガン商会も含まれている。セルジュさんの店には薬も置いてあったし、人を雇う余裕もあったんだろう。


 ちなみにモーガン商会は今回の騒ぎのどさくさに紛れて、潰れた店の顧客を自分の店の顧客にし、大幅に利益を増やしたらしい。何でもモーガン商会のライバル店が今回の件で潰れた店の内の1つなんだとか。ギルドマスターのお言葉なので間違いは無い。


 閑話休題




 最近は妨害が殆ど来ていないが、その代わりに俺の後に続こうとクリーニング店を開く人達が増えてきた。しかし他店は衣服の取り違えや洗濯で服を破ってしまうといったミスが多かったり、汚れ落ちがうちの店より悪いという事で客が来なくなったり、丁寧な仕事をしていても人件費がかかるため利益が出なかったりで、出店からまもなく店をたたむ所が多い。それは俺の店の落ち度ではないので、特に問題は起きていない。


 店と妨害の方はこれでほぼ一段落してきているのだが、俺の与り知らぬ所で、俺が原因なのに関与出来ない小競り合いが起きていた。




 レナフの街から帰って来てから聞いた話だが、なんとマシューが商業ギルドに乗り込み、俺の店はテイマーギルドが管理するべきだと喚いたらしい。


 実際は一応マシューも叫んだり怒鳴った訳ではないらしいが、ギルドマスターによって説明をかなり端折られ、そこにギルドマスターの鬱憤が込められた結果、マシューが喚いていたの一言に凝縮されていた。


 流石にその一言では内容が分からなかったので、ギルドマスターに詳しい説明を求めると、要点を纏めて教えてくれた。




 商業ギルドには俺の様に従魔術を使う商人が他にも居る。その人達は陸上での物資の輸送や危険な場所での行商を生業にしている従魔術師だ。俺や彼らは従魔術師であり商人であるという曖昧な立場だが、商人としての仕事は商業ギルドの管轄。普通はそこにテイマーギルドが口を挟む事は無い。


 しかし、商人が従魔術師として従魔の暴走・制御不能等の問題を起こしていた場合には例外がある。魔獣は取り扱いを間違えると危険があるので再犯防止の指導及び再度問題を起こした場合に迅速な対応をするため、テイマーギルドが管理する場合も稀にあるらしい。だがそれは従魔術師が問題を起こしていた事がある場合、もしくは商業ギルドからテイマーギルドに申し入れがあった場合に限られる。


 俺は一度も問題を起こしておらず、テイマーギルドで仕事を失敗した事はない。そもそもテイマーギルドで仕事を受けた事も無いのだが、マシューは不祥事の代わりに俺の年齢と登録の際に言った従魔術を祖母から中途半端にしか学べていないという話を論い、テイマーギルドに所属する従魔術師の子供の将来を考えている様な白々しい演技をしつつ


「優秀な従魔術師となれる可能性がある者には相応の指導が必要だ」

「いくら優秀でも子供では魔獣の管理に不安がある、ここは我々テイマーギルドで管理し指導をすべきだ」


 等と宣って、俺の店をテイマーギルドが管理し、俺を指導するのはどうかと提案したらしい。


 当然の如く、ギルドマスターはその要求を撥ね付けた。しかし、マシューはしつこく、時々商業ギルドに押しかけてはギルドマスターにあの手この手でごまをすり、同じ内容を提案し続けているらしい。


 マシューが妨害に関わってるんじゃないか? とは思ってたけど、まさかギルドマスターに直談判するとか……ゴロツキを雇ってた証拠は無いけど、今までもちょっかい出してきたんだろう。でも何でこんな直接的な行動に? ギルドマスターが俺の味方って知らないのか? それともゴロツキに関しては無関係だったのだろうか? 


 マシューの手口は考えても良く分からないが、この件はギルドマスターに任せておけば良い事になっている。


 ギルドマスターはしばらく要求を突っぱねていれば何も出来ずに手を引くだろうと言っていた。そう言った時ギルドマスターが浮かべた恐ろしい微笑みからすると、こちらには何の問題が無いのだから、もしマシューが焦れて下手な手段に出たら、徹底的に追求するつもりで計画を練っているのかもしれない……




 そういう訳で今は特に問題は無く、訓練と冒険者として依頼をこなし続ける平和な毎日を送っている。俺の知らない所では大騒ぎになっているのかもしれないが、俺の周りは台風の目の様に穏やかな日々だ。


 そんなある日、冒険者ギルドに行くとウォーガンさんに呼び出され、ギルドマスター室に通された。


「リョウマ、最近良くやってるみたいだな。一時はお前さんが商人一筋で行くんじゃねぇかと思ってたが」

「予想以上に大事になったので、手が離せなかっただけですよ。店主である以上、問題が起きたら放ってはおけませんから」

「ま、そりゃそうだ。人の上に立ったら向き不向きは関係なくそれなりの責任はあるわな……本題だが、来週から2週間位空いてるか?」


 そう言われて考えてみるが、大丈夫だろう。防水布も作り溜めてあるし。


「大丈夫です」

「そうか、1つ依頼があるんだ。仕事内容は採取になるが、量が多いから空間魔法使いの手が欲しい。運搬担当として仕事に加わってくれないか? 採取場所にはお前さんが戦いたがっていた魔獣が出る。人を集めて詳しい説明をするから明日の昼にギルドに来てくれ、説明を聞いて受ける気があるならその時に参加の登録をする事になる」

「分かりました、必ず来ます。あと、その依頼で戦える魔獣は何ですか?」

「トレントだ」


 トレントは木の姿をした植物系の魔獣で、周りの木に擬態して人や他の魔獣を狙う。シュルス大樹海にも多く生息し、不意打ちを警戒しなければならないため、非常に危険な魔獣だ。


「わかりました、それではまた明日の昼に」

「おう、気をつけろよ」


 俺はギルドを出て廃鉱に向かう。そして街の北門から出てしばらくすると、ディメンションホームからアイアンスライムとメタルスライムを出す。最近、街と家の行き帰りは一緒に走ってるんだ。




 この2種は体が重く動きが遅いのが難点だと思っていたが、テイムしてから時間が経ち、体の動きが滑らかになるにつれて出来る事が増えると驚く程の変化があった。


 変化のきっかけはただ訓練の最中に体を変形させようとしたメタルスライムが廃坑の傾斜で転げ落ちただけだった。しかしそれを見て思いついたんだ。


 当時は他のスライムのように大きく柔軟な変形は出来なかったが、僅かな変形なら可能。そしてメタルスライムとアイアンスライムには他のスライムには無い体の硬さがある。俺はそれを活かす事にした。


 俺が体を球体にするよう指示を出したら元々の体の形から離れていない変形なので、それほど難しくなかったらしく、2匹はすぐにボウリングの玉より少し小さい球体になった。そして2匹は方向こそ地面の傾斜に任せるだけだったが、転がる事でほかのスライムとは比べ物にならない速さで移動できる様になる。これが2匹の急成長のきっかけだった。


 それから1週間程度は単に球体になって坂から転がり落ち、這いずって坂の上に戻ってくるのを繰り返していた2匹だったが、その頃から変化が起き始める。何と、傾斜に任せてしか転がれなかった2匹が平坦な場所でも球体のまま自由に移動するようになっていたんだ。


 調べてみるとその秘密は体内の核にあった。変形は難しくとも体内の核の移動はスムーズに行えるらしく、2匹は球体になった状態で体内の核を移動させ、重心を偏らせる事で球体の体を転がしていた。


 それからまた数週間が経ち、初めはゆっくりと転がるだけだったのが次第に体の一部を少しだけ変形させて地面を蹴り、加速するようになる。それによって平坦な場所でも緩い下り坂を転がるのと同じ位の速さで移動するようになり、この頃2匹が高速移動というスキルを習得したのは良い思い出だ。


 更にその体の一部を変形させる事でコツを掴んだのか、変形が急激に上手くなった。体を触手状にするのは勿論の事、2匹が移動してる姿を見て何となく前世の自転車のタイヤを思い出して感覚共有でイメージを伝えた所、すぐに変形してみせてくれた。


 流石にその時はバランスが取れずに倒れたが、訓練を重ねて初めは球体から勢いを付け、直径が小さく幅広い安定したタイヤから段々と幅を狭め、直径を大きくして自転車のタイヤ状に変化する事に成功した。これにより2匹の移動速度が更に速くなった。


 タイヤ形態は直線でのスピードは出るが急カーブや小回りが効きにくいという弱点が出たり、球体ではタイヤ形態ほどのスピードは出ないが、全速力から急停止や急な方向転換も可能で小回りが効くという利点の発見なども多くあった。今では普段は球体、スピードが必要な時はタイヤ形態と使い分けている。


 ちなみにその後2匹に餌の鉄とアルミを大量に食べさせて分裂させ、ビッグメタルスライムとビッグアイアンスライムになって貰い、変形して自転車等の移動手段になって貰えないかと考えたがそれは失敗した。どうも俺が乗る部分を作ると重心が崩れ、核での重心の偏りと変形では動けなくなるらしい。


 俺が漕ぐという手もチェーン等の細かい部分を再現できず失敗。一輪車なら成功したが速度があまり出ない上に不安定で、いつ魔獣が出てくるか分からない街の外での使用は安全性に欠けると思い、お蔵入りにした。


 ちなみにビッグメタルスライム、ビッグアイアンスライムにするには100匹で良かったんだが、餌を与え過ぎて倍に増えたので今は各200匹居る。




 そんな事を考えつつ暫く走って、廃坑が近くなってきたのでスライム達に声をかける。本当は声に出す必要は無いが、気分だ。


「あと少し! ラストスパートだ!」


 すると一斉にタイヤ形態になったスライム達が速度を上げる。俺も負けないように坂を駆け上る。


 そして程なくして鉱山の入口に建てた家の前にたどり着く。そして他のスライムをディメンションホームから出した後は各々好きな様に過ごす。最近はこれが俺達の生活サイクルになっている。


「最近個性が出てきたな……」


 最近はほぼ全てのスライムが自由時間に何らかの自主練習をしている。棒術や槍術といった武術の自主練習は勿論の事、メタルとアイアン達は殆どが廃鉱山を走り回っている。あまりに猛スピードで山道を走るため、事故を起こす奴も居たからこの前メタルとアイアンのためのレース場もどきを作った位だ。


 事故の原因はスピードの出し過ぎに加え、タイヤになり始めの頃は体が硬かったせいで地形に合わせて体が跳ね回っていて、グリップ力が弱かった事だ。前世のテレビに映ってたオフロードで走る四輪駆動車のタイヤみたいな走りをしていた、あれじゃ事故るのも当たり前だ。跳ね回って山肌にぶつかったり崖から落ちたりしてたし、硬化と物理攻撃耐性スキルを持っているメタルとアイアンじゃなかったら死んでるぞ、あれ。


 最近は表面を適度に柔らかくして衝撃を吸収し、しっかり地面を掴む事を覚えたらしく走行中に跳ねてる奴を滅多に見なくなった。それに加えてレース場の地面は殆どペイブメントで舗装してある。そのせいか最近は事故も大分減った。


 ……しかし、あの2種は急成長し過ぎじゃないか? 良い事だけど、最近驚かされる事が多くて困る。気を抜くとまたスライム研究に集中して他の事を忘れそうになるからな、気をつけなければいけない。




 よく分からないのは只管同じ場所でジャンプを続けたりジャンプで同じところをグルグル回ったりする奴ら。ウサギ跳びか?


 あと、俺は最近アーススライムやダークスライムとの魔法も訓練をしている。他のスライム達はそれぞれ訓練内容を考えて指示して育成している感じだが、属性魔法が使えるこいつらとは一緒に学んでいる感じがして結構楽しい。


 そして属性魔法を使えるスライムも前より増えている。アースやダークになったんだから他の属性のスライムも行けるだろうと思って試した所、ウインドスライムとライトスライムが新たに仲間に加わった……が、ここで1つ問題点が生まれた。何故だか捕まえるスライムの殆どが土属性か闇属性の魔力を好むスライムばかりなんだ。


 捕獲したスライムは全部で10匹だが、風属性を好むスライムはたった1匹しか捕まえられなかった。おまけに火、水、氷、雷、木、毒、光、空間属性を好むスライムは見つからず、無属性の魔力を好むスライムは魔力を与えても一向に進化しない。


 進化についてもウインドスライムは3日で進化したが、ライトスライムは好まない光属性を与え続けたせいか進化させるのに3ヶ月かかった。他8匹はまだ進化してないし、やはり好みの魔力の方が進化が早いんだな……


 ちなみにウインドとライトのスキルは属性が違うだけで、内容はダークやアースと同じだ。


 ウインドスライム

 スキル 風魔法Lv2 風属性耐性Lv8 風属性魔法吸収Lv1 ジャンプLv1 消化Lv3 吸収Lv3 分裂Lv1


 ライトスライム

 スキル 光魔法Lv2 光属性耐性Lv8 光属性魔法吸収Lv1 ジャンプLv1 消化Lv3 吸収Lv3 分裂Lv1


 この魔法吸収は攻撃魔法を撃たれた場合、自分の属性と同じなら魔法から魔力を吸収して威力を落とし、自分の栄養に出来るスキルのようだ。これと属性耐性を持ち合わせている事で同じ属性の攻撃魔法はほぼ無効化されているらしい。


 あと、ウインドスライムが使えたのはブリーズとウインドカッター、ライトスライムが使えたのは光で周りを照らすライトと光属性の下級攻撃魔法、ライトボールのみ。スケルトンとかアンデット系の魔物には効果があるらしいが、それ以外には効果がない。今の所は廃坑内での灯りになって貰っている。対アンデット特化のスライムだな。


「さて、俺も訓練だ」


 こうして俺は今日も訓練を始める。明日に備えて今日は軽めにしとくかな?


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