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第三章 11話

本日2話目の投稿です。次回は2014/4/24の予定です。

 翌日


 朝、ピオロさんから味噌や醤油などの調味料を受け取り、礼を言ってアイテムボックスに放り込む。


 そしてギルドに行って採取した薬草とスマッシュボアの牙を提出すると、速やかにスマッシュボアの討伐報酬と薬草採取の報酬が貰えた。昨日男性職員が言っていた通り、通達があったらしい。


 態々偶然を装うために装備を適してない物にしたり、言い訳を色々考えてたけど、必要なかったな……まぁ、結果論だけどな。本来なら多少なりとも追求が来てもおかしくない事だし。ケンさん達も助かり、俺は疑われずに済んだので良しとしよう。


 そんな事を考えていると報酬が出たが、その際報酬と一緒に担当してくれた職員がお礼を言ってきた。その職員はあの3人の友人らしい。ついでに一緒に居たという2人の冒険者の事を聞いてみたが、その2人はもう捕まったそうだ。


 何でも昨夜、酒場でEランクのパーティーに声をかけた所を仕事終わりに酒場に寄ったギルド職員に聞かれており、話を聞いた職員がギルドに通報。速やかに捕縛されたらしい。その後の調べにより2人は犯行を認めた。また、彼らのギルドカードは偽装された物だったらしく、余罪まで出たため冒険者ギルドから除名。ギルドカードの偽装に関する厳しい取り調べの後、最低でも5年以上鉱山での強制労働か無期限の奴隷になるらしい。


 ギルドカードの偽装と聞いて、そんな事が可能なのかと思い聞いてみたが。ギルドで賞罰などの情報をギルドカードに記入・削除する事もあるため不可能ではないが、専用の魔法道具が必要なので一介の冒険者に出来る事ではないそうだ。なお、偽装ギルドカードの入手経路などは流石に口に出来ないらしく、それ以上の情報は得られなかった。別に俺は偽装ギルドカードが欲しい訳じゃないから良いけど、気を付けよう。


 俺は職員さんに情報の礼を行って、ギルドを出る。さて……どうしようか? もうここでやるべき事は終わってしまった。


 これから何をするかを考えながらピオロさんの店に行くと、店の従業員からピオロさんが探していたと聞かされ、ピオロさんの執務室へ案内された。俺はだされたお茶を飲みながら話を聞く。


「なぁリョウマ、スマッシュボアの肉と醤油や味噌使こうて何か料理出来へん?」

「料理ですか?」


 豚肉で和食となると……豚汁、豚しゃぶ、豚丼、豚の生姜焼き位かな


「いくつかありますよ」

「教えて貰えへんか? 焼き魚も味噌汁も美味いんやけど、そればっかりだと飽きてしもうてな。もっと醤油と味噌の使い道があるんやったら、もっと売れる様になるんちゃうか? と前々から思うとったんや」


 なるほど、俺も日本食が手軽に食べられる様になれば嬉しいし、教えとくかな。


「では豚のしょう……じゃなかった、スマッシュボアのジジャ焼きはどうでしょうか?」


 豚肉がある、醤油やみりんもある、生姜は薬屋で買える。これで3年間食べていた生姜風味の肉じゃなくて、ちゃんとした生姜焼きが作れる!


「お客にこんなん言うのもあれやけど、良かったらそのジジャ焼きっての作ってくれへん? 材料はウチにあるもん好きに使ってええから」

「良いんですか?」

「勿論や、うちは新しい料理を知れて得やからな」


 こうして俺は昼食作りをする事になった。しかし驚いた事に、俺と一緒にクラナさんとミヤビさんも料理をするらしい。教えるのは使用人の誰かにだと思ってたんだが……俺がそう言うと、2人は笑ってこう言った。


「料理は女の嗜みや言うて、時々オカンに叩き込まれんねん。うちも別に料理するんは嫌いやないし、食材を商っとる店の娘が料理出来へんのやったら格好つかへんで」

「初めて聞く料理とリョウマはんの腕、期待してます」


 2人の視線を受けながら事前に伝えて用意して貰った材料と道具を手に取り、俺は料理を始める。



 まずは米をといで火にかける。竈で米炊くとか前世では無い経験だな。


 生姜焼きと一緒に食べるために、豚汁も作って生姜焼きの出来上がりを合わせる。昆布の様な海藻と小魚でだしを取り、具はネギ・牛蒡・キノコ、スマッシュボアの肉に野菜を色々。街に出てから知ったが、この世界の店で売られている野菜には地球と同じ名前で地球の物に似た野菜が意外と沢山ある。もしかしなくても転移者の影響だろう。


 豚汁を作っている間、米の方は主にミヤビさんが担当して様子を見ていた。そして豚汁を作り終えた後、少し多めに作って残しておいただし汁をアイテムボックスから取り出した瓶に入れ、醤油とみりんと酢を入れて味を整える。するとそれを見ていたクラナさんが話しかけてきた。


「リョウマはん、それ何どすか?」

「醤油とみりんとだし汁と酢を混ぜて作る調味料ですね。一晩から数日くらい寝かせると酸味がまろやかになって美味しくなります。これにラモン等の汁を少し入れてもさっぱりして美味しいですよ。サラダにかけても良いですし、肉や魚にもよく合います」

「そんな物があったんやねぇ……」


 そう言って瓶を見つめていたクラナさんだったが、すぐに豚汁の方に戻っていった。


 それから少しして、豚汁が出来た……そろそろ生姜焼きを作り始めるかな?


 スマッシュボアの肉を薄切りにして、フライパンで焼いていく。その間にジジャをすりおろし、適量の醤油・みりんと一緒に混ぜ合わせたタレを作る。


 それを火が通って焼き色のついた肉にかけて、絡めて生姜焼きの完成! 簡単な物だが、シンプルで美味いんだこれが。


 生姜焼きは色々作り方があって、中には作ったタレに漬け込んだりする物もあるらしいが、俺はあまり作らないな。時間をかけずに手早く作れて美味い物が良い。


 後はキャベツを千切りにし、プチトマトよりは大きく、普通のトマトよりは小さい微妙な大きさのトマトを四つ切りにして添える。これでよし。さて、米も炊けた頃だし…………


 米の方に行こうとしたら、視界の端に黒髪の男性が映った。


「ピオロさん? 何時からそこに?」


 俺がそう言うと厨房の入口の影から出てくるピオロさん。微妙に気まずそうだ。


「いや~、何や美味そうな匂いさせとったから、ふらっとな」


 ああ、炊きたてのお米の匂いとか生姜焼きの匂いって食欲をそそるよな?


「おとん、行儀悪いで。様子見たいんやったら堂々と見ればええやん」


 娘に窘められる父親を横目に、俺たち4人分の料理を盛り付ける。


「出来ましたよ」

「おっ、ホンマか? なら早速食べようや」


 使用人の方々が料理を食堂に運んでいき、俺達はテーブルにつく。


「さあどうぞ。スマッシュボアのジジャ焼き定食です」

「ホンマに美味しそうやな、頂きます」


 そう言って食べ始めるミヤビさん、生姜焼きを上手に箸で掴んで一口。次の瞬間耳がピンと伸び、目を見開いて一言。


「美味しい! めっちゃ美味しいやん、これ!」

「あら、ほんまやねぇ。料理しとる時から美味しそうやと思っとったけど、食べてみると尚更やわ」

「ジジャ焼きもそうやけどこのスープは豚汁言うたか? これも美味いな。豚汁は野菜も多くて栄養も取れそうや。これ作れるんが周知されたら、間違いなく醤油も味噌も売れるで!」


 どうやら口に合ったらしい。喜んで食べてもらえるのは嬉しいな。ピオロさんは若干商売が絡んでるけど、気に入って貰えた事は確かだろう。


 俺は料理の説明をしつつ、自分で作った料理を味わった。そして食後、俺の作った生姜焼きを気に入ったピオロさんが今日の夕方から生姜焼きを惣菜屋に並べてみると宣言し、宣言通り、夕方には生姜焼きが惣菜屋の一角に今日のオススメだと書かれた張り紙と共に置かれていた。仕事早いな……










 翌日


 今日も朝食を頂いて、俺の店に行くために表に出ると、1台の馬車がサイオンジ商会の前で止まる。


 ん? 今荷台に乗ってるのは……


「カルラさん!」

「えっ……店長!」


 俺の声で振り向いたのはカルラさんだった、俺に背を向けていたし、他の人に指示を出していて気づいていなかったらしい。


「着いたんですね。長旅お疲れ様です」

「お待たせしました、店長。お店の方は」

「斜め向かいの、そこですよ」


 俺は店を指差してそう言う。するとカルラさんは俺の知らない人達に指示を出して、店に行かせた。新しく雇った人達だろう。その後カルラさんとコーキンさん達を連れた俺は、ピオロさんに挨拶に行ってから、店の営業のために動き始めた。





 それから4日後


 2日で店の細部を整えたり、仕事の確認をして3日目で開店した。どうやら店員さん達は道中に簡単な講習を受けていたようで、結構スムーズに働けていた。


 新しくこの店の従業員として雇った人は5人。1人がこの支店専属の料理人で、4人が店員兼用心棒。彼らは元Cランク冒険者だったらしい。そんな彼らがうちの店に来た経緯について話を聞くと、彼らは冒険者としてそれなりに上手くやっていたが、自分たちの限界が見え始めていた時にたまたま出くわした魔獣によって仲間を2人失ったそうだ。


 その時彼らはその魔獣に対して知識すら無く、逃げる以外殆ど何もできず、助かったのは運と死んだ仲間に魔獣の気が向いていた事……怪我をして逃げられない、街まで持たないと悟ってしまった仲間が必死で気を引いてくれたおかげだと言う。


 生き存えたその足でギルドに駆け込んだ彼らは魔獣の情報を伝え対応をさせた。そして魔獣は運良くその街に居たAランクのパーティーによって難なく狩られたが、そのパーティーが狩ってきた魔獣を、気持ちの整理のために仲間の仇が死んでいる所を一目見ようとギルドにいた事でその魔獣がBランクの魔獣だと知ってしまった。


 自分達が全く敵わず、仲間を失って逃げる事しか出来なかった相手はたった1つ上のランク、そしてそれを容易く狩る冒険者パーティー。それを見た後、彼らはB以上の冒険者になる事を諦めたそうだ。Cランクの依頼でも生活に十分な金は稼げる、彼らはその金を貯めつつ、腰を落ち着けられる職場を探していたらしい。そこで俺の店の話が来たので話に乗った。


 彼らは元Cランク、Bランクの魔獣の相手としては不足でも、ゴロツキ相手なら十分な戦力になる。店の用心棒なら十分だろう。


 それに彼らは俺が冒険者でもあるという事を聞いて、自分の経験を話してくれたり、安全第一を心がけろ、といった注意をしてくれる気さくで良い人たちだった。この人達なら他の人たちとも上手くやれるだろう。


 ちなみに先日、開店したばかりのこの店にケンさん達3人がやってきた、その時はまだ客も殆ど居らず暇だったため、この店の常連になって貰えるよう願いを込めて店の説明や店員の紹介をしたのだが……その際先日のスマッシュボアの1件の話になり、ケンさん達の行動が3人の琴線に触れたようで、色々と話をされ、ケンさん達に助言や指導をするようになっていた。さっきまでの彼らが冒険者を辞めるに至った話も、実はケンさん達を紹介した時に一緒に聞いた話だったりする。




 何はともあれ、もう俺が必要な事は無くなったのでレナフの街の支店はカルラさんに任せ、俺はギムルの街に戻る。


 今は門の前で、ピオロさん達やカルラさん達に見送られている。


「リョウマ、がんばりや。これからが勝負やで、どんどん店増やしていくんやで!」

「お気を付けて」

「店長、こちらの事は安心してお任せ下さい」

「僕たち一刻も早く、確実に店の経営を学びます!」

「任せておくと良い。もう昔のような散財はしない、必ず店を盛り立ててみせる!!」

「店長、体に気をつけて下さい」

「そちらもお気を付けて」

「リョウマはん、あんま無茶したらあかんで。次何時会えるか分からんけど、死んだりせんといてや」

「勿論です。まだまだ死ねませんからね」


 祖父母の遺産やら研究やら、スライムの事やエリアとの約束もあるしな。っと、そうだ。ミヤビさんは今年から王都の学校に行くんだよな? だったらエリアと会うかもしれない。


 エリアは友達が居ないと言ってたし、ミヤビさんは貴族との顔つなぎに行くんだから……


「そうだ、ミヤビさん」

「何や?」

「今年から王都の学校に行くんですよね?」

「せや、それがどうかしたん?」

「それでしたら、1つお願いが」

「何や? 聞ける事なら聞くで?」

「今年から王都の学校にエリアリアという女の子が入学しますので、出来れば仲良くしてやって下さい。良い子ですし、貴族なので顔つなぎにもなるでしょう。あと、その子に頑張れ、と一言伝言をお願いします」

「まぁ、その子が変な連中と付き合ってへんのやったらええで」

「ありがとうございます。ミヤビさんも頑張って下さいね」

「勿論や、そっちも頑張りや」


 俺は見送りに来てくれた皆さんに頭を下げ、門から出てギムルへの帰路に着いた。


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