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第二章 26話

2014/3/3の投稿、本日2話目です。

 飛んでくるリムールバードの群れを見た俺は声を失う。木々の間から見える赤い山肌の鉱山を背景に、リムールバードが青い翼を広げ緑の尾を靡かせて旋回しながら沼に降り立ってくる。表現しきれる言葉が出ない程綺麗な光景だ。


 先程までより少し多い気がするが、援軍を連れて来て仕返しという訳ではなさそうだ。各自、降り立った者からグレルフロッグを食べている。


 とりあえず危険は無さそうだが、群れの中の1羽がじっと俺を見ている。さっきの上位種だ。グレルフロッグを食べず、一瞬たりとも視線を俺から外さない。さっきので警戒されたか?


 後ろではエリアがセバスさんから楽器を受け取っている。俺がここに居ると邪魔かもな……


「ラインハルトさん」

「何だい?」

「僕、一旦離れます。さっきので警戒されたのか、あの上位種がずっと僕を見ているのでここに居るとエリアの邪魔に……」

「構いませんわ」


 俺の言葉をエリアが遮る。


「テイムは自分と魔獣が向き合わなければなりません。リョウマさんが居たから失敗した、なんて言い訳にしかなりませんの。私はそんな事言いませんわ」


 何時になく、凛とした雰囲気できっぱりと言い切るエリア。


「それに、私がテイムする所を見ていて頂きたいですから。そこに居て下さいまし。リョウマさんが居ると心強いですわ」


 そう言って何時もの笑顔を見せるエリア。


 ……こう言われると離れるという選択は無いな。


「分かった。頑張れ」

「はいですの!」


 自然と応援の言葉が出て、俺はエリアの後ろに下がる。


 エリアは数回深呼吸をして、演奏を始めた。


 この前と同じ、ゆったりとした曲調の1曲。初めは小さな音から静かに始まり、段々と大きくなっていく。海の波の様に、音の大きさが代わっていく。


 小さくても大きくても、澄んだ音が途切れる事無く沼地に響き続ける。


 よく見るとリムールバードの群れも先程の男達の時とは違い、音に合わせて首と体を右と左に揺らしている。


 そして、そのままゆったりと曲が終わった。


「…………」


 エリアが緊張の面持ちでリムールバードを見ていると、群れが一斉に鳴き声を上げた。


 しかしこの鳴き声は男達に向けられた人を馬鹿にするような声ではなく、ハープやピアノの様な、楽器が鳴っている様な音だった。群れのリムールバードがそんな音を出しているが、騒音ではない。ちゃんとした演奏のように聞こえる。


 それが1分ほど続き、終わると群れの中で一際美しいリムールバードを先頭にして、その後ろに8羽のリムールバードが続いてエリアの足元に飛んできた。


 それを見てエリアは硬直している。


「エリア、契約、従魔契約」

「そうでしたわ!」


 忘れていたのか、俺の言葉でハッとして従魔契約を行っていくエリア。次々と契約していく様子を見ると、テイムに成功しているようだ。


 そして最後に最も美しいリムールバードと契約し終わったエリアは、大声で喜びを表した


「やりましたわ!!」

「よくやった!!」

「頑張ったのぅ」

「良かったわね、エリア」

「おめでとう」

「おめでとうございます、お嬢様」


 エリアがテイムしたリムールバードは全部で9羽、1羽でも難しいと聞いていたのに、まさかこんなに多くテイムするとは思わなかった。


「見て下さい、こんなに綺麗な子がいっぱいですわ!」


 エリアはリムールバードに囲まれてしゃがみこみ、リムールバードを撫でながらはしゃいでいる。懐いているのか、膝や肩の上に乗っている個体も居る。


 若干鳩の餌の袋を開こうとした時に勢いが付きすぎて餌を零した感じに見えるのが悲しい。何で俺の目と脳はこんな感動的なシーンでそんなくだらない事を思い出すのか……


『鳥の群れと戯れる美少女』とかタイトルをつけて絵画になってもおかしくない光景なんだが……


 こんな事を考えていても仕方がない。俺もこの流れに乗って、やってみるか!


 俺はアイテムボックスからギターを出す。するとその瞬間エリアが目敏くそれを見つける。


「リョウマさん、それは楽器ですよね? リョウマさんもテイムするのですか?」

「エリア程上手くはないですけどね。エリアにあやかって、試してみようかと」

「頑張って下さいまし!」

「頑張って、リョウマ君」

「期待しとるぞ」


 エリアは勿論、皆さんから応援されながら用意を整える。


 エリアのように深呼吸をした。


 俺はギター自体しっかり習った訳でもない。ただ昔住んでたアパートの隣が引っ越す時、要らないギターと教本を貰っただけ。それを何となく、時間潰しに本を読みながらコードを覚えて聞こえた様に適当に弾くだけ。


 エリアの演奏には程遠いが、精一杯弾いてみる。


 俺が弾き始めると、その場にギターの音が響く。選曲は前世テレビで流れていた曲。楽譜なんか買った事も無いが、慣れと感覚で適当に弾いていた曲だ。もう原曲とは大分違うかもしれない。


 だが、それでも構わないだろう。


 それほど上手いとは思わないが、それほど酷いとも思わない。微妙な上手さだと思うが、俺が気分よく弾ければ良い。


 するとエリアの時のように、リムールバードが音に合わせて体を揺らし始めた。


 ノってきたな? 見てるとちょっと面白いな、これ。


 そして一曲弾き終わると、リムールバードは数秒黙って動きを止める。そしてさっきの演奏のような鳴き声を上げた。


 そして足元に6羽のリムールバードが飛んで来た。それにも驚いたが、更に驚いたのは、6羽の中の1羽がさっきの上位種だったからだ。警戒してたんじゃ無かったのか?


「リョウマさん、契約ですわ!」


 おっと、いかん。俺もボーッとしてた……


 急いで1羽ずつ契約をし、滞りなく6羽のテイムに成功した。


「ふぅ……成功です」


 俺がそう言うと、周りから大きな拍手と言葉が送られた


「おめでとうございます、リョウマさん!」

「エリアもリョウマ君も、成功して良かった」

「おめでとうございます、リョウマ様」

「やりやしたね、坊ちゃん」

「リムールバードのテイムはとっても難しいのよ、それも1度に複数羽と契約なんて2人とも本当に凄いわ!」


 奥様がそう言うと全員の目が俺たちがテイムしたリムールバードに移る。すると、俺がテイムした上位種の奴と、エリアがテイムした中で一番綺麗な奴が仲良さげに空を飛んだり地面で跳ねたりしていた。


 あのリムールバード、本当に綺麗だな。俺がテイムした6羽も十分綺麗なんだが、あの1羽だけなんか他のより若干色が明るくて輝いてる感じがする。


 ここでセバスさんが何かに気づいた様だ。


「……お嬢様、リョウマ様の上位種と一緒に居る1羽を呼んで、魔獣鑑定をして頂けますか?」


 エリアは少し首をかしげたが、すぐに呼んで魔獣鑑定を使った。ちなみにその1羽を呼び戻した際に俺のも一緒に戻ってきて、俺の頭にとまった。何故頭にとまる……軽いから別に良いけど。


「えっ!?」


 俺が頭の上の奴に気を取られていると、エリアが驚いて声を上げていた。


「どうしたんです?」

「この子、リムールバードではありませんわ! 上位種です!」


 何!? リムールバードの上位種って10年に1度しか見られないんじゃなかったのか!?


「そうなんですか!? 色が僕のとは違いますが……」

「ええ、ナイトメアではなくファントムリムールバード、という種類のようです。闇魔法ではなく光魔法を使えるようですわ」

「そんなのも居るんですか」


 俺はただ珍しいと考えていたが、セバスさん達は驚いて言葉を失っていた。そして正気を取り戻してからはその場で胴上げを始めそうな位喜び、エリアを褒め称えていた。


 皆さんが落ち着いてから話を聞くと、ファントムリムールバードはリムールバードの上位種であるが、同じ上位種のナイトメアより更に希少で50年に1度目撃例があれば良い方なのだと言っていた。


 マジっすか!?


 その後、エリアの訓練の一貫として沼に入りグレルフロッグの捕獲を行ったが、皆気がリムールバードの方に向いていた。と言うか、エリアの訓練のためにここに来た事を忘れかけていた。


 グレルフロッグも泥沼の匂いを気にしなければ割と簡単に捕まり、消化試合のように、単純作業を淡々とこなしてグレルフロッグを乱獲した。他に誰も居なくなっている事が作業を更に単純にする要因だ、ここに来た時みたいに大勢の人が居たら獲物の取り合いで単純作業にはならないだろう。


 沼から上がった俺達は、クリーナースライム浴で汚れを落とし、街に戻る。……訓練的にこれでいいのだろうか? 汚れた状態に慣れるのが目的ではなかったか? エリアのスライムもクリーナースライムになるから良いのか?


 分からんが、誰も止めないしいいか。


 今俺達は作業を終えて、帰る前に1度休憩を入れている。


 奥様はエリアと共に俺達のリムールバード達に囲まれ、ラインハルトさんはそれを離れた所から羨ましそうに眺めている。ラインハルトさんが鳥系の魔獣と相性が悪いとは聞いていたが、近づくだけで威嚇されるほど嫌われるとは思わなかった……


 ラインバッハ様は宴会の準備をするように指示を出し、セバスさんはワープで街に戻り、アローネさん達に準備を始めるように伝えに行っている。





 そんな訳で休憩を終え、街に戻って宿に帰ると香辛料をふんだんに使った豪華な食事と最高級のお酒が用意されていた。


 その後は当然の如く、宴会になった。主役は勿論エリアと俺。何度もラインハルトさん達に褒められつつ食事をした。


 エリアは早々にお腹いっぱいだと言って俺や皆さんとの話に夢中になっていたが、俺はどうも貧乏性が抜けないのか話しながらも目の前の食事とお酒が勿体無く感じて食べ過ぎ、そして飲み過ぎた。


 久しぶりにこんなに飲み食いしたな……しかし、前世とは色々違うな。


 人に囲まれて飲む事はあったが、こんなに楽しくは無かった。料理もこの世界の物よりは美味い筈だが、今日の食事の方が美味く感じた。酒もな。


 ……そういやテクンが俺は前世で楽しい酒を飲めなかったとか言ってたらしいな。楽しい酒ってのはこういう事を言うのだろう、多分。とりあえず、今日はテクンに祈っておこう。


 宴会がお開きになった後、俺は今日宴会で出た高級酒の残りを供え物用に少し貰って部屋に戻った。そして前作った石像は店においてあるのを思いだし、新しい石像を作りその前に貰った酒を備えて祈る。


 この世界に来て宴会は2度目だが、前世とは違い楽しむ事が出来た。ありがとう。貰い物だが、高級酒を供えさせて貰う。


 ……こんなもんかね? とりあえず一度像に向かって頭を下げ、寝る事にした。


 今日は、いい気分で眠れるな……

はい、大きなイベントが終わりましたね。


話のキリが良いので、明日の投稿で第二章の終了となります。


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