第二章 12話
2014/2/20の投稿です。
翌日
~Side 竜馬~
俺は朝早くから店に居た。今日から開店、そしてカルムさんとカルラさんが来るからだ。
昨日の集まりのあと、明日からでも営業は始められます! という2人の勢いに押されて今日から開店する事にしたからな……早まったか? もっとゆっくり丁寧に……いや、勢いも大事だよな? 俺、丁寧に……っていってるうちにズルズル時間が経つタイプだし……
そんな事を考えていたら2人が店に入って来た。
「「おはようございます、店長」」
「おはようございます、カルムさん、カルラさん。今日からよろしくお願いします」
2人が来てから簡単な確認をし、開店準備を整えた。と言ってもクリーナースライムを待機部屋に入れたり、つり銭と袋を用意しただけだがな。
ちなみに袋は今朝2人がセルジュさんの店から大量に購入して来てくれた。昨日皆さんが帰る前に、セルジュさんに注文しておいたのだ。本当に助かる。
「さて……では、行ってきます」
「「行ってらっしゃいませ」」
どこに行くかというと、冒険者ギルドに仕事に行くんだ。
初日から人任せもどうかと思うが、チラシや広告による宣伝が出来ないので俺がギルドで仕事を受ける際に宣伝をする事にした。セルジュさんは本当に全てを任せられる人材を用意してくれたし……ぶっちゃけ俺要らなくね? まぁその為に人を雇うってのが目的なんだがな。
そんな事を考えつつ、ギルドに行く前にお隣に寄る。ポリーヌさんにも開店した事を伝えなければ。
「すみませーん、誰かいらっしゃいませんか?」
開店はしているようだが、誰も店内に居なかったので、声をかけると奥からポリーヌさんが出てきた。
「はいはい、あら! リョウマ君じゃないか。今日も種を買いに来たのかい?」
「いえ、今日から洗濯代行業者・バンブーフォレストが開店の運びとなりましたので、お伝えしようと」
「おやおや、もう開店かい? 早いねぇ」
「はい、皆さんのお陰です。この前、渡したひと袋はタダですので、是非1度ご利用下さい。メリーさんやキアラさんにもそうお伝えください。店員2人には話を通してありますから」
「アンタ、人を雇ったのかい?」
「知人の商人の方の紹介で。冒険者の仕事をしている時は、完全に2人に任せることになりますね。あと、経営が軌道に乗るまでは冒険者業の稼ぎで給料を払わなければいけませんし」
働かせて頂けるなら給料は要りません!! とまで言われたが、流石に申し訳ないからな……正直何故そこまでウチで働きたいかが分からん。
多分ウチよりセルジュさんの所の方が能力活かせるし、給料多いと思うんだがなぁ……こっちは助かるから文句は無いけどな。
「店の大きさを考えると必要なのかねぇ。ま、頑張んなよ。アタシも応援するし、今日早速利用してみるからさ」
「ありがとうございます。では、仕事に行ってきます」
挨拶をして店を出る。そしてギルドに行くと、すぐに声をかけられた。
「リョウマ、洗濯屋がもうすぐ開業だってな?」
「何時から?」
「早く開業してほしいな~」
廃坑の魔獣討伐からは乗合馬車の中などで知り合ったジェフさん達以外の冒険者とも雑談をする事が少し増えてきた。彼らも洗濯屋の開業を待ってくれているようだ。
「洗濯代行業者・バンブーフォレスト、今日から開店ですよ」
「ホント!?」
「はい。冒険者の方には防具や武器を含めた全身洗浄サービスもありますから、どうぞご利用ください」
「おっしゃ! 今日の帰りに絶対行くぜ!」
こうして宣伝のために態と大きめの声で開業と店の場所を伝えてから、今日は薬草採取の依頼を受けた。これから廃坑の見回りに行くので、その行き帰りに採取する。
店は任せるとは言ったものの、開店初日なので手早く見回りを済ませて戻ってみた。すると……
開店初日なのに人が集まってる……え、外に20人以上人が居るぞ!?
慌てて店内に入ってみると、カルラさんが俺を迎えた。
「いらっしゃいま……店長!」
「カルラさん、この状況は?」
「嬉しい悲鳴です!」
「店長! ご近所の奥様方に洗濯を依頼しに来て頂けました!」
奥に居て洗濯物運びをしていたカルムさんも出てきて、俺を見てそう言った。とにかくこの人数捌かなきゃいかん!
「僕も手伝いに入ります、お2人は接客を、洗濯物運びは全て僕がやります!」
そう指示を出して俺は只管接客と洗濯物を運び続けた。
それを続けるものの、その間にも人が来る。どうなってんだ!?
結局人の波が途切れたのは昼の3時過ぎだった。数はまだ多いとは言えないが、1人1人にこの店の事を説明しなければいけないので時間がかかる。
どうやらこの店の値段設定は本当に安いらしく、本当にこの値段で洗濯を請け負うのか? 後から別途で大金を請求するんじゃないか? と聞かれるんだよ……なかなか納得しない人も居て大変だ。一時は大勢の人が集まっていた事で、警邏中の街の警備兵が何事かと訪ねてきたし。
だがここで思わぬ幸運に恵まれた。店を訪ねてきた警備兵から話を聞いた警備隊長が、警備隊の洗濯物を頼むと35人分のコースに申し込んで袋を2枚買っていったのだ。
何でも去年まで警備隊の洗濯には人を雇っていたらしいが、例の役所の指示した経費削減で人を雇う事が出来なくなっていたらしい。
給料が減らなかっただけマシだったと言いつつも少し役所への愚痴を零してから、とりあえず1度頼んで良かったらまた追加で頼むと言ってきた。早速の大口契約か?
しかし……朝8時から開店だから……客一人につき平均3分位は費やしたよな? 何時から客が来たかわからないが、カルムさんとカルラさん、昼飯も食えず休めずに7時間ぶっ通しで仕事してたのか?
……これはヤバイんじゃないか? 俺はいいけど2人の体が……このままではこの店がブラック企業化してしまう! それは何としても避けたい!! 俺の前世にかけて!
「お疲れ様でした、カルムさん、カルラさん」
「お疲れ様でした、店長」
「凄い人でしたね」
「ええ、本当に……いきなりなんですが、人を増やした方が良いでしょうか?」
「そうですね。早めに増やした方がよろしいかと。交代で休憩を取るために4人から6人ほど必要でしょう。今日はお客様への説明が中心でしたが、今日のお客様の反応を見る限り、じきに作業のみでも人が足りなくなると思われます」
「お客様には洗濯の早さ・仕上がりにはとても満足して頂いたようなので、明日からも顧客は増えます。ギルドで募集をかければ直ぐにでも雇用できる人材を紹介して頂けるはずです」
「そうですか……人を雇う場合、お給料はどれほどでしょうか?」
「1日に120~150スートもあれば十分です。それだけあればその日1日を十分に生活できますし、普通に生活していても貯蓄が可能です。初任給でこれは破格の条件ですので、すぐにでも人は集まるでしょう」
「今回のように緊急でなければもう少し時間をかけて、安い賃金で雇える人材を探す事も可能でしたが、今はすぐにでも働ける者を雇う事が先決です」
「では、さっそくギルドに行ってきます。早い方が良さそうですから」
「「お願いします」」
俺は急いで店を出た。すると隣から大荷物を持って来る4人が居た。お隣の一家だ、全員大きな袋を抱えている。
「おや、リョウマ君」
「ポリーヌさん、レニもリックも、ジークさんもお揃いで。その荷物は?」
「君の店で洗濯を依頼しようと思ってね。ウチは肉屋だから、血の汚れが染み付いた服がたくさんあるんだよ」
そう言うのはポリーヌさんの旦那さんのジークさんだ。ジークさんはうちの隣のポリーヌさんの花屋の隣で肉屋を開いている。完成祝いの料理に使った肉もジークさんの肉屋で買った。
アニメとかで肉屋の主人というと、筋骨隆々の大男のイメージがあったが、この人は真逆だ。背丈はそれなりにあるのだが、細い。非常に細い。風が吹いたら飛びそうな、不健康に見える男性だ。
「リョウマ君の店に出せば、血の汚れも綺麗にしてくれるって冒険者の人から聞いてね」
「買い換える予定だった服を出してみる事にしたのさ」
「ありがとうございます。つかぬことを伺いますが、従業員は雇っていますか?」
「僕を含めて10人だよ」
「それでしたら、7人以上で申し込めるコースがありますので、それをご利用ください。14人分の服が入る袋1袋で中銅貨1枚と小銅貨8枚になり、お安くなります」
「本当かい!? そりゃ得だねぇ」
「それを頼もう」
俺がセールストークをしていると、リックが俺に話しかけてきた。
「おい、リョウマ。お前何してるんだ? 仕事サボってるのか?」
「ははは、そう見えても仕方がないですね。けどサボリじゃない。これから商業ギルドに行くんですよ」
「そうなの?」
そう聞いてきたのはレニだ。
「予想以上に繁盛して、もうこのままだと人手が足りなそうなんですよ」
「嘘!? 開店初日でしょ!?」
「色々宣伝はしてたけど、まさかここまで人が来るとは思ってなくて。急遽人を雇いに行くんです」
「驚いたね、そんなに人が来たのかい?」
「ええ、朝から働いてくれていた2人は7時間休み無しでしたよ」
そんな話をしてから4人と別れ、商業ギルドを訪れる。するとまたも応接室に通され、ギルドマスターがやって来た。
「よく来たね、今日から開店だったそうだが、何か問題があったかい?」
「予想以上の大繁盛ですよ、おかげで初日から人手が足りなくなりそうになりました」
「初日でかい? そいつはアタシにも予想できなかったね……今日は人手の補充か。分かった、明日からすぐ働ける奴を集めるよ。その中でアンタが決めな」
その後商業ギルド内の会議室に人が集められたと連絡があるまで、俺は応接室で待たされた。そして連絡が来て会議室に行くと30人の老若男女がそこに居た。
彼らは雇用主として俺を値踏みをしたようで、皆興味を失ったような顔をして視線を俺から外す。
姿が11歳の子供だからなぁ……俺の下で働きたくない人は居るよな? まぁ、分からない事はない。
「さて、この連中は皆基礎の算術は収めてる。どいつでもすぐに店で使えるよ」
「分かりました。初めまして皆さん、私は洗濯代行業者・バンブーフォレストという店を経営しているリョウマ・タケバヤシと申します。本日はお忙しい中お集まり頂き、ありがとうございます」
その言葉に周囲にざわめきが起こる。ぼそぼそと聞こえてくる声によると、俺は雇用主ではなくその使いっぱしりか何かだと思われていたようだ。
さっきのは値踏みされたんじゃなかったのか……
俺の挨拶の直後、明らかに会場全体のテンションは下がった。それを無視して質問する。
「えー、まず1つお聞きしますが、こちらに居られる方は皆、私の店で働く事に異存はありませんか?」
その問に、ポツポツと異を唱える声が上がる。主に若い者たちだ。
人手不足と言っても、外見11歳の俺が上司だというだけでやる気の無い人、嫌々働く人は要らない。この分だと給料の話は最後にした方が良いな。高い給料だからと群がられても困る。数多いし、減らせそうなうちに減らすか。
不満げな人たちが出たので、そういう人達には私の店で働きたくない人には無理強いは致しません、と言って部屋を出て行ってもらう。
なんとこれだけで全体の5分の4が出て行ってしまった。残ったのはたった6人だ。まぁ出て行った連中の不満も分からない事ではないからな……残ってくれた人には礼を言っておこう。
「それでは残って頂いた6人は、私の店で働く意志ありとしてお話させて頂きます。その前に、こんな若造の経営する店で働いても良いと言って下さった6名様には感謝を申し上げます」
俺はそう言って1度頭を下げ、それから話し出す。
「それでは本題に入らせて頂きます。私の店、バンブーフォレストでは現在、接客と荷運びの出来る人材を募集しております。荷運びと言っても、運ぶ物は衣服ですので女性でも問題はありません。ただし注意点として1点、店主である私は従魔術師でして、店内に従魔であるスライムが居ります。私は、スライムも人手として使っているのです」
その言葉に残った6人が驚く。従魔術師である事は普通に聞いていたが、スライムを人手にしているとは思わなかったらしい
「よってスライムを恐れたり、嫌う方には我が店での仕事はやりにくい物となるでしょう。そこの所は、いかがですか?」
そう言うと1人の女性が手を上げる。
「何でしょうか?」
「そのスライムは、人手がないから使っているのですか? それとも人手があっても使うのですか?」
「人手があっても使います。こう言うと嫌がる方も居るかもしれませんが、スライムも皆様の同僚として扱って頂きたい」
そう言うと彼女とその他3人の男女がスライムと言っても魔獣と仕事をするのは……と断って出て行った。これで部屋に残ったのは中年の男性と若い女性の2人のみになった。
面接ってこんな物だっけ?
単にすぐ働ける人を集めただけで、元々俺の店で働きたいって人のみが集められた訳じゃないけど流石に驚きだよ! ……まぁいいか、残りの2人はどうだ?
変な所で区切った感じもしますが、今日の投稿でした。
竜馬の店は開店初日から大繁盛、竜馬は口コミの力を侮っていましたね。
実は魔法で店を建ててる時点で奥様方の噂にはなってたんですよね。凄い速さで店を建てて行くから。
それに加えてポリーヌさんや冒険者にまでさりげなく、手当たり次第に宣伝していった結果、初日からブラック企業化の危機に陥りました。




