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第二章 4話 

本日の投稿です。


話の区切りが上手くいかず、少々長めです。

 3日目


 一昨日は俺が暴れてオブテモの牙の連中を参加不能にし、昨日はゴブリンキング騒動で負傷者多数。そのおかげで鉱山の魔物討伐が遅れ気味らしい。


 昨日の事もあるので、俺の班は解散、ジェフさん達はそれぞれが低ランクの冒険者を率いて安全確保と指導に当たっている。


 そして俺はというと、指導を受ける必要はないが、ランクも低く冒険者になって日が浅いため指導をさせるにはやや不安がある。という事で、スライム達と俺だけで狩りの最中である。


 ケイブバットやスモールラットはスティッキースライムの棒に粘着液を吐き出させたり、棒に塗って振り回させたりしたらトリモチのようにくっついて簡単に捕まえられた。ケイブマンティスは昔倒した盗賊の槍を持たせたポイズンスライムに鎌の間合いの外からあっけなく仕留められていく。そして、獲物として食われていく。


 何というか、このスライム達、今までの訓練で数の暴力に加えて個々の力もつけてきたな……それに何かこいつらがケイブマンティスと戦ってるのを見るとあれを思い出す……なんだっけ、地球にあったゲーム。一時期凄い人気だったやつ。テーマソングがのんびりした曲なのに、何故か歌詞が殺伐としてた記憶がある。


 今日は特に何事もなく、作業は終わった。1度昼前に5匹のゴブリンを見かけたがそれ以外に仲間は居らず、一応報告したら昨日の潰した村の生き残りだろうという話になった。


 午後の作業の途中からは思いつきでスティッキースライムで色々実験をした。


 例えば天井にへばりついて貰い、体を下に伸ばしてぶら下がるような状態のまま坑道を進んで貰った。ケイブバットがあまりにもうっとおしく飛び回るので、ハエを思い出してハエ取り紙の真似をしてもらったのだ。そしたら取れる取れる、ケイブバットがベタベタ引っ付いて捕食されてた。


 更に一番器用な気がするスティッキースライムにジャンプした直後に体を網の目にしてくれと指示を出すと、出来た。そして俺はそのスライムを掴み、空を飛ぶケイブバット目掛けて投げる、そしてスライムが網になる。そのままケイブバットを大量に捕獲して地面に落ちる、とても便利な技が完成した! これは色々と使えそうだ……


 スティッキースライム超便利! 何というか、スティッキースライムって出来る事が幅広いと思う。戦闘にも日常生活にも使えるスライムだ。





 仕事終わりに乗合馬車で街に戻ると、街に入った所で馬車の車輪が壊れる事故が起こった。事故といっても特に誰かが怪我をしたわけではなく、突然馬車が壊れて揺れが激しくなったのだ。このまま走ると危険らしいので、俺を含めた乗客はそこからそれぞれ徒歩で帰る事になった。


 そして歩いていると、セルジュさんのモーガン商会の前を通りかかる。


 そう言えば昨日は貰った魔力回復ポーションのおかげで助かった。洗濯屋で基準にする袋とかも見れるかもしれないし、ちょっと寄っていくか


 そう思って店に入ると、店員の女性と話しているセルジュさんが居た。彼は俺を見るとすぐに笑顔で声をかけ、応接室に通された。店先で商品見ようとしてたんだが…


「ようこそいらっしゃいましたリョウマ様。本日はいかなご用向きで?」

「昨日の依頼で先日セルジュさんに頂いた魔力回復ポーションが役に立ちまして、そのお礼が1つ。そして欲しい物があったのですが、他に良い店を知らないものでして」


「そうでしたか、私共の商品が役に立ったのならば何よりです。探し物で我が店に来て下さった事も光栄です、何がご入用ですか?」

「素材は安物で構わないのですが、丈夫な袋を数枚。大きさは……決めかねているんです」

「ほう、何を入れるかにもよりますが、何に使われるかお聞きしても?」

「少し話が長くなるのですが、実は……」


 ここで俺が自立を始めようとしていると説明するとセルジュさんは驚きつつも感心したように俺を見て、洗濯屋という仕事の案を聞いて興味を持つ。


「なるほど、冒険者業の合間の副業、冒険者業を廃業した場合の事まで考えて……リョウマ様はその年で素晴らしい計画性をお持ちですな」


 だって俺、ホントは42だからな……日本の同じ年のおっさんと比べたらそれほど計画的ではないが、危ない仕事に就いてる自覚とそれに備える位の計画性はあるさ。この世界、保険とか年金とか無いし。


「いえいえ、それほどではありませんよ」

「ご謙遜を……しかし、洗濯屋ですか……確かに1袋小銅貨1枚から中銅貨1枚の値ならば冒険者に限らず民間にも広く利用されるでしょう。ただ、それには洗濯を行う人手と、洗濯をした後に客が満足できる結果を出さねばなりません。最初は良くても段々と顧客が増えれば一人では作業が追いつかないと思いますよ」


 あ、クリーナースライムの話をし忘れてた。


「1つお伝えし忘れていた事があります。少々お待ちください」


 俺はディメンションホームからクリーナースライムを1匹出す。


「これは僕の従魔で、クリーナースライムというスライムです」

「聞いた事が無いスライムですな?」

「はい、これは僕が発見した新種のスライムです。テイマーギルドには情報を提供しましたが、現在テイムしているのはこの世界で僕だけでしょう」


 神様直々に新種と言われたから、俺の従魔以外にはクリーナースライムは居ないだろう。


「そのスライムに何か関係が?」

「このスライムの持つスキルに清潔化という物がありまして、それを使う事でこのスライムは汚れのみを食べてしまうのです。そして汚れを食べられた物は当然、汚れが無くなり綺麗になります。普通に洗濯するよりもです」


 その言葉にぽかんと口を開けたセルジュさん。やっぱ信じられないよな……


 そこで俺はアイテムボックスから今日倒したゴブリンの腰布を出してこう言う。


「話だけでは信じがたいでしょう。そこでこちらをご覧ください、この布は今日の仕事中に仕留めたゴブリンの腰布です。よろしければ、セルジュさんの目の前でこれの汚れを食べさせ、綺麗な布にしてみせます」


 俺がそう言うとセルジュさんはゴクリと喉を鳴らしてそっと一言いった。


「是非、お願いします」

「念のため、鑑定しますか?」

「一応、させて頂きます。こんな匂いをさせるのは、間違いなくゴブリンの腰布でしょうが……」


 そう言って軽く笑いつつ鑑定をするセルジュさん。その鑑定結果がゴブリンの布と出たのを確認し、俺はクリーナースライムに布を渡す。クリーナースライムは何時もの様に体内に布を取り込み、洗濯機のように動かす。そしてみるみるうちに汚れは落ちて、最後にクリーナースライムが応接室のテーブルの上に布を吐き出した。ここまでの所要時間30秒足らず


 明らかに先程とは違う色の布をおそるおそる手にとって鑑定するセルジュさん。そして鑑定結果は清潔な布と出たそうで、『ゴブリンの色々な汚れが付いた腰布をこんな短時間でここまで綺麗に出来るなんて!』と興奮して俺の手をとり賞賛し始めた。


 俺の手、さっきゴブリンの腰布触ってたから汚れてるんだけど……と俺の視線でその事に気付いたのか、軽く顔色が曇ったセルジュさん。ちょうどいいのでクリーナースライム浴の説明もして、体験してもらう。手だけな。


 その後態々自分の手も鑑定して調べそしてまた手をとって賞賛の嵐。


 この人、良い人なのはわかる、俺の見た目で見下さないし。でも、精神的に疲れる……


「お恥ずかしい所をお見せしました。しかしこのスライムは本当に素晴らしい。このスライムが居れば、リョウマ様が洗濯屋を開くのに問題は無いでしょう。料金・早さ・仕上がり……繁盛している光景が目に浮かぶようです」


 何か1人でトリップしとる……


「で、どの程度の大きさの袋がちょうどいいでしょうか? 恥ずかしながら、相場がよく分からないものでして」

「そうですな……幾つか持ってこさせましょう」


 セルジュさんはそう言うと使用人の女性を呼んで、何枚かの袋を持ってこさせた。


「見ての通り左から右へ大きくなっていきます。一番左は一般家庭の大人一人分の服が入りますな」

「もう少し大きい物がいいですね。家族だともっと量が多くなるでしょうし、独身男性などは洗濯を億劫に思って溜め込む人も居るでしょう。


 それに1着中銅貨1枚より4着5着で中銅貨1枚の方が安く、お客様に得だと思わせられるでしょう。こちらとしては1着でも5着でも労力に差はありませんし、最低限の生活費が稼げれば良いのですから1度にそれほど多くの対価は求めません。1回分を安くし、多くの人に繰り返し利用していただく事で利益を出したいと思います」


 薄利多売の商品、前世で世話になったな……昼は牛丼屋にも行ったな……


 それに俺は買い物に行く店はほとんど決まりきっていた、あの頃よく行った店からしたら俺はリピーターだったと思う。前世に住んでた辺りの店に総額幾ら払ったか分からない。不満はないぞ、前世を支えてくれてありがとうございました。そっから思ったが、リピーターの確保、大事だよな?


 ってそんな事考えてたら、なんかセルジュさんがキラッキラした目で俺を見てる……


「素晴らしい。リョウマ様は先を見据え、目先の利益に踊らされない素晴らしい経営方針を既にお持ちのようですな。このセルジュ、感服いたしました」


 何だこの、微妙な気分。日本では大抵の人が知ってるよ?子供でも思いつくかもよ?俺、凄くないよ……?


 前世の経験から話してただけなんだけど、ここまで褒められるとむず痒いを通り越して罪悪感が出てくる……日本で真面目に経営学とか学んでる人、ごめんなさい……


「それではこちらの袋は如何でしょう。この袋ならば詰めれば一般家庭の家族3人~4人の衣服が2日分は入ります」

「そうですね、1人分なら1週間分ほどでキリも良さそうです。それにしましょう。それからその袋の倍の大きさの袋と5倍程の大きさの袋も2,3枚頂けますか?」

「ご用意出来ますが、大き過ぎでは?」


「先ほどの袋は個人用に勧める物として、倍は冒険者のパーティーなどの小さい集団向け、5倍は冒険者ギルド、弟子を多く抱える鍛冶屋、建築現場で作業する作業員など、大きな集団向けに勧めようと思います。


 個人向けを1日1人分と計算して7日で7人分。その倍の袋は14人分、5倍は35人分の衣服が入るとします。


 個人向けを中銅貨1枚、10スート。倍を中銅貨1枚と小銅貨8枚、18スート。5倍は中銅貨4枚の40スートと割り引いて、集団での利用客を対象に割引を行おうと思います。


 割引があるなら利用しようと思う人も増えるでしょうし、人数が足りなければ洗濯屋の事を他人に教えて人数を揃え、結果的に洗濯屋の話が広まる事になります。


 そして人が多くなるという事は洗濯物が溜まるのも早くなります。1人なら14日分溜め込める袋が、14人では1日で溜まります。そうなればほぼ毎日洗濯物を頼まれ、こちらにはほぼ毎日中銅貨1枚と小銅貨8枚が手に入ります。


 こうすれば私には毎日お金が入り、顧客一人あたりの支払額は減るため長期的に見れば確実に得になりますので、お互いに得をしていける商売になるかと思います。


 更に鍛冶屋や建築作業従事者などは汚れやすい職場のため、そこから大人数の利用客が来れば、作業着を洗濯に出す事が予想されます。その場合、作業着で洗濯屋の良さを知って頂いた顧客には個人、または仕事仲間で作業着以外の私服の洗濯の依頼が入る可能性もあります。


 鍛冶屋も建築作業従事者も男の職場ですからね、洗濯を苦手とする方や面倒と思って放り出す方もそれなりに居るでしょう。職場で1つ大口の依頼を出して頂ければ、そう言った客層も手に入れられるかと、思われます」


 ふー………あ! あ~……失敗したな、セルジュさん目を見開いて固まってら……昔から、一方的に話す癖があるんだよな……これで前世は何度職場や人間関係で失敗したことか……久しぶりにこんな前世の仕事っぽい話をして気が緩んでたか?


「すみません、時折1人でまくし立てるように喋る悪癖がありまして……ご気分を害してしまったなら、申し訳ない」

「いえいえいえ! とんでもございません! 私、少々驚いていたのです。リョウマ様は確か11歳だったはず。そのお歳で算術、それも暗算が出来る事もそうですが、リョウマ様の仰った商売方法は今まで聞いた事もありません。ですが、非常に有効な手段であると思われます。私、今目からウロコが落ちた思いでございます」


 そっちか!? そういや俺今11歳児だった! 算術……はまぁともかく、簡単な物でも商売の経営戦略とか考えてたら驚くわな……考えたっつーか、現代の宣伝とか勝手に解釈して並べただけだけど……単純な計算で穴だらけだろうし。というか、割引とか無いのか? そんなに俺、驚かれる事言ったか?


「あの、割引とかも、無いのですか?」

「割引はございますが、リョウマ様が仰った様に、常時割引をするという発想が今までに無かったのです。割引は商人が多少損をしても自らを少しでも良く思わせたい相手に今後の事を見込んで、もしくは早く売ってしまいたい物を売りつけるために行うのが基本です。


 中には厄介な客に早く帰って貰いたいからという理由や、悪質な物では相場を知らない客に最初は法外な値段を先に提示して、安く売った様に見せかけて相場より高めの値段で売る商人も居ます。ですがそれはいずれもその場限り。常時値段を割り引く店など聞いた事もございません」


 本気で言ってるみたいだな……?


「こうなるとリョウマ様は商業ギルドに登録をなさる事をお薦め致します」

「商業ギルド、ですか?」

「はい。この街にも支部はありますので、すぐにでも登録が可能です。商業ギルドは各国で異なり、その国の全ての商売を取り仕切っているため行商や露店、屋台まで。商売には必ずギルドを通す必要があります」


 え!? じゃあ……


「では、僕がやろうとしていた事は違法でしたか?」

「いえ、“表向きは”ギルドが各国の商売を取り仕切っていますが、本当に全てを牛耳っている訳ではありません。辺境の村の間では互いの村の物を勝手に売り買いしていますし、旅の途中に自分で採取した薬草などを薬屋などに売ることも禁じられていません。


 同じく子供や冒険者が小遣い稼ぎに何らかの雑用をギルドを通さずに受け、報酬を得る事は問題ございません。その際の値段設定もよほどの高額報酬ではなく、違法行為も無く、両者の合意があれば問題になりません。


 しかし、今日リョウマ様のお話にあったように仕事をすれば、小遣い稼ぎとは言えない大金が転がり込む事になります。こうなるとギルドに介入され、問題になるでしょう」

「危なかった……ありがとうございます、セルジュさん」

「いえ、私もまだリョウマ様を侮っておりました。冒険者業の副業として、空いた時間の小遣い稼ぎと思い、軽く見ておりました。まさかここまで深く経営を考えておいでだったとは思いませんで、登録の話を省いておりました」


 いや、全然深く考えてないんだが……


「では、洗濯屋をやるとすればギルドへの登録が必要ですね、既に冒険者ギルドとテイマーギルドに入っていますが、問題ありませんか?」

「ご心配なく、登録の際は私がリョウマ様を推薦致しますので。問題なく登録は可能です。試験なども特にございません。他のギルドとの掛け持ちは問題ないどころか、より多くの情報が入りやすくなりますので歓迎されています。よろしければ、明日にでも登録をしに行きませんか? 私がついて行きますので」


「明日ですか? 明日はまだ冒険者としての依頼がありますので、戻るのが今日と同じ時間帯になってしまいます」

「問題ありません。商業ギルドには必ず数名の職員が詰めており、何時でも全ての手続きが行えます。商人にとって情報は命、情報の鮮度が落ちる前に情報を届ける必要がありますからな」


 異世界で24時間営業……だと……?


「それでは、セルジュさんがよろしければ」

「勿論ですとも!」


 うおっ!?


「リョウマ様の考案された洗濯屋、これは素晴らしいものです! まだどの商人も目をつけておらず大きな利益を生む商売であり、この世界の商売のあり方に一石を投じる商売でございます! 私セルジュ・モーガン、微力ではありますが、お力にならせて頂きます!」


 何か凄い大げさな事言い始めたー! こんなに大事になるなんて……小遣い稼ぎになるかな? 程度だったんだが……


「あ、ありがとうございます。心強いです」

「勿体無いお言葉です。こうなりますと、店を開く土地のことも考えなければなりませんな」


 店!? そんな大規模にやる気はないぞ!


「ふむ……そのお顔を見ますに、リョウマ様はそこまで大きく手を広げるつもりは無かったのですな?」

「はい。精々最低限の生活費が稼げればと思っていました。ですから露店の様に街角でも良いですし、自分で各家庭を回っても良いと思っていました。店となると冒険者業の副業には出来ませんから」

「なるほど。しかし経営の事なら問題はございません。私の店の者を数人そちらにお貸し致します」


 いや、それはダメだろう。人に任せっきりって……


「いえ、店を持つにしても、人に全て任せてしまうのは……」


 そう言うとセルジュさんは苦笑いをしてこう言った。


「ふむ……公爵家の方々の言っていた事も少し分かる気がしますな。……リョウマ様、経営を人に任せる事は何もおかしな事ではございませんよ?」


 え?


「確かに初めて店を持った者は通常自分で店を切り盛りしますが、私程になると多くの支店を持つようになります。そうなると私1人では全ての店に目を届かせ、経営する事など出来ません。信用の出来る部下を選び、育て、そして支店の経営は任せているのです。それはおかしい事と思いますか?」


 そう言われると、確かに……日本のチェーン店とかも店長は雇われでオーナーじゃない事なんてザラだよな……


「確かに、それはおかしい事では無いですね」

「そうです。それに、世間には経営者に向く者と向かない者が居ります。向かない者が無理をして経営するよりも向いた者を雇い経営を任せる方が店がよく回ります」

「それも、分かります」

「リョウマ様は……現時点では判断が付きません。アイデアとそれを実現する手段や経営方針を既に確りとお持ちな所は経営者として向いていると言えますが、腹の探り合いなどはあまりお得意だとは思えませんな。心の内が表情に出ておりますから」


 そんなにはっきりと出てるか!?


「リョウマ様の年齢を考えれば、普通よりは隠せているとも思いますが、海千山千の商人には通用致しませんよ」

「そうですか……」


 前世ではポーカーフェイスにそれなりに自信あったと思うんだが……俺の気のせいだったのか?


「それに、私も完全な善意で人を貸すと言っているのではありません。ラインハルト様から紹介された際にリョウマ様の相談にのるように言われた事も1つ、そしてリョウマ様自身の将来性を見込んでの話でございます」

「将来性、ですか?」

「はい。その歳で防水布や糸、そしてあの鉄のインゴットと数々の品を生み出したリョウマ様には、ラインハルト様の紹介を抜きにしても注目しているのです。それに加え本日のお話も今後の儲けが大変期待できる内容でした。これを無視するなど商人として出来ません。私もリョウマ様の店に袋を卸すだけでも良いので、一口乗らせて頂きたい。開業資金の投資も行いましょう」


 ……そこまで言うなら、良いか? でもな……


「資金を投資して、失敗したらどうするのですか?」

「失敗を恐れていては店を大きくする事など不可能、ある程度の大きさの店を持つ商人であれば多かれ少なかれリスクを背負っております。


 何より、リョウマ様の店には失敗の要素が思い浮かびません。更に、もし失敗したとしてもその時は損失額分を賠償額として、リョウマ様に鉄のインゴットと防水布と糸を大量に作って頂けば良いのです。それだけで十分に損失は補えます。成功の可能性が高く、損失を取り返せるあてまである、ここで話に乗らない商人は商人ではありませんな」


 なるほど、確かに鉄のインゴットを作れば稼げるか…………


「分かりました。ご協力をお願いします」

「その気になって頂けましたか?」

「はい。ですが金銭面の投資は遠慮させて頂きます。幸いお金は昔、盗賊を討伐した際の賞金がだいぶありますので」

「そうですか。では人手を?」

「よろしくお願いします。あと、袋を始めとした店で使う雑貨はこちらで買える物はこちらで買わせて頂きます。インゴットはこの話とは別に、時間ができれば持ち込みましょう。元々廃坑の管理を任されてから作る予定でしたから」

「ありがとうございます。これから、互いに良い商売が出来そうですな」


 こうして話は纏まり、その後上機嫌のセルジュさんから袋を購入して店を出た。







 暗くなった道を歩いて宿に帰る。そして宿では怒りのオーラを吹き出したエリアが待ち構えていた


「エリア……?」

「リョウマさん、こんな時間まで何をしてたんですの? 心配したんですよ……」


 エリアは怒りのオーラを収め、そのまま泣き出してしまった。どうやら物凄く心配をかけたようだ。俺は雑魚相手でも魔物の討伐依頼受けてるからな……悪かった。そう思ったためエリアの泣きながらのお叱りは黙って受け止めた。その後、泣き疲れ、怒り疲れたエリアはもう寝ると言う。俺はメイドさん達に連れられていくエリアを見送る。


「失礼します。ご心配お掛けして、申し訳ありません」

「もういいわ、エリアにたっぷり叱られたみたいだしね」

「心配したのは事実だけどね」

「次からは気をつけるんじゃぞ」

「はい、肝に銘じます」

「で? リョウマ君はこんな時間までどこに行ってたの?」


「馬車の故障で北門の近くから歩いて帰ってきたのですが、途中でセルジュさんのお店の前を通りかかりまして。昨日のゴブリンキング討伐後に、セルジュさんから貰った魔力回復ポーションのおかげで負傷者にヒールをかけ続ける事が出来たので、そのお礼に行きました。そのついでにちょっと買い物をしようと思ったのですが、気づけば長話になってしまいました」

「セルジュの所に居たのか……何を話してたんだい?」


「自立のための収入を得る方法を模索している事や、クリーナースライムを使った洗濯屋の事を話しました。あ! そうだ、明日も帰りが少し遅くなると思います、今日怒られたばかりですいませんが……」

「事前に連絡してくれれば良いわよ、別に。で、何かあるの?」


「セルジュさんと商業ギルドに登録に行きます。話している内に話が大きくなり、洗濯屋をやるためにはギルドに登録が必要になったんです」

「何? 生活費の足しにする程度の報酬で行う雑用では無かったのか?」

「僕もはじめはそう思っていたのですが、セルジュさんと話している間に店を構える事が出来るまで話を詰めてしまいまして…」


「店じゃと? そこまで話が進んでおるのか?」

「セルジュさん曰く、“繁盛する未来が見えるよう”だそうです。店番などの人員は数人ならセルジュさんの店から出して頂けるそうで」

「セルジュがそこまで言うとはね…オープンは何時だい?」


 え!? ナチュラルにオープンの日を聞いてきた、驚かれると思ってたのに。


「まだ店舗の事など色々ありますので未定ですが……皆さん驚かないのですね? こんな、11歳の子供が店を開くと言っても」

「自分の店を持つのに年齢制限は無いからね、露店ならリョウマ君ぐらいの子が開いている事もあるし、普通の店でも店番をしている事もあるよ」

「流石にちゃんとした店を開く11歳児は居らんが、君じゃからな」

「リョウマ君は普通の子と違うからね、まぁ、出来るかな? って思っちゃうのよ~。リョウマ君って色々な知識を持ってるみたいだし、セルジュから太鼓判を押されたなら大丈夫でしょう。でも、何かあったら頼るのよ? 定期連絡を忘れないようにね?」


 それでいいのか?


「分かりました」


 その後なんとなくモヤっとしたまま部屋に帰り、昨日やり残したスライムの分裂と契約をした。


 今のスライムの数はこうなった。


 スティッキースライム×907

 ポイズンスライム×666

 アシッドスライム×666

 クリーナースライム×22

 スカベンジャースライム×3033 

 ヒールスライム×2

 メタルスライム×1

 スライム×1



 スティッキースライムが900匹を越えた、もうすぐ1000だ。


 ポイズンスライムとアシッドスライムがゾロ目+同じ数で揃った。しかし666ってなんか不吉……


 クリーナースライムが倍になったのは嬉しい。


 今回のゴブリン戦のせいか? スライムが強くなっていた。ビッグやヒュージ~スライムの状態で手に入れていた物理攻撃耐性は良い。しかし、まさかスライムが棒術やら槍術やら体術を覚えるとは思わなかった。


 いろいろ考えて教えたが、スライムがこういったスキルを得られるとは思ってなかった。これからも色々教えてやるか……

竜馬は店を持ち、人を雇います。ゆくゆくはチェーン店を開きますが、そのためには従魔術師を雇わなきゃいけませんね。


しかし従魔術師を雇う場所はテイマーギルド……マシューの嫌がらせやスパイみたいな奴が送り込まれる気がします。



とりあえず店を持ち、人を雇うという事で主人公の負担を軽減しました。人を雇うのは当たり前の事ですが、主人公にその発想は無かったようですね。


主人公は元々雇われる側の人間として長く生活してましたから、自分で働くのが当たり前というか、考えが凝り固まっていました。


ここでセルジュさん登場。セルジュさんはいい人ですが、ビジネスライクな感じで動きます。

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