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第一章 22話

皆様、前回の後書きの呟きに対して、感想欄の数々の応援ありがとうございます。これからものんびりでも続けていきます。



今日の投稿です。今日も1話のみの投稿ですが、明日は2,3話連続投稿する予定です。


これからもよろしくお願いします。

 翌日


 今日もエリアは昨日の反省を活かして廃坑で訓練をするらしい。


 そう言われた際、俺はラインバッハ様に今日冒険者ギルドに出される廃鉱山の魔物討伐依頼を受けてくれと言われた。エリアは一緒に行けば良いと言ったが、ラインバッハ様と奥様に反対された。


 俺とエリアでは戦闘経験が段違いで、実際の戦闘能力も大きな差がある。魔物討伐という点では非効率的な上、エリアが俺に頼りすぎる可能性があるらしい。


 確かに俺も頼られたら断らないだろうしな……


 という訳でギルドに行くと、ギルドマスターの部屋に呼ばれた。


「来たか、リョウマ」

「ギルドマスターが呼んでると聞いたんで。何かありました?」

「さっき公爵家の執事が来た、そんで依頼出してったから確認だな。お前さん、昨日廃鉱に行ったか?」

「行きました」

「そこで出た魔獣を教えてくれ、前言った大規模な依頼が来たが、出る魔獣の把握をしとかねぇといけねぇのさ。一応執事から聞いたが、情報は多いほど良い。確認出来る事は確認しときたいんでな」


「僕が戦ったのはケイブマンティスとケイブバット、それにスモールマウスです。お嬢様はスライムも倒したみたいです。あと、廃坑内にメタルスライムも居ましたよ」

「了解、これならGランクからでも依頼を受けさせて大丈夫そうだな。しかしメタルスライムも居たのか」


「ええ、その時は別行動だったんですが、プレゼントに捕獲してきてくれまして。テイムしました」

「そういやお前さん、スライムばっかり集めてるんだったな。聞いた話だと1000匹以上だとか聞いたが」

「そうですね、今はスティッキースライム728匹、ポイズンスライム323匹、アシッドスライム211匹、クリーナースライム11匹、スカベンジャースライム3033匹、ヒールスライム2匹、メタルスライム1匹、ただのスライム1匹の計4310匹になります」

「集めすぎだろ」


「スカベンジャースライムがこんな数になったのはこの前の件が原因ですよ。アレのせいで短期間に何度も分裂して、3000匹を超えたんですから。これが他の魔獣だったら餌代に困って必死で働かないといけない所です。その点スライムはほぼ水だけで生きられますから、楽ですよ」

「そうなのか。そうだ、また汲み取り槽の掃除の依頼が出てるんだ。受けてくれ」

「了解です、しかし早いですね。前のあれから数日しか経ってませんけど」


「前回の依頼を受けるまで5ヶ月掃除されなかったんだ、次いつ掃除されるか分かんねぇから、今のうちから依頼出しておこうぜ!って考える連中が大勢出てきたんだ。長期間来なきゃ苦情を死ぬ程出してやるって脅し付きでな。役所の方は結局スラムの連中を説得できなくて、無視を決め込んでて役に立たねぇ」

「なるほど、了解です。今日は何本ですか?」

「30本全部、いけるか?」

「前回のでスライムの処理速度が向上したので、丸1日使えば何とかいけるかと……」

「なら全部頼むわ、街の連中がうるせぇんだ」

「了解です。あ、僕も廃坑の魔物退治の依頼は受けられますか?」

「大丈夫だ。今日依頼から帰った時にでも手続きしとけ、人数制限はねぇからよ」


「分かりました。あと質問なのですが、あの廃鉱に住み着いてる魔獣の死体は売れますか?」

「いや、今の所ある情報では売れるようなのはいねぇな。報酬は純粋な討伐に対してのみだ」

「なら、お金を払えばその死体を買い取れますか?」

「出来ねぇこたぁねぇぞ。元々ゴミになるだけだしな。だが、そんなもん買ってどうする気だ?」


「スライムの餌にするんですよ。食費が殆どかからないとは言え、確保出来るなら出来る時に確保しておきたいんです」

「なるほどな。分かった、倒した魔獣の死体の処分はギルドに任されてる。死体を持って来た奴には追加報酬という形にしよう。


 元々死体をほっとくとそれを漁る魔獣が住み着く可能性があったから死体は集めさせるつもりだったし丁度いい。二束三文でも追加報酬にすればやる気も出るだろう。追加報酬の分はお前さんが払えよ?」

「勿論です。とりあえず小金貨20枚で足りますか?」

「小金貨20も要らねぇよ。10でも余るぜ」

「では小金貨10枚を預けます。もし足りなければ後払いで」

「分かった。しかし大量に集まると思うんだが、持っていけるのか? それに腐るぞ?」


「大丈夫です。空間魔法が使えますから、氷漬けにして保管します。腐ったら腐ったで好き好んで食べるスライムも居ますから無駄にはなりませんよ」

「便利だな、スライム」

「はい、とても便利です」


 そんな話をしてからギルドマスターの部屋をあとにして、受付で例の依頼を受ける。


「今日もあの依頼を受けてくれるの? いつもありがとね。この依頼、本当に受ける人居ないのよ」

「僕は使い勝手の良い魔法と従魔が居るからいいですけど、他にこの仕事をやりたがる人は居ないでしょうね」

「ホントよ。無理して依頼を失敗するくらいなら、雑用依頼を受けてくれた方がよっぽど助かるのに……あ、そうだったわ。リョウマ君、前回の件でFランクへの昇格条件満たしてるから、今日からFランクね」


「そうだったんですか?」

「そうよ、GからFへは依頼内容問わず、依頼を20件成功させる事。君の掃除は汲み取り槽1本につき依頼1回分だから、30本掃除して30回成功させてる事になるわ。それでFランクの条件達成。


 次のEランクになるには依頼を何でもいいから40件こなす事と、何らかの討伐依頼をこなす事。前の30本の内10本分もここに加算されてるから、今日もう一回汲み取り槽の掃除を全部やれば討伐依頼以外の要件は達成できるわね」

「そうですか、ありがとうございます。えーと……」

「そう言えば、私自己紹介してなかったわね。メイリーンよ」

「分かりました。ありがとうございます、メイリーンさん。では、行ってきます」


 俺はギルドを出て今日も汲み取り槽の掃除に勤しんだ。キングスカベンジャースライムの肥大化+暴飲暴食により今日一日で30本全ての掃除が終わった。スキルのレベルが上がってるのもあるけど、処理する量が少なかったのもあるな……


 依頼の報告に行く確認にしばらく時間を取られ、確認が取れたあと依頼達成となった。


「はい、OKよ。またよろしくね。あと、明日からの廃坑の魔物討伐依頼、リョウマ君も受けるのよね?」

「はい、受けさせて頂きます」

「それなら手続きするわね……はいOK。朝の8時までにギルド前に来れば、タダで乗れる乗合馬車が出るからね。それを逃すと自分で馬を借りるか徒歩か、11時までに廃坑前に集合しないと報酬減額だから気をつけてね」

「わかりました。ありがとうございます」



 宿に帰り、明日の用意を整えて寝る。メタルスライム、出るといいなぁ……出たらテイムしよう、絶対に。









 翌日


 打ち合わせなどがあるため先に行く公爵家4人とその護衛の皆さんを見送り、俺はのんびりと乗合馬車に乗るためギルドに向かう。ギルドには大勢の冒険者がつめかけ、乗合馬車が何台も出ていた。


「なかなか多いな」


 ギルドの乗合馬車を見て、時間に余裕もあるし朝の運動がてら無属性魔法の『強化』をかけて走るかどうか考えていたら、遠くから声がかけられた。


「おーい! リョウマ!」

「え? あ、ジェフさん!」


 声をかけてきたのはジェフさんだった。よく見るとその隣にはレイピンさんとシェール君も居た。


「お早うございます、ジェフさん、レイピンさん、シェール君」

「おう、おはようさん」

「おはよう、リョウマ君」

「おはようなのである。リョウマもこの依頼を受けたのであるな」

「はい、皆さんもですか?」


「俺たちゃおっさんからの指名依頼でな。今回の依頼はGランクからでも受けられる依頼で危険は無いだろうが、もし大物の魔獣がいてGランクだけなら大惨事になるから不測の事態に備えて俺達も参加だ。俺とレイピンだけじゃなくてミーヤやアサギも来てるぜ。もう先に行っちまったけどな」

「しかし、今までもこういう大きな依頼はあったけど、今日は特に参加者が多いね……」

「それは仕方がないのである。今回の廃鉱にいる魔獣はGランクでも問題ないとされるものが殆どであり、この領の領主からの依頼で参加するだけでもそれなりの報酬が貰え、なおかつ倒した魔獣の死体を持ち帰れば微々たる額だが追加報酬も出る。


 稼ぎの少ない低ランク冒険者にはこれ以上無い稼ぎ時である。戦えない者でも死体を拾い集めるだけで報酬が出るのであるからな、これで行かぬ者は居ないのである」


「しかし誰なんだろうな? 追加報酬を払うって言う、魔獣を買い取る奴は。確認された魔獣リストを見たが、どれもこれも売り物になる部分なんか取れない雑魚魔獣だぜ?」

「こちらには得しか無いので良いのであるが、確かに気になるのである」

「いや、大した使い道じゃないですよ。従魔の餌にするんです」

「リョウマ君、何か知ってるの?」

「知ってるも何も、魔獣の死体を買い取るの、僕ですから」

「なんと、魔獣を買うのはリョウマだったか。スライムの餌にするのなら納得である。……リョウマの飼うスライムは数が数であるからな……」

「普段はどうしてるんだ? あれの食事」

「凄く食費がかかりそうだけど。従魔って種類によっては凄いお金がかかるらしいし」


「スライムに食費は殆どかかりませんよ。スライムはほとんど水だけで生きられるんです。それと少量の餌ですね。今回のは氷魔法と空間魔法で保存して少しずつ与えます。当分の餌にはなるでしょう。腐り始めたら腐り始めたで一気に処理出来るからこんな事出来るんですがね」

「確かにお前以外には出来ねぇな」

「そういえば、そのスライムは何処であるか?」

「今日はスライムは休みです。昨日も汲み取り槽の掃除でこき使いましたし、今日スライムを使うと周りの人に間違われて殺されそうなので」

「それもそうであるな」


「というか、また汲み取り槽の掃除したの?」

「ギルドマスターからまた依頼が来てるって言われたので。あ、ちなみに今日の討伐依頼でEランクになる条件を満たすそうです」

「早っ! お前登録してから1週間経って無いだろ?」

「この前の3日連続耐久掃除で汲み取り槽30を掃除して、昨日また30掃除しました。あれ1本につき依頼1回分に相当するらしいので、60回依頼達成になったんです」

「なるほどな……」


 そんな雑談をしていると、新しい乗合馬車がやって来た。近くに空いている馬車が来たので、せっかくだから3人と一緒に乗り合い馬車に乗る事にした。







 話をしながらのんびりと廃鉱に向かい、到着したら直ぐに廃鉱山入口前に設営されたギルドの簡易受付に到着した事を申し出るように言われた。言われた通りに申し出てから待たされ、11時になると冒険者全員が集められ、ギルドマスターの作業開始の言葉があった。


「今日の参加人数は264人! 討伐は安全のためそれぞれの6人ずつのパーティー毎にやってくれ! 獲物の取り合いは無しだ! パーティーに所属してない奴はこっちで班を分けておいたから確認して集まってくれ! 最後に……今日から稼げるうちに稼げよ!」


 そんな簡潔な言葉に方々から声が上がり、それぞれ集まって坑道に入っていく。俺も班分けを確認してみると、俺の班のメンバーはジェフさん、ミーヤさん、ウェルアンナさん、ミゼリアさん、シリアさんだった。見事に知り合いのみ、ギルドマスターに気遣われたかな?


 周囲を見渡すとウェルアンナさんを先頭に5人が俺の方に歩いてきていた。


「ウェルアンナさん、今日はよろしくお願いします。他の皆さんも、よろしくお願いします」

「よろしくな、リョウマ」

「よろしく頼むにゃ」

「よろしくお願いしますね」

「先輩冒険者としてしっかり指導してあげるからね」

「ミゼリアにそれは無理だろ。さっきぶりだが、よろしくな」

「ちょ、ジェフ! それは私に失礼じゃない!?」

「お前は腕はあってもそそっかしいからな」

「何よそれ!」


「何やってんだいあんたたち……リョウマ、こいつらはほっとくよ。で、戦力の確認なんだけど、リョウマの武器は?あとここの魔獣、ケイブバットとスモールラットはいいとして、ケイブマンティスとは戦った事あるかい?」

「ケイブマンティスとも戦った事はあります。普段は弓を使ってますけど、短剣と格闘も出来ます。後は魔法で戦います」


「なるほど……オールラウンダーだね。じゃあリョウマは魔法で攻撃を担当してくれ、ウチの班、リョウマ以外攻撃魔法使えないから」

「全く使えにゃい訳じゃにゃいけど獣人は魔力がすくにゃいから、あたし達の魔法はあんまり頼りにはしにゃいで欲しいにゃ」

「私は比較的魔力が多い方ですけど、回復魔法しか使えないので、あしからず」

「俺とミゼリアは魔法全般が苦手だ、無属性の強化と硬化以外は捨てた!」

「あんたと一緒にしないで、私は強化と硬化に特化してるのよ!」

「……言い方が違うだけでどっちも同じにゃ。で、リョウマの属性は何かにゃ?」

「全属性ですが、主に土を使います」

「全属性とはまた珍しいにゃ」

「戦い方のバリエーションが増えるね。土って事は攻撃魔法はアースニードルだっけ?」

「アースニードルとロックバレット。他の属性の魔法で、洞窟内で使えそうなのは氷属性のアイスアローと雷属性のスタンアローあたりでしょう」

「それだけ使えりゃ十分だね。よっしゃ、行くよ!」


 こうして討伐は始まったが、出てくる魔物が弱いためサクサク進んでいく。


「手応えねぇな」

「スモールラットやスライムに手応えを求めてどうすんのさ」

「ジェフが手応えを感じるような敵が出てきても困るにゃ。アタシ達はいいけど他のGランクやFランクの所に出たら危にゃすぎるにゃ」

「私たちの一番の仕事は、万が一の場合に備えて廃鉱にいる事ですから」

「ただここに居るだけだと、下のランクの奴に示しがつかないからね。アタイらを見た奴らが、サボってても金が入るなんて思うようになっても困るからこうやって討伐してるだけさ」


 凄いなこの人達、全員かなり高ランクじゃないのか? というか、なんで俺はこんな高ランクの集団に混ざってるんだ?


「ん? どうかしたのかい? リョウマ」

「いえ、皆さんは全員高ランクの冒険者みたいですし、なんでFランクの僕がここに組み込まれたのかと思って。ギルドマスターの気遣いでしょうか。知り合いがいた方が楽ですし」

「それは無いぜ。おっさんは確かにおせっかいだが、依頼に関しちゃ誰よりも厳しい。実力を最優先すっからな」

「多分、私達5人だけだと魔法でしか倒せない魔物が出たとき対処が困難になりますし、リョウマ君の私達に付いてこれる体力と実力を評価されたんだと思いますよ」

「リョウマ君、私達、かなりのハイペースで進んでるのよ? 普通のFランクの冒険者なら、付いてくる事で精一杯じゃないかな?」

「最初はリョウマが疲れ始めたらペースを落とそうと思ってたんだけどね。平然と付いてくるもんだからそのまんまのペースでやって来たんだ」


 そうだったのか? 全然気付かなかったけど。


「リョウマ、あんた実力的にはFなんかじゃないだろ。絶対」

「今まで倒した魔獣で一番大物は何だ?」

「一番の大物となると魔獣ではないですけど、ガナの森に生息するブラックベアーですね」


 それを聞いた5人がやっぱりという顔になる。


「リョウマ君、ブラックベアーは普通Fランクが倒せる獣じゃにゃい。安全に狩るにゃらDランクがパーティーで挑んで狩る獣だにゃ。ソロならCランクはにゃいと無理だにゃ」

「そうだったんですか?」

「そうなんです。ブラックベアーをソロで狩れるなら、リョウマ君はCランク相当の実力を持ってると思います。その実力をギルドマスターに見せた事があるんじゃないですか?」


 そういえば、あるな。


「登録の時に、実力試験の試験官がギルドマスターでした」

「それだな」

「間違いないね。アンタその時から目を付けられてたんだろ」

「だからこの班に配属されたんだね。納得納得」

「実力はあるんだから、ランクの差なんて気にすんなや。お前なら時間さえあれば俺たちと同じランクには来れるだろ」

「そう言えば皆さんのランクは? 聞いてませんでしたね」

「そう言えば言ってなかった気もするにゃ」

「私達は全員Bランクだよ」

「やっと1流の冒険者って名乗れるランクだな」

「ちにゃみにこの前一緒に仕事をしたシェールがDランク、ゴードンがBランク。そしてアサギとレイピンがAランクだにゃ」


 そんな話をしながら歩いていると、ウェルアンナさんが前方に意識を集中した。嗅覚で前方を探っているようだ。


「どうした?」

「匂いからして、この先にケイブバットの群れだよ、多過ぎる。危険はないけど、倒しきれないだろうね。逃げられちまうよ」

「面倒くさいにゃ……」

「そっちに人は誰もいませんか?」

「人の匂いはしないね。何か策があるかい?」

「はい、丁度いい魔法があるんですよ」


 俺は昨日効果を実証したサウンドボムを説明する。


「へぇ、そんな事が出来るのかい」

「聞いた事のない魔法ですね」


 そりゃそうだ、地球の知識を参考にして俺が作ったんだから


「その魔法は気絶か動けなくするだけなんだろ? ケイブバットが回復する前に仕留められるか?」

「ちょっと向こうの数が多過ぎるね。気絶させられれば随分楽になるけど、間に合うかはどうかね?」

「それなら後ろにいる人たちにも手伝って貰いませんか」


 俺がそう言うと5人も納得した。


「ってか、お前も気づいてたのか」

「森に3年住んでましたから。気配には敏感になったんですよ」

「そうかい、じゃあちょっとここで待ってようかね」


 実は後ろからずっと距離を置いて付いてくる6人の集団が居たのだ。特に襲ってくる訳でも無いので今までは放っておいた。5人に話を聞くと、おそらく稼ぎの少ないG~Eランクの冒険者が俺たちが仕留めて放っておいた魔物を拾い集めて金にしようとしているのだろうと言っていた。


 こういった行為は禁止はされていないまでも、褒められた事ではない。所謂グレーゾーンの行為である。仕留めた魔物は仕留めた者に所有権があるが、持ちきれない物や価値のない物は捨てられる。それを拾い集める事は問題ない。が、後々問題が起こる原因にもなるので、無断でやる者はあまりいないのだそうだ。


 しばらくその場で休憩を入れているとついてきていた集団が近づいてきて、俺達が休憩している事に気付き、慌てて足を止めた。そこにウェルアンナさんが大声で呼びかけた。


「後ろからずっと付いて来てた奴ら! アンタらが付いて来てるのはとっくにお見通しだよ! 出てきな!」


 6人は慌てるが、やがてゆっくりと姿を現した。出てきたのは人間4人と獣人2人の男女だった。


「アンタ達、なんでアタイらをつけ回してたんだい?」

「捨てられてた、魔物を、拾ってました……」

「アタイらが仕留めた獲物を勝手に拾ってたのか。別にアタイらはそれをどうこう言うつもりはないよ」


 その言葉に安心したのか、6人の表情が少し明るくなる。


「ただ、なんでこんな事したのかは聞かせて貰いたいね」

「は、はい! 実は、俺たちまだGとFランクで……金に、困ってて……」

「初めは余裕あったんですけど、武器と防具を揃えたらお金がなくなってしまって……」

「俺は討伐依頼でヘマやっちまって、違約金の支払いで金が無くなったんです……」

「俺たち宿代もギリギリで、何とか切り詰めてやりくりして来たんです。そこでこの依頼が出た時、すぐに飛びつきました。この依頼ならしばらくの生活費が稼げると思ったんです。魔物は弱いから安全だし、参加すれば金が貰えて、魔物の死体を持っていけば金になる。もうここで稼げるだけ稼ぐしか無い! って思いました」

「それで今回参加したら、ここに入っていくあなた方を見かけたんです。それで……」


 人間の女の子が言いよどんだのを見咎めたジェフさんが追求する。


「それで何だ?」

「それで……」

「俺ら、アンタ達についていくそのガキを見たんだ。そんなガキ連れて坑道に入っていく人達なら、捨てられてる魔物の死体を持って行っても良いんじゃねぇかって。足手纏いにしかならないようなガキを連れて行ってくれる人達なら、大目に見てくれるんじゃないかと思ったんだ」


 その男子の言葉にほかの5人が気まずそうな顔をする。そりゃそうだ、仮にも俺はこの班のメンバー、それを役立たずとは普通言えない。しかし他の5人もそう思っているのか、それとも結局はそれに賛同したから行為を働いていたのを反省しているのかはわからないが、誰ひとりとして彼の言葉に反論も止めようともしない。


 そこの男子、偉そうに言ってるけど、お前らの拾ってた魔物の死体、俺が魔法で仕留めた魔物も入ってるからな?


 多少ムカつくが、気にしていても仕方ない。


「アンタら、自分の立場が……」


 俺を見下した発言を咎めようとしたウェルアンナさんを俺は止める。


「いいですよ、ウェルアンナさん」

「リョウマ、こういうのはガツンと言っておいたほうがいいんだよ」

「話した所でこういう考え方は変わる物ではないですよ。外見が弱そうに見えるのは仕方ないですしね」


 力ずくで分からせる事も出来るが、俺は手加減が得意じゃないからな……多分こいつらだと大怪我かな……


「……わかったよ。だがアンタら! そういう事をするのなら、相手に一言断るのが筋ってモンじゃないかい? 勝手に持っていくなんて盗人みたいな事するんじゃないよ!」

「「「「「「すみませんでした!!」」」」」」


 大声で謝る6人。俺以外に、謝る6人。やっぱりほか5人も反省してた訳じゃ無いな。


 6人は謝ったあと、自分たちが持っている魔物の死体を俺たちに差し出して帰ろうとしていたが、それをシリアさんとミゼリアさんが止める。


「待って! 私達はあなた達が無断で死体を拾い集めた事は咎めましたけど、死体を集めてた事自体は気にしてないですよ」

「お金に困っているのなら、持っていくと良いよ」


 その言葉を聞いて、パッと表情を明るくさせる6人。彼らは俺以外の5人に感謝し、礼を言っていた。それにウェルアンナさんは不機嫌そうだったが、ミーヤさんが予定通り6人に手伝いをすることを勧め始めた。


「実は君達に声をかけたのはもう一つ理由があるのにゃ。この先にケイブバットの群れが居るけど数が多くて仕留めるのに時間がかかるにゃ。だから君たちも手伝ってくれないかにゃ? 死体は全部君たちが持っていくといいにゃ」


 6人は当然の如くその誘いに乗った。俺が探査の魔法で人が居ない事を確認している間にミーヤさんから簡単な説明がされる。


「まずリョウマが奥に魔法を叩き込むから、その後突入だにゃ」

「あのガキがですか?」

「あの子の魔法じゃただ敵を警戒させるだけでは?」


 うん、やっぱり反省なんかしてないわ、あいつら。ウェルアンナさんが文句があるなら帰んな!と一喝したら引き下がったが、少し離れたところで小声で『ガキのお守りか…』とか『気に入らない』とか『お金のためだから仕方ないよ』とか言ってる。バッチリ聞こえてるからな。


 それでも俺は気にせず準備に入る。人がいないのを確認した後遮音結界を張り、準備が整った。


「準備が出来ました」

「よし、やってくれリョウマ。あんたらも行くよ!」

「行きます!『サウンドボム』!」


 俺は魔法を発動し、坑道内に音の爆発が起こった。しかし遮音結界のせいでその音は俺たちには聞こえない。それを失敗と思ったのが6人だ。


「何も起こらないぞ?」

「失敗でしょ」

「これだからガキは役に立たねぇんだ」


 と口々に言い始めた。こいつら本当に図々しいな。さっきまでの事をもう忘れたんじゃなかろうか?


「成功ですよ、風属性の魔法ですから目には見えません」


 そう言って俺とウェルアンナさん達が奥に入っていく。そこに6人も負け惜しみ? 等と言いながらついてくる。


 しかし彼らは奥に入るとすぐ呆然と床を見る。そこには夥しい数のケイブバットが転がっていたからだ。


「これ全部気絶してるだけですから、手分けして手早く止めを刺して行って下さい」


 そう言って俺はさっさと作業に入る。その後全部のケイブバットに止めを刺し終わったら、そこが坑道の最奥部だったので俺達は6人を置いて洞窟から出た。するとウェルアンナさんが聞いてきた。


「リョウマ、何も言わなくて本当に良かったのかい?」

「ええ、魔法1発である程度の実力は見せたと思いますし、それで理解できなければ彼らはその程度です」

「そりゃそうかもしれないけどさ……」

「ああいう言いがかりを付けられたら、多少殴り合ってでも実力を示さないと舐められるぜ?」

「殴り合いも少しは考えましたが……僕、手加減苦手なんですよ。身を守るだけで逃げるか、殺すかしかした事無いんです。あの6人相手だと、手加減してもやりすぎると思ったんですよ」


 前世じゃ一般人との喧嘩はろくにした事ないからな……こっちに来てから対人戦闘は盗賊相手だけだったし。


 小中高、いじめは中途半端な抵抗じゃただ余計に酷くなるだけだったよなぁ……本気でやれば容易く殴り倒す位は出来たが、手加減がなぁ……流石に命の危険がある場合は抗ったが、あの後は皆化物を見るような目で俺を見るようになった。かなり手加減はしたんだけどな……


「そんな事気にしなくて良いと思うぜ?」

「彼ら、お金無いらしいですし。今殴り合って、一時的にでも働けなくなるような怪我をさせたら気分的にね……今回の彼らは生活するために必死な生意気盛りの少年少女だったという事で済ませましょう」

「生意気盛り……それを彼らより年下のリョウマ君が言いますか? 彼ら、15歳くらいだと思いますよ?」

「リョウマ君、本当に11歳?」

「まぁリョウマ君がそう決めたのならいいにゃ。早めにランクを上げれば良いだけだからにゃ」


 手加減が苦手なのもあるが、体は子供だが心は42のおっさんだからな……子供のする事にあまり目くじらを立てる気もしないし。ましてや殴り合いなんて大人気無い事は出来んよ。


 悪い事を叱るのは皆さんが既にやったし。魔法で実力は見せたつもりだ。これ以上は彼ら自身の反省に任せるしか無いな。


 そんな話をしつつ、俺達はそろそろ昼食が用意される時間らしいので、鉱山入口に戻った。




今回は竜馬がこの世界に来て、2度目の暖かくない連中が出てきましたね。


愛の女神ルルティアの加護で対人運がかなり良くなっている竜馬ですが、出会う人が良い人しか居なくなる訳ではありません。良い人の割合が高くなるだけです。


たまにはこう言う連中も出てきます。

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