第一章 14話
日間ランキング1位にして頂きました!
…まさかこの小説がランキングに入るなんて…しかも1位になるなんて思ってませんでした。
かなり戸惑っていますが、これからも頑張りたいと思います。
この小説を読んでいただいている皆さん、本当にありがとうございます
~Side 竜馬~
俺は街で買った物をアイテムボックスにつっこみ、宿に戻って作業を開始した。
まずは買ってきた布の表面にスティッキースライムの粘着液を塗りつけ、風を吹かせる風魔法の基本『ブリーズ』と火を出す火魔法の基本『ファイア』を組み合わせた魔法『ドライヤー』で乾かして防水布を大量につくる。
これだけで昼過ぎまでかかった。同じ属性なら楽だけど、違う属性の魔法を組み合わせるのって制御が難しいんだよ……
昔、『ドライヤー』のコントロールミスった時はファイアにブリーズの風が送り込まれて、凄い勢いの炎が生まれた。それはそれで『フレイムスロウワー』って火炎放射を行う攻撃魔法として使えるようにしたが、ここでやったらシャレにならない。それに気をつけてたら時間がかかった。
次にスティッキースライムに糸を吐いて貰い、糸巻きに巻き取っていく。スティッキースライムの糸は粘着液と硬化液の割合で強度が変わるので目的に合わせて割合を変えてもらうと使いやすい。
粘着液と硬化液の割合が7:3なら柔らかく綺麗な裁縫に使える糸になる。6:4なら丈夫な糸ができる。5:5なら罠に使える柔軟性と人や獣が引っかかれば糸が切れる程度の強度を持ち、4:6だと人や動物を絞め殺せる高い強度を持つ糸が出来る。
昔、森で糸の強度を調べた時4:6の糸を木の間に複数張って、そこにブラックベアーをおびき寄せたら糸はブラックベアーの衝突に1度だけ耐え、ぶつかったブラックベアーの体には糸で小さな切り傷がついていた。
その時はこれ使い方によってはかなり危険な罠になったんじゃないか? と思って慌てて封印した。以来、ゴブリン等の大量発生する魔物が出た場合以外はぼぼ使っていない。
例外として、森の木でなんとなく前世を思い出して作ってみたギターの弦として太さを調節して使っている。強度はあるが触れただけで指が切れるような鋭い糸ではなかったので、今後も探していけばまだ安全な使い道もあるだろう。
閑話休題
吐いて貰った6:4の丈夫な糸を巻き取り終わると、次は防水布の裁断だ。複数の部位の形を作る布に分けて切り出す。
俺が作りたいのは前世のツナギのような作業着と胴付長靴もどきだ。明日からは汲み取り式の便所掃除、殆どスカベンジャースライムに任せるとしても、クリーナースライムで体を清潔にできるとしても、そこに普段着で行きたくはない。事前に準備ができるなら、しておくべきだ。
そうして胴付長靴もどきを作り終えた所で部屋がノックされた。
「リョウマ様、お帰りになっていると聞きましたが、いらっしゃいますか?」
セバスさんだったので急いで開けた。
「居ますよ」
「問題などはございませんでしたか?」
「はい、特には」
「そうですか。宿の従業員に聞いた所、リョウマ様が朝出て行って昼前に戻ってきて、昼食も食べに来ず部屋に篭っていると聞きまして……」
ああ……そう言えば昼食べてなかった
「すみません、ちょっと作業に熱中していた物で……心配させましたか?」
「よろしければ、皆様にお顔をお見せください。特にお嬢様と奥様に。作業というのがそちらの裁縫でしたら奥様達の部屋でもできますし、メイド2人にも手伝わせましょう」
どのみち話をしに行こうとは思っていたのでちょうどいい。俺は道具と布をアイテムボックスに放り込み、スライムを連れて公爵家の部屋に行く。
部屋に到着するとすぐに奥様とエリアが飛びついてきた。
「ご無事ですか!? 何かありましたの!?」
「リョウマ君! 大丈夫? 怪我はない?」
「これこれ、2人とも落ち着かぬか」
「そんなに詰め寄ってはリョウマ君が喋れないよ」
ラインハルトさんとラインバッハ様が2人を止めてくれ、2人は離れてくれた。
「ええと……ご心配をおかけしました。特に問題があった訳ではありません。少々作業に熱が入って、食事を忘れただけですので」
「そう、よかったわ~」
「もう、何かあったかと思いましたよ」
「ほっほっほ、何もないならいいんじゃ」
「作業とは何を?」
「裁縫です。清掃作業用の服を作っていました」
俺はそう言ってアイテムボックスから道具を取り出して見せた。
「ふむ……どうやらこれも全部あの防水布の加工がしてあるようだね?」
「はい、その作業に帰って来てから昼過ぎまでかかりました。その後から今までは服の仕立てをしていて」
「何故突然そんな服を作り始めたんじゃ?」
そう聞かれたので俺は今日あったことを説明した。作業しながらでも良いと言われたので作業をしながら話した。
「……という訳で、清掃作業の依頼を請ける事になりました。疫病が流行っても困りますので、なるべく早くに作業に入りたいと思って急いでいました」
「むぅ……」
「理由は分かった。こちらとしてもありがたいよ。しかし、この街の役所がそんな事をね……危うく騙される所だったかもしれない。セバス」
「はい」
「街に出て情報を集めてくれ、本当に今の話のような事を役所がやっていたのかどうか。もし本当にやっていたのなら、街の管理費は例年より減るはずだ。しかし、今日報告された内容では変わりない。ここ数年鉱山の採掘量が落ち、街の収入が減った事をいい事に金を横領している者が居る可能性が出てきたからな」
「かしこまりました」
そう言ってセバスさんが部屋を出ていった。
「リョウマ君、ありがとう。おかげで隠されていた犯罪を見つけられるかもしれない」
「うむ。ただの横領も許せんが、街と町民のために使うべき金を横領し、町民の生活を害しているなど許しがたい。そもそもスラムの住人に支払う金は何十年も前から決めておる。それを値切るなど許さん! 儂の苦労を無駄にしおって……」
「ラインバッハ様の苦労?」
「ジャミール領の公共事業とスラム街の住民の救済策として、お義父様が昔苦労して定めたのが共同トイレの設営とスラムの住民の清掃作業員としての雇用なのよ」
「儂は昔、各町の代官に通達して施設の設営に当たらせた。そしてスラムの者が雇うという言葉が信じられない場合はスラム街の元締めの所まで何度も足を運んで交渉した。そして全ての街の工事と雇用をさせるのに30年かかった。その苦労を無駄にされていると思うと、悔しくてしょうがないわぃ……」
「父はかつて良い領主として名を馳せていたんだ。多くの貴族が領地経営を学びに来たりもしたね。だから、これが本当なら絶対に許せない事なんだよ。ほかの誰が許しても、ジャミール家は許さないよ」
「リョウマ君には本当に感謝する、儂らがこの街にいるうちに情報を掴めて良かった。少なくとも何かがおかしいのは確実じゃ。儂の推し進めた事業がその通りに進んでいるのなら、その依頼が出ている訳が無いからのぅ」
「どういたしまして」
「うむ、その服の制作はメイドにも手伝わせよう。アローネ、リリアン、手伝ってあげなさい」
「「かしこまりました」」
メイドさん2人がサポートに入ってくれることになったので、作業内容を分けた。リリアンさんに手袋、アローネさんにツナギ、俺が色々と使う事になる紐を編むことになったのだが……
「リョウマ様、この糸は何の糸でしょう? これほど丈夫な糸でここまで細く滑らかで綺麗な糸は見たことがありません」
「ああ、それ、スティッキースライムの糸です」
「スライムは糸を吐くのですか!?」
「スティッキースライムだけですよ、それもおそらく僕のスティッキースライムだけです。何かに使えないかとスライムの粘着液と硬化液を混ぜてみたら糸状に加工出来たので、スライムにも出来るかと試させたら出来るようになりました。森で服を作るときは重宝しましたよ」
俺はビッグスティッキースライムを呼び、糸を吐かせる。
「ほらこのように糸を吐きます。さらに体内で混ぜ合わせる2種の液の割合で糸の強度が変わりますね」
そして色々な太さの糸を吐かせて見せたら、アローネさんとリリアンさんが糸を売ってくれと言い出した。
「そんな、お世話になってますし、こんなもので宜しければいくらでも差し上げますよ」
俺がそう言うと2人は大喜びしていた。なんでもこの糸、今まで長年公爵家に仕え続け、服の仕立てを何度も行ってきたアローネさんが見た事が無いほど上質らしい。俺、地球じゃ化学繊維で出来た製品とか普通に見ていたから全く気付かなかったわ。
その後、ラインハルトさんと今後販売する雨具とともに糸も商品化する事に決まった。その時話の流れで聞いた話だと、先代の領主であるラインバッハ様が領地の町や村の大規模な環境整備を行ったため、ジャミール領の町や村はこの国では1番清潔で良い環境の街なのが自慢で、近隣国でも有名らしい
そしてラインハルトさんは父親が整備したこの領地を更に良い場所にするために、商業を発展させて領地を栄えさせたいと思っていたらしい。
俺が何気なく開発していたスライム製品は、彼にとってとても魅力的に見えるそうだ。これからも末永くよろしく頼むと頭を下げられたので、こちらも頭を下げてお願いしておいた。
ジャミール家の人は皆良い人だし、協力はしたいからな。
そんな話をしつつも作業を続けた結果、俺の作業服は完成した。試し着てみた所サイズには問題なかったが…………
手袋をしてその端を袖の中に入れ、つなぎの袖口に取り付けられた紐で手首をほどよく縛り汚れが中に入るのを防ぐ。全身防水布製の上下ひと繋ぎの服に、更に靴が一体化した胴まであるズボンを着て、紐で固定している俺を見て皆さんから奇妙だとの意見が出た。
しかし作業着としての有用性は高いと評され、本決まりではないがこれも商品の1つとして考えたいとラインハルトさんに言われた。
翌日
昨日作った作業服セットを持ち、スライムを連れて行く準備を整えて出かける事を皆さんに告げた。
「では、行ってきます」
「よろしく頼むぞ」
「行ってらっしゃいませ、リョウマさん」
「頑張ってね」
「こっちはこっちで色々やっておくからね」
皆さんに見送られ、俺はギルドに向かう。
「おはようございます」
「あら、昨日の子じゃない。確かリョウマ君だっけ? 来てくれたのね」
「はい、依頼を受けたいのですが……」
「うん、聞いてるわ。ありがとね、あの仕事受けてくれて。本っ当に困ってたのよ」
「では、手続きお願いします」
「はいは~い…………これでOK。この依頼書を持って、西地区の方から回ってね。あとこれが汲み取り槽の入口の鍵よ、なくさないようにね」
「了解です。それでは失礼します」
「いってらっしゃい」
ギルドから出てギムルの街最西端の共同トイレの汲み取り槽の入口に到着した。ツナギと胴付長靴もどきを着用し、中に入ろうと入口を開けて速攻閉めた。理由は分かるだろう……5ヶ月も放置された汲み取り槽は、凄まじい臭いを発していた。
俺は鼻にきた刺激で涙が出てきた。しかしスカベンジャーは平気そうなので先に中に入らせて、分離して処理しろと指示を出した。
しばらくしてクリーナースライムに頼み、口元を覆っていた手ぬぐいに消臭液を染み込ませて貰い臭いに対処した。
更に目にもきたのでクリーナースライムに頭の上に乗ってもらい、ゴーグルのように目を覆ってもらった。クリーナースライムは体の透明度が高いので問題なく前が見える。クリーナースライム様々だ。
完全装備で中に入ると階段があり、それを降りると広い地下道があった。そこにある中央の道を挟んだ両脇にはたっぷりと積み重なった汚物があり。それにスカベンジャースライムが群がり一生懸命に処理していた。俺はその後ろから天井や壁に付着した汚物を『ミストウォッシュ』で洗い落とし、付着した水をオリジナル雷魔法の『レンジ』で加熱して消毒する。
あまりに汚かったので少しでも綺麗になれば……と思ってやったのだが、成功した。『鑑定』で調べてみると、
不潔な天井
汚物が所々についた天井。
から
石造りの天井
ギムルの街、共同トイレの汲み取り槽の天井。清掃と加熱により消毒され、清潔。
得られた情報は不潔な天井から石造りの天井に変わっていた。その後詳細な情報を調べてみると加熱消毒が有効だったらしい。……しかし、いつも思うがこの情報ってどこから出てるんだろう?まぁ、間違った情報は出た事がないのでいいんだが……こういう時は重宝するし。
結局1本の汲み取り槽の掃除を終えるのに5時間程の時間がかかった、が、さらにその後3時間使った。
昨日今日でスカベンジャースライムが大量のゴミを食べた事で養分を得て、分裂を始める用意が整ったからだ。従魔契約の効果でそれが分かる俺は汲み取り槽が他の人目につかない事をこれ幸いにとスライムを分裂させていった。なにせ今日と同じ汲み取り槽があと29あるからだ。
その結果スカベンジャースライムは総勢1464匹になった。分裂前が730だったから1度に2回も分裂した個体が4匹いるな。
なおこの分裂後、スライムのスキルを見て俺は冷や汗をかいた。
こちらが元のスキルだ
スキル 病気耐性Lv5 毒耐性Lv5 悪食Lv5 清潔化Lv6 消臭Lv6 消臭液Lv4 悪臭放出Lv4 養分還元Lv3 ジャンプLv2 消化Lv6 吸収Lv3 分裂Lv6
そしてこっちが今のスキル
スキル 病気耐性Lv7 毒耐性Lv6 悪食Lv6 清潔化Lv7 消臭Lv7 消臭液Lv5 悪臭放出Lv6 養分還元Lv5 ジャンプLv3 消化Lv7 吸収Lv3 分裂Lv6
スキルのレベルが軒並み上がっている。しかも要注意なのは病気耐性だ、一気にレベルが2上がってる。
他はいいよ、問題ないから。でもよ……病気耐性が上がるって、病気になれる要素が必要なんだってよ? つまりさ………………病気の温床じゃねーかここ!!!
いや、分かってるよ? ここは言いにくいけど汚い物がたまる場所だから病気の温床にはなるさ。でもさ……この前奥様にスカベンジャーのスキルについて聞いたら、病気耐性レベル5ってかなり重病になる悪質な病気(当然命の危険があるレベル)にもかからないレベルだって言ってたんだよ。
そこから更にレベルが2上がるって、完全に疫病レベルの病原菌居たよ! ここ!
マジやばかったここ……ってか他もか!? ヤバイ、ヤバイヤバイこの事早く知らせないと……いやその前に自分達の殺菌洗浄だ! 俺が迂闊に出て病原菌を撒き散らしたりしたらシャレにならん!
そう思った俺は急いで入口前に戻り、スライム達の体調を従魔術と鑑定で確認する…………OK病気にはなってないようだ。
外に出て、スライムが入っている籠、スライム達、俺の全身の清潔化をクリーナースライムにさせる。その後スカベンジャーとクリーナースライムに俺が歩いた入口周辺を徹底的に清潔化させ、無属性魔法『鑑定』で全ての持ち物とスライム達を鑑定し、得た情報に“汚れた”や“汚い”“病原菌”等の言葉が入っていないのを確認する。幸い全て“清潔な”だった、クリーナースライムとスカベンジャースライムの清潔化は有効らしい。入口に鍵をかけ、念のため結界魔法で塞いでギルドに急ぐ
ギルドまでの道のりでは人目を集めた。急いでいて着替えてなかったからな……だがそんなことを言ってる場合じゃない。できるだけ早くギルドマスターや公爵家の皆さんに報告をしなければ。
そんな事を考えながら走り、ギルドに近くなった所で気がつく。このままギルド内の受付などで疫病の話をすれば良くて悪い噂、下手したら大騒ぎになるかもしれない。少し落ち着いてただの仕事帰りの少年冒険者を装うか……
そう考えて俺はギルドの少し前から歩き、息を落ち着かせてからギルドの中に入った。
妙な格好でギルドに入ってきた俺に周りの視線が集まる。中には指を指して笑っている奴も居た。しかし俺はそれを気にせず受付カウンターに向かう。気にしている余裕はない、焦りを表に出さないだけで精一杯だ。
「すみません」
「あらリョウマ君……なぁに? その変な格好は」
「清掃作業用の作業着です! どうです? 格好良くはないけれど、動きやすくて汚れを気にする必要がなく、泥の中でも沼の中でも汚れにくいですよ?」
「確かにそうねぇ……」
周りの数人も確かに、と頷いている者や興味を持った者がいたようだ。
「所で、今日の仕事が終わった後、ギルドマスターに今日の報告をしたいのですが、今大丈夫ですか」
「え? ギルドマスターに?」
「ギルドマスターに聞いて頂けますか? ……話したい事があるんです」
「そう? う~ん……じゃあ聞いてみるけど、来客中だから待ってもらうかもよ?」
「わかりました、お願いします」
そう言って受付嬢さんが奥に入っていく。しばらくすると受付嬢さんが戻ってきてこう言った。
「リョウマ君、OKだって。来て」
どうやら直ぐに会えるようだ、運がいい。しかしギルドマスター室に着く前に受付嬢さんから注意があった。
「今、ギルドマスターの部屋に凄く偉い人達が来てるから、失礼のないようにね? リョウマ君の喋り方なら特に問題は無いと思うけど、一応、ね?」
「ありがとうございます、気をつけます」
そしてギルドマスター室に着き、受付嬢さんが扉をノックして声をかける。
「失礼します、リョウマ君を連れて来ました」
「入れ」
ギルドマスターの声に従い、入室する。するとそこにはギルドマスターとジャミール公爵家の4人とセバスさんと2人のメイドさんが居た。
「リョウマ君、お疲れ様~」
「皆さん……なぜここに?」
「リョウマ君から昨日聞いた話をギルドマスターからも聞いていたのさ」
「なるほど……」
予想外だったが、これは好都合だ!
「で? どうしたんだ?」
「内密に聞いて頂きたい話があります」
「何かあったのか? それになんだその服。お前さんは昨日の籠といい、初めて会ってから3日でだんだん服装が奇抜になっていくな?」
「これは清掃作業用に作った作業着です。機能性を追求したものですので、多少の不格好さは見逃して下さい……。今日、僕は街の共同トイレの汲み取り槽の清掃作業をしてきました」
「ああ、昨日話したから知ってるぜ? それがどうした?」
「僕の清掃方法は水魔法と従魔であるスカベンジャースライムを使う方法です。スカベンジャースライムは動物の糞や腐った肉などの汚物を好んで食べる性質があるスライムで、清潔化というスキルを持っています。これにより汚物を処理できます」
「初めて聞くスライムだな……まぁそういう方法で掃除したってのは分かった」
「ここからが本題です。汚物は当然不潔な物で、病気の温床になります。それを食べるスカベンジャースライムは病気耐性のスキルを持ちます。そして、先日まで僕のスカベンジャースライムの病気耐性レベルは5でしたが……今日仕事を終えて確認すると、病気耐性のレベルが7にまで上がっていました」
「何だと!?」
「それは本当か!?」
「本当です。あの汲み取り槽の中には病気耐性レベルを5から7にまで上げられる疫病が発生していたと思われます。幸いそれに気づきましたので、スカベンジャースライムと同じ清潔化のスキルを持つクリーナースライムというスライムに全身と持ち物の汚れを食べさせ、無属性魔法の『鑑定』で清潔である事を確認してからここに来ました。
同じく汲み取り槽の入口周辺もスライムによる清潔化の後『鑑定』で確認。疫病対策はして来ました。掃除は終わりましたが、今日清掃した汲み取り槽の入口は念のため鍵を閉めた上から結界魔法をかけて封鎖してきました」
「そうか、よくやった。しかし、あの中に疫病が蔓延しているとなると……」
「ギルドマスター。幸い僕のスライムによる清掃で疫病には対処が可能なようです。ですから今後もこの仕事を続けますが、完全に清掃が終わるまで僕以外の汲み取り槽への立ち入りを禁止、万が一にも誰も立ち入らないように見張り等をお願い出来ませんか?」
「それは当然しよう。だがお前さん、疫病が発生していると知ってなお、掃除を続ける気か?」
「作業をするのはリョウマ君じゃなくてスライム達だけでも良いんじゃない? リョウマ君はスライムをある程度遠距離でも指示を出せるわよね?」
「疫病の処理なんて危険ですわ!」
「役所が責任をもって人員の手配をするから……」
皆さんが何とか俺を止めようとするが、そうはいかん。俺には出来る事があるからな。知ってしまった以上、人任せで何もしないのは心苦しいんだ。
「残念ながら、スライムだけでは完全に綺麗には出来ないのです。汚物が溜まっており、壁や天井に付着した汚物を水魔法で落とさなければスライムには食べられないのです。一度完全に処理しなければ、再び蔓延します。
心配してくれるのはありがたいです。でも、やらせて下さい。無闇に大勢の人員を投入すれば、感染者が出る確率を上げ、疫病が外に漏れやすくなります。
その点僕ならばスライムと僕1人で処理が可能です。それに僕なら大丈夫です……確かに誰がやってもいい、でも、おそらく僕がやるのが一番安全で早いです」
俺はそう言って説得を試み、ステータスボードを取り出して5つのスキルを開示する。
病気耐性Lv7
睡眠耐性Lv7
生命強化Lv3
超回復力Lv3
耐久力強化Lv6
それを見た皆さん、特にギルドマスターが驚く。
「なっ……!?」
「病気耐性レベル7、これなら僕が疫病にかかる危険性もほかの人より確実に少ないでしょう。
更にたとえ疫病に罹ったとしても、生命強化レベル3、超回復力レベル3のおかげで、普通の人よりは死ににくく、回復しやすい。耐久力強化も助けになります。睡眠耐性Lv7があれば2,3日寝なくとも何ともありません。
その分作業も早く進みます。僕以上に病気耐性レベルが高い方も、疫病にかかっても回復の可能性が高い方も、そうそういないと思いますが、どうでしょうか?」
俺はチートだからな、ここで使わないで何時チートを使う?
俺の言葉に部屋中の人が黙り込む。どうやら反論はできないようだ。しかし理屈ではなく気持ち的に認められないらしく、全員が苦虫を噛み潰したような顔をしている。
しばらく沈黙が流れたが、ラインバッハ様が口を開いた。
「確かに…………君以上の適任者は居らんじゃろう。君に危険を押し付ける事になってしまうが、よろしく頼む」
ラインバッハ様は座っていた椅子から立ち上がり、深々と俺に頭を下げた。
「勿論です」
「リョウマ、見張りの人選は任せとけ。口が固い病気耐性スキル持ちに声をかけておく。やるなら騒ぎにならんように秘密裏にやるぞ」
「はい。幸い、共同トイレの施設がしっかりしていたおかげで今まで住民への感染はなかったようです。事前に気付けてよかったですよ」
「だな。疫病が蔓延してからじゃ目も当てられん」
「ええ。スカベンジャースライムと同じくずっと汲み取り槽の中にいたクリーナースライムの病気耐性レベルが上がっていなかった事を考えると、あの汲み取り槽に蔓延していた疫病は空気感染型ではありません。汚物の処理ができれば、安全かと思われます」
「その空気感染ってのはなんだい?」
空気感染って言葉がないのか? もしかしたら疫病に関する知識も地球より遅れてるのか?
「疫病は大勢の人に広がるでしょう? その広がる事を感染と言います。そしてその方法は疫病にかかった人から他の人を伝って、または水や食べ物に毒のように付着し溶け込んだ疫病によって広まる物など様々ですが、その中で疫病の毒が空気中に漂い人が吸い込むことで広まる事が空気感染です。この場合非常に疫病が広まりやすく、対処が困難です。
しかし今回、大量の汚物の処理に当たらせていなかったクリーナースライムの病気耐性レベルは上がりませんでした。ですから空気感染ではなく汚物に接触した事で疫病が体に付着して発症する接触感染、もしくは疫病が付着した手で食べ物を掴んだり、疫病が入った飲食物を飲み食いして発症する経口感染だと思われます。この場合、感染源である汚物を処理すれば、とりあえずの問題は無いでしょう。
共同トイレのおかげで、汚物はすぐに汲み取り槽に落ち、誰にも触れる事が出来ないようになっていましたから、後は僕が外に出る際、疫病を持ち出さないように気をつければ対処は可能だと思います。……専門家ではないので、半端な知識ですが」
ホントそうだよ、俺医者じゃないからな……地球の知識で基本的な事しか分からないし……
しかし、空気感染じゃなくてよかった! 俺の勝手な予想だけど! スカベンジャースライムが居て本当に良かった! スライムがいなかったらどう対処していいか分かんなかったよ、焼き払うとかやって煙に乗って病原菌が広がったりしたら大変だし、消毒薬なんて大量に用意しないといけないし、そもそも消毒薬を売ってる所を見た事無いし。
「そんだけ語れて何が半端な知識だ。俺はそんな話聞いた事ねぇぞ」
「リョウマ君、私も……いえ、ここに居る全員がそうだと思うわ。どこでそんな知識を得たの?」
やっぱりここまでの疫病の知識はこの世界に無かったか!
「祖母から学びました。祖母は薬の研究をしていたので、病気にも詳しかったのです。……僕は学んだというより薬品調合中に雑談として聞いた程度なのです」
その言葉でとりあえず皆さん納得したようだ。
その後次の作業は明日からとなったため、俺と公爵家4人は一度宿に戻って休む事になった。セバスさんとアローネさんは情報収集に行っている。聞いた所では護衛の皆さんも総動員されているらしい。
なお、俺が疫病に感染する可能性が無いとは言えない。そのため4人とセバスさんやメイドさん2人にうつす事の無いよう俺は宿を変えると言ったら7人全員に断固反対され、最終的に奥様とエリアに泣きながら怒られた。
本当に良い人達だ。ありがたい。明日からも全力でやろう。




