第一章 13話
ちょっと覗いてみたら、いつの間にかお気に入り件数が1000を超え、日間ランキング2位にランクインされてました((((;゜Д゜))))
見て下さっている方々、評価してくれた方々、本当にありがとうございます!嬉しくなったので、今日も書き溜めの分を少し投稿します。
今の勢いのあるうちに執筆を続けますが、第一章が終わったあたりで皆様からの感想・ご意見を元に、1度全体を修正しようかと思います。
これからもよろしくお願い致します。
翌日
~Side 竜馬~
今朝セバスさんから公爵家の皆さんは今日、役所でこの近辺を治めている代官に会うとのことで、俺は単独行動する事になった。奥様は一人で街を歩くのが嫌なら宿に居なさいと言ってくれたが、それではいかん。
せっかくギルドにも登録したことだし、初めての依頼を受けてみる。まずはテンプレで薬草採取か?
森で採取をする際に使っていた特製の籠付き背負子をアイテムボックスから引っ張り出し、スライムを中に入れてギルドに行き、Gランクの依頼を見てみると薬草採取・掃除・引越しの手伝い等があった。
初めは薬草採取かと思っていたが、今受けなくても薬草を採ってくればその時で良いらしいので、これはいつか他の依頼の帰りにでも採取してこよう。
そう思って薬草採取以外を探していたら、やたらと目立つように貼られた2枚の依頼書を見つけた。
内容は家の掃除と街の共同トイレの掃除だった。
家はともかく、共同トイレはスカベンジャースライムと前に編み出した魔法で何とかなる。そう思った俺は受付に行き、この2件について聞いてみる。
「すみません、少しお聞きしたいのですが」
「いらっしゃい、なにが聞きたいのかしら?」
「この2件の依頼なんですが、詳細を聞かせてもらえませんか?」
「どれどれ……ああ、この依頼ね。どっちもかなり依頼が出てから時間が経ってる依頼よ、内容的にはただの掃除なんだけど、臭くて汚いから誰もやりたがらないの。それに、広さがね……」
「広いんですか?」
「とっても、ね。まずこっちの家の掃除なんだけど、この依頼人の家の隣がゴミ捨て場だったの。依頼人も不快だったけど、安かったから我慢してその家を買ったのね。
でも、その数ヵ月後にゴミ捨て場と家を隔てる地下室の壁が崩れて、ゴミ捨て場のゴミが地下室に流れ込んじゃったのよ。それで家中に匂いがこもってるからどうにかしてくれって事。掃除をしても壁を直さなきゃどんどんゴミが入ってくるし、壁を直すにはゴミをどうにかしなきゃって堂々巡りなのよ
それからこっちの共同トイレなんだけど、こっちは本来役所がスラムの人達を雇ってたはずなんだけど、どうも役所からの支払いがされてないみたいで、スラムの人が断っちゃったの。それで汲み取り作業をする人がいなくなって、もう5ヶ月放置されてるわ。悪臭で苦情が来てるんだけど、抑えるのももう限界近いわね……」
「苦情以前に疫病とかが心配なんですが……2件とも……」
「あら、よく知ってるわね。えらいわ~。そうなのよ、不潔な場所では疫病が流行り易いって言うわ。だから何とかして欲しいんだけど誰も依頼を受けてくれないし……そもそも役所がちゃんとお金を払っていれば、スラムの人達が仕事を断るわけないのよ。彼らは働ける所が少ないから、彼らが仕事を選んでるとは考えにくいわ、生活費を稼ぐために必死だもの」
「2つの具体的な広さはどれくらいでしょうか?」
「家が200平方m位の地下室で、共同トイレは横幅7m、縦幅が2kmの汲み取り槽が30本よ。共同トイレの方は1本ごとの受注ね」
「ゴミの内容は? 共同トイレの方は聞かなくてもわかりますが」
「家の方は生ゴミがメイン。あとは木材の端材とかだけよ」
それならスカベンジャーに食べさせられるな……
「そうですか……では家の方の依頼を受けさせて貰えますか?」
「え!? 受けてくれるの!?」
「ええ、少々都合よく掃除に使える魔法がありまして。魔力が多めに必要なのであまり使い手はいないそうなんですがね」
「そうなんだ~、じゃあギルドカードを出して。期限はないけど途中で放り出したら罰金だよ」
「了解です」
俺はそう言ってギルドを出て、依頼主の家に向かう。依頼主の家はギムルの街の東部、住宅街の中でも安い家が立ち並ぶ地区にあった。
俺は家の扉をノックした…………もう一度ノックする…………まだ出てこない…………留守か? …………もう一度ノックして今度は声ででも呼びかける。
「すみませーん! 冒険者ギルドから掃除の依頼を受けてやってきましたー!」
俺がそう言った瞬間中からドドドドッ! という音が響いて勢いよく扉が開いた。
「掃除に来たというのは本当かにゃ!?」
出てきたのは頭に猫耳、腰にしっぽがついた、猫人族の女性だった。知識では知っていたけど現実に見るのは初めてだ。ただ残念なのは……俺の獣人との初遭遇が凄まじい生ゴミの匂いとともにやって来た事だ。しかしこれもある意味客商売、元日本人として笑顔は崩さん!
「はい、冒険者ギルドから派遣されたリョウマ・タケバヤシと申します。依頼者の方でよろしいですか?」
「そうだにゃ!本当に掃除に来てくれたんだにゃ! もう諦めかけてたにゃ~!」
「では、依頼書の確認をお願いします」
「うん、うんっ! 間違いないにゃ!アタシは依頼主のミーヤだにゃ! 来てくれて本当にありがとうにゃ!」
「お礼は仕事を終えてからにしてください」
「……うっ、うええぇぇぇぇっぇん!」
何この人!? 急に泣き出して……っちょ、どうすれば良いんだ?
「ちょ、ちょおっと! 落ち着いて下さい、ね?」
「ごめんにゃさい……嬉しくて……今まで来た冒険者は皆ここに来るとものすごく嫌そうで、文句タラタラで……皆途中で帰っちゃうんだにゃ~……中には玄関先の臭いにも耐えきれず帰る人もいて……君みたいに最後までやるって言葉にしてくれた人もいなくて……」
いや、そこは我慢しようよ今までの冒険者さん……病気とかならともかくね? 玄関先はないでしょ……。
「では早速作業に入りたいのですが、作業は地下でしたね?」
「そうだにゃ。でも、どうする気なのかにゃ?」
「ゴミの種類は生ゴミや木材の端材だと聞きました。それなら都合のいい魔法があるんです」
「え、そうなのにゃ?」
「ええ、魔力の消費が大きいので使い手の少ない魔法ですが、あるんです。それに、僕の従魔も居ますから」
「君は従魔術師だったのにゃ? ……まぁ正直綺麗にしてくれるなら何でもいいにゃ。早速お願いするのにゃ」
「かしこまりました。念のため聞きますが、地下にはミーヤさんに必要な物はありますか?」
「にゃいにゃ、もともと地下は物置にも使ってにゃかったからにゃ。たとえあったとしても、あんなゴミに埋もれた物はもう捨てちまうにゃ」
「それならばだいぶ早く済みそうです、地下室の物は完全に処理、でよろしいですね?」
「それでいいにゃ、たのむにゃ」
「では作業に入らせてもらいます。地下への入口は何処でしょうか?」
「こっちだにゃ」
俺はミーヤさんに案内されて、地下へと続く階段にたどり着いた。階段を降り、そこにあった扉を開けると大量のゴミとハエなどがわんさかいた。
俺は一度扉を閉め、背負子からヒュージスカベンジャースライムを出す。そして再度扉を開け、ヒュージスカベンジャースライムを中に入れ、分離するように念じる。
するとスライムはすぐに分かれて部屋中を天井付近まで満たした。そこで俺はスライムに少し悪臭を発させる。そしてスライムの悪臭にハエなどが集まり、即座に捕食されていった。
そこからはただ只管スカベンジャースライム達に生ゴミを食べさせていくだけの作業だ。傍から見たら俺はサボっているように見えるので、隠蔽結界で姿を隠しておく。
大体20分位でスカベンジャースライム達は地下室の床までゴミを食べたが、部屋に入って見てみるとギルドで聞いた通り壁の穴からどんどんゴミが入ってきている。
どうやらこの家は坂の下に建っており、その上にゴミ捨て場があるという、ゴミが坂を滑り落ちるのをこの家で抑えているような状態になっているようだ。誰だよこんな場所に家建てたの……
これを解決する方法は単純、ゴミが尽きるまで食わせる! それだけだ。ただし外にスライムが出てしまうと騒ぎになるかもしれないので、俺は外のゴミ捨て場に隠蔽結界を張る。そうすれば外からは見えないので騒ぎにならない。バレても従魔術師が一緒なら問題ないが、念のためだ。
結局俺が隠蔽結界を張ってから1時間程でゴミ捨て場のゴミは食べ尽くされた。
しかしこいつらの体どうなってんだろう? 別にスライムは大食いってわけじゃない、むしろ燃費はいい。でも、食事は与えたら与えただけ食べられるみたいだ。
何はともあれゴミは無くなったが、壁はまだ汚れているのでここからが俺の出番だ。スカベンジャースライムとクリーナースライムに消臭液を部屋中と外の壁に噴射してもらい、臭いを消してから壁の汚れを水で洗い流す。
「『ミストウォッシュ』」
水魔法『ミストウォッシュ』圧縮した水を霧状に噴射して汚れを落とす魔法だ。森で魔法の研究をしていたとき、高水圧切断機を再現した『ウォーターカッター』という魔法を作ろうとして失敗して、的にした岩が綺麗になったのを見て前世でこんな掃除用具あったな……と思い、これはこれで掃除用の魔法として確立した。
この魔法は頑固な汚れもよく落とす。ただし、使っている間中魔力が消費されるので部屋一つ掃除するのに結構多くの魔力を使う。魔力をつぎ込み続ければずっと使い続けられるという利点もあるが、魔力が垂れ流しのようにどんどん持っていかれる。魔力が多い人じゃないと使いづらい魔法だと思う。
洗浄後の汚れた水はスカベンジャースライムに飲んでもらった。
「よし、これでいいな」
壁を洗い終わり綺麗になった。が、壁の穴が気になる。このままでは無用心だし、適当に塞いでおこう。
『クリエイト・ブロック』で外の土からレンガを作り、同じく『クリエイト・ブロック』で壁の穴を四角く整える。そしてスティッキースライムの粘着硬化液をセメントがわりにレンガを組んで穴を埋めていく。スライム達の手助けもあり、20分で作業が終わった。
俺に出来ることは全て終わったので、クリーナースライムに全身を綺麗にして貰い、スライム達を背負子に入れてミーヤさんの所へ行く
「ミーヤさん」
「にゃっ!? ど、どうしたにゃ……? まさか、もうやめるなんて……」
「……確かにやめますね。だって、終わりましたから」
「…………にゃ? え、どゆこと?」
俺はクエスチョンマークを頭に浮かべているミーヤさんを連れて、地下室に行く。するとミーヤさんは綺麗になった地下室を見て、顎が外れんばかりに口を開けていた。
「にゃ……にゃにをしたのにゃ!?」
「掃除です」
「すごいにゃ! 本当にきれいににゃってるにゃ! どんどんゴミが入ってくるから今まで誰も掃除できにゃかったのに! そう言えば穴も塞がってるにゃ!?」
「またゴミが入ってきては仕方ありませんので、土魔法で作った石材で塞がせて頂きました。少々周りの石材との違いが目立ちますし、見苦しいようでしたら取り除きますが……」
「必要にゃいにゃ! アタシは気にしにゃいし、元から掃除ができたら塞ぐつもりだったのにゃ。だから、見苦しいどころかむしろありがたいのにゃ」
「そうですか、ではそういう事で……依頼は達成でよろしいですか?」
「勿論だにゃ。これだけ早く綺麗にしてくれて、壁まで直してくれたんだから報酬増額するにゃ!」
「ありがとうございます」
その後依頼書の達成欄にミーヤさんのサインを貰い、ギルドに戻った。依頼の説明と受注をしてくれた受付嬢の女性が受付にいたので達成報告に行く。
「すみません」
「あら、朝の……」
「依頼の達成報告に来ました」
「え? 達成? 放棄じゃなくて?」
「達成ですよ」
俺はそう言って依頼書を提出する。
「本当ね……依頼達成になってる、それに報酬の増額まで……あなた凄いわね、この依頼、ずっと誰も達成できなかったのよ? 匂いはキツイし何度掃除しても穴からゴミが流れ込むから、心が折れる人が続出したのよ? それを受けてから2時間もかからずに終わらせるなんて」
「都合よく使える魔法があったからです」
「そうだったわね、お疲れ様。これで依頼達成報告完了と、報酬の中銀貨30枚よ」
「え? 多くないですか?」
「何人もの人が断るもんだから困って、人が来なくなってからは依頼主のミーヤさんがどんどん値上げしてなんとか請けて貰おうとしたのよ。おまけに君には報酬増額の指示まであるからこの額になったわ」
「そうですか、わかりました」
「それとあなたが戻ったらギルドマスターが部屋に呼ぶようにって言われてるわ、ついてきてくれる?」
「ギルドマスターがですか?」
俺のその質問に答えたのは目の前の女性ではなく、となりのカウンターで手続きをしていた男性だった。
「心配すんな、別に大したこっちゃねぇよ。いつもの事さ」
「どういう事でしょうか? あ……僕はリョウマ・タケバヤシです」
「俺はジェフ・グランジュだ。あのおっさん……ギルドマスターはおせっかい焼きでな、冒険者、特に新人やお前みたいな13歳以下の冒険者にはマメに声かけて手助けしてるのさ。俺も新人時代は世話になった。ツラはそんじょそこらの盗賊以上に盗賊らしいが、怖がる必要ねぇよ」
「そうでしたか、ありがとうございます」
「いいってことよ」
その直後俺たちにカウンターの奥から声がかけられる。声をかけたのはギルドマスターだった。
「その通りだ、そいつに礼はいらんぞ」
「あ、ギルドマスター」
「げぇっ! おっさん」
「人の顔見てげぇっ! はねぇだろ……それと誰の面が盗賊より盗賊面だコラァ!」
「おっさんの面は誰が見ても盗賊面だろうがよ!」
「うっせぇ! 顔がゴツイのは仕方ねぇだろうが! だが盗賊みてぇにあくどい顔はしてねぇぞ!」
「夜暗い所で女子供に会ったら叫んで逃げられるだろ……」
「ぐっ……この街の連中なら問題ねぇ」
「そりゃもう皆慣れたからだっつーの!!」
「ぐふぅっ! ……もういい……リョウマ、ついてこい」
ジェフさんの言葉に傷ついたギルドマスターが胸を押さえ、奥に戻っていきながら俺を呼ぶ。俺はジェフさんと受付嬢さんに一言挨拶をしてギルドマスターを追った。
そしてついたのは昨日も来たギルドマスター室だ。
「適当なとこに座れ……ってか、お前さんが背負ってるその籠なんだ? 滅茶苦茶目立つんだが」
「失礼します。この籠の中には僕の従魔を入れています」
「お前さん従魔術師だったのか? てっきり狩人か何かだと思ってたぜ」
「従魔はスライムだけですし、従魔術師としては見習いですよ。従魔術を使える狩人ですね。スティッキースライムを組み合わせた罠やポイズンスライムの毒を矢に塗って使います」
それを聞くとギルドマスターはニヤリと笑い、こう言った。
「……お前さん、なかなかえげつない組み合わせをするじゃないか」
「そう思います? 所詮スライムですよ?」
「自分でやってるんだからよく分かってるだろうが。ただのスライムならまだしも、上位種は侮れねぇよ。
多くの新人冒険者はただのスライムと上位種を一緒くたにして弱いと思ってるが、上位種のスライムと戦った事のある冒険者は弱いだけとは思ってねぇ。
アシッドスライムの酸を喰らえば装備が悪くなる。連戦なんかになりゃ、帰る頃には新品がボロボロさ。毒を喰らえば命もやばい、スティッキースライムはめんどくせぇ。動けねぇ時に別の魔獣が来たらまず命がねぇ」
「なるほど……それなら冒険者ギルドは働きやすそうですね。実はテイマーギルドではスライムを使っている事で支部長直々に、登録と同時に気に入らない無能と判定されたようでして」
「立場上何度か会ってるが、あの野郎無駄にプライド高けぇからな」
「ええ。スライムは力仕事には向いてませんし、こちらで力仕事以外の仕事を探しに来たんですよ」
「なるほどなぁ……っと、そうだ仕事の話だ。今日お前さんが早速仕事を請けたって聞いたんだが、上手くやれたみたいだな?」
「はい、依頼者には満足して貰えました。報酬増額もして貰えましたし」
「ほー、初仕事でそれは上々だ。掃除としか聞いてねぇんだが、何の仕事を受けたんだ?」
「ミーヤさんという依頼人の家の掃除です」
それを聞いてギルドマスターが目を丸くした。
「お前さん、あいつの家の掃除をしたのか?」
「知ってるんですか?」
「そりゃ、ミーヤもこの街に住む冒険者だからな。ギルドにはよく来るし顔も合わせるぞ」
「そうでしたか」
「しかし……その依頼を達成したってことは、掃除できたんだよな?」
「はい」
「あの家を掃除出来る奴が居るとは思わなかったぜ……で、どうやった?」
「ちょうどいい魔法を知っていたんですよ。魔力を多く使いますから使いにくくて、あまり一般には知られていないそうですが」
「ほーう? なら、次に1つ受けて欲しい依頼があるんだが……」
もしかして……
「街の共同トイレの掃除依頼ですか?」
「なんだ、知ってんのか?」
「ええ、今日依頼を受ける前、どっちにするか迷ってたんです」
「なら話がはええ、役所が清掃依頼をギルドに出した、清掃されてないのはギルドのせいだって町民に言いやがってよ。苦情がバンバン来てんだ。元はといえば役所がスラムの連中に金を出し渋ったのが原因だっつーのによ」
「それ、受付嬢さんも言ってましたけど、本当ですか?」
「ああ、確かだぜ。ここ数年で街の収入が減ってるのは知ってるか?」
「確か……鉱山から鉄鉱石の採掘量が落ちてるんでしたっけ?」
「そうだ、去年から廃坑状態の鉱山もある。それも今年で正式に廃坑決定だ。そんな訳で、街の収入が減ってきてる。それで役所が色々と費用を抑えようとしてるんだが……主に街の管理費を削りやがるから、しわ寄せが街の人間に来てんだ。
最も大きく割を食ってるのがスラムの連中だな。今まで役所は段々と雇用人数を減らす事で人件費を抑えてたんだが、それだと人手が足りなくなる。手が回らないのをいい事に、仕事が終わっていないのは真面目に働いていないからだと難癖をつけて報酬を出し渋ったり、強引に値切ったり……町民から苦情が出てきてからは大勢のスラムの奴を雇おうとしてたんだが、それもスラムの人間は真面目に働かないなんて理由を付けてタダ同然の額で雇おうとして最終的にスラムの奴らも誰も引き受けなくなったんだ。
いくら金に困ってても、割にあわねぇならスラムの奴らも働かねぇ。別にあいつらも大金を払えって言ってる訳じゃねぇんだ。ただ……あいつらはまともな生活が出来てねぇから、病気になりやすい。タダ同然の額では病気になるリスクの方が大きいんだよ」
なるほどなぁ……
「わかりました、準備をして早いうちに受けます。早ければ明日にでもうけましょう」
「たすかるぜ、頼む。報酬は弾むからよ」
「よろしくお願いします」
ついでにラインハルトさんたちにも話してみるか、1番の権限を持ってるのは彼らだからな。それにあの人たちなら今日俺が何したかを聞いてくるだろうし、この事を知れば何かしらの対応はするだろう
「……お前さん、何考えてんだ?」
顔に出てたか?
「いえ、僕は今日単独行動でしたので、昨日僕の登録に付き添ってくれた人達が今日あったことをいろいろ聞いてくるな~と思いまして」
それを聞くとギルドマスターがまたニヤリと笑う。
…………そういう顔されると、ジェフさんの言ったとおり確かに盗賊みたいな顔だと思ってしまうな……
「お前さん、いい性格してんなぁ。……で、動いてくれると思うか?」
「勿論、知りさえすれば動いてくれると思いますよ」
「根拠は?」
「根拠ってほどでもないですが……僕は孤児でして、行き場がなくて森に住んでいた所を少し前に偶然皆様と出会いました。それからあれこれと世話を焼いてくれているんです。見ず知らずの僕をですよ?
僕ひとりならともかく、スラム街の全員ともなると一人一人僕のような扱いは出来ないでしょう。しかし、現状を知って何も感じないような方々ではないと思います」
「……そうか」
「はい。それじゃそろそろ僕はお暇します。明日からの準備を整えたいですから」
「おう、任せたぜ。お前さんが来たらすぐに例の仕事を優先的に回すように言っとくぜ。誰も受けねぇから優先も何もねぇがな」
「ですね」
そんなことを言って、笑いながら俺はギルドから宿に帰る。途中で洋服用の布と裁縫道具を買える店を探して安い布と裁縫道具を1セット。さらに糸の入ってない糸巻きを購入した。




