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第一章 12話

知らないうちに、100人以上の方にお気に入り登録して頂いていて驚きました。


見て下さっている方々、本当にありがとうございます。

ご意見、感想もお待ちしております。


それから見て下さっている方々には申し訳ありませんが、次の話を投稿するのは来週になるかもしれません。今週、期末試験で時間が取れるかわかりませんので…ご容赦下さい。

 竜馬が5つの的を射抜き終わった直後、エリアリアが興奮して騒ぎ出す。しかし他の4人は竜馬の技量に言葉を失っていた


「凄いですわリョウマさん! ですわよね!? お父様!」

「あ、ああ……」

「私、弓ってもっとじっくり狙うものだと思ってましたけど、あんなに早く射つんですね」


 そのエリアリアの言葉にセバスとラインバッハが少し慌てて間違いを正す。


「いえ、お嬢様。あれはリョウマ様の技量によるものでありまして、普通の弓使いはあれほどの速さでは射ません。リョウマ様の弓の腕前は、そこらの弓兵と比較してはいけません」


「エリア、リョウマ君を基準にしてはいかんぞ。あれだけの速さで矢を放ち、その全てを的の中心に当てるなど普通の者には不可能じゃからな。おそらく国軍にも同じ事が出来る者は少なかろう」

「本当ですの? やっぱりリョウマさんは凄いですわ!」

「確かに凄いのだけれど……」

「我々はリョウマ様の実力を過小評価していたようですな」


 竜馬に自覚はないが、前世からの訓練とこの世界に来てからの狩りで竜馬の弓の腕前は既に国で有数の物になっていた。これでも魔法以外の神のチートは貰っていないのだ。故にこれは竜馬の純粋な実力である。


 動かない的の試験を終え、次はクレー射撃もどきの試験だ。竜馬は指定された位置に立ち、弓を構えているが、目標が出てくる壁がエリアたちの居る方向と反対側なので、エリア達5人と竜馬の後ろに立つ試験官の男に竜馬の顔は見えていなかった。


 仮に誰かが今の竜馬の表情を見ていたら、どう感じただろうか? 今の竜馬は極限まで集中力を高め、緊張も焦りもない、だが興奮や意気込みと言った物もない。平穏そのものではあるが、竜馬の表情からは完全に感情が消えていた。到底11歳の少年がする表情ではない。


 竜馬は今の見た目こそ幼いが、前世の幼少期から始めて40年近い鍛錬を重ねてきた男だ。その結果身につけた集中力と冷静さ。日常生活では無駄になってしまう事も多かったが、単純作業を繰り返しひたすら行う場合には重宝した。


 その点だけは普段竜馬を嘲り笑っていた同僚や上司ですら認めていた。だからこそ都合のいい仕事代理マシーンとして竜馬を使っていた。だが、それですらも竜馬の本来持つ集中力を全て出し切った訳ではなかった。


 竜馬が最も力を発揮する場、それは幼少期から慣れ親しんだ武術だ。竜馬は同じ型を毎日なぞり、技を体に染み込ませていった。そして息をするように自然に、流れるように体を動かす。体は既に自在に動く、心にもそれを阻む物なく、技の全てを出し尽くせる。それが竜馬の本当の全力であり、竜馬の才能だった。


 周りに合わせ、自身を抑えた昔。鍛えた技を出す事は許されず、出せば周りは怯えて去っていった。地球の法、常識、そんな物は異世界に渡った今、竜馬にはもう関係ない。前世の柵から逃れた今ここに、竜馬の真の全力は解き放たれた。




 試験官の笛が鳴り、右の柱から的が飛び出る。竜馬は的のゆく先に矢を放つ。的が射抜かれ地に落ちる。次の的が左の柱から飛び出る。竜馬は再び的のゆく先に矢を放つ。的が地に落ちる。


 的が出るのが右か左かの違いはあれど、龍馬がやる事は変わらない。長い訓練で得た技を使い、飛び出た的の軌道を見切り、ただ只管に矢を打ち込む。その繰り返しだ。


 段々と的の射出速度や間隔も変化する、しかし竜馬は対応する。複数の的が同時に出た時はまず1つを射抜き、迅速に次の矢を矢筒から抜いて反対側の穴に消える前に射抜いた。


 最後には的が4つ同時に出ていたが、竜馬は指の股の全てに矢を挟み、一度に4本矢筒から矢を抜くとあっという間に4本を射ち、全ての的を射抜いた。そこで矢筒の矢が無くなり、試験終了の笛が吹かれた。












 ~Side 竜馬~


 ふぅ……試験終了の笛が鳴り、一息……!!


「っ! 『アースニードル』!」


 弓を下ろした所で背後から投げナイフが飛んできた。俺はそれを反射的に指で挟んで受け止め、ナイフを投げてきた試験官の男に向けて投げ返した。


 男はそれを腰から剣を抜いて、俺が投げ返したナイフを叩き落とす。その隙に俺は手に持った弓を捨てると同時に土の攻撃魔法『アースニードル』を使い目の前から真上に先の尖った石の棒を生やし、根元を蹴りでへし折って即席の槍として構えた。


「ストップ! 悪かった悪かった、これで試験終了だ。1次2次3次とお前さんは合格だ、だからその物騒なもんをしまってくれや」


 どうやら今の投げナイフも試験の一環だったらしい。俺は警戒しつつも即席の槍を『ブレイクロック』で崩す。


「すまんな、今のナイフは俺が弓使いの試験をする時、ちょっとした警告のつもりでやってるんだ。的にばっかり集中してて、周りへの注意を怠ってる奴が多いんでな。


 ここが森で、俺のナイフが魔獣の攻撃だったら死んでるぞって言ってやってるのさ。大半の奴はここは試験場だろって言い返すか不満そうな顔をして、それ以外は納得したり感謝してきたりぎりぎりで避ける奴も居たんだが、反撃してきた奴はお前さんが初めてだ。お前さんは弓の腕も文句ねぇし、制限はつけねぇ。ランク通りなら好きに仕事を選びな」


 どうやら本当に試験の一環……というかこの男のおせっかい焼きだったらしいので、俺は警戒を解いて礼を言う。


「わかりました。ありがとうございました」

「おう、これから期待してるぜ。無理せず頑張んな。あと、俺は冒険者ギルドギムル支部のギルドマスター、ウォーガンだ、よろしくな」


 この男ギルドマスターだったのか!?


「よろしくお願いします。ギルドマスターだったんですね……」

「あぁ? そりゃお前さん……」


 ギルドマスターは横目でチラリと付き添いの5人を見てこう言った


「何でか知らねぇが、公爵家の人間が揃って付き添ってる奴を下手な奴に任せられるかよ」


 確かに……正論だ。


「ごもっともです……」

「つか、本当に何で公爵家総出で付き添われてんだよ」

「森での狩りの最中に偶然ご当主のラインハルト様と出会いまして、その2週間後に旅に誘われたので付いて来ました」

「どんな状況だよそりゃ……」

「お話中失礼いたします。試験は終わったようですが、結果を教えていただけませんか?」


 俺たちの話に割って入ったのはセバスさんだった。よく見ればエリアリアが結果発表をウズウズしながら待っているようだ


「失礼しました。彼は文句なく合格、受注制限はかけない事に決定します。実力的に問題は無さそうですから」

「そうでしたか、おめでとうございます、リョウマ様」

「おめでとうございます、リョウマさん!」


 エリアリアが駆け寄ってきて俺の腕を取り、踊るようにぐるぐる回る。エリアは本当に喜びを全身で表すな……しかし、こうも喜んでくれると俺も嬉しくなる。


「エリア様、リョウマ様をお離し下さい。リョウマ様にはまだ手続きが残っておりますので」

「はっ! そうでしたわね……」

「ありがとうございます、セバスさん」


 それから俺は別室……というかギルドマスターの執務室に通されて俺は冒険者ギルドへの登録をした。


「さて、さっきも言ったがリョウマ。お前さんに制限はかけないことはこのギルドカードに記載されている。これでお前さんのランクと同ランクの依頼は好きなように受けられる。気をつけていけよ」

「はい、頑張ります」


「……本当は、実力は十分だからEランク位から始めさせてやっても良いんだが、お前さんの歳でEランクの仕事を受けてると目立つからな。いきなりやると周りの連中から反感を買うかもしれん。Gからコツコツやって実力を示していってくれ」

「お心遣い、ありがとうございます」


「あーやめろやめろ、俺には丁寧な言葉なんて使わなくていい。めんどくせぇ。にしてもお前さん、誰に弓を教わったんだ? エルフか?」

「祖父です、けど、エルフじゃなくてドワーフです」

「ドワーフか……弓を使うドワーフは珍しいが、居ない訳でもないな。あいつらは手先が器用な種族だからな、エルフ程ではなくても弓の名手も居るか……まあいい。これで登録はおわりだ、あとはこいつを持って行きな」


 ギルドマスターは1つの封筒を俺に差し出してきた。


「何ですか? これは」

「俺の知り合いの鍛冶屋への紹介状だ。この街では1,2を争うほど腕はいいんだが、頑固な職人だからお前さんだと若すぎて門前払いをされる可能性があるからな。俺のナイフを弾いたあとの行動からすると槍も使えるんだろ? あそこなら色々置いてあるから、そこで自分に見合った武器を探しな。防具も専門じゃねぇが中々のモンが置いてある。下手な店で買うより良い」


 これは素直にありがたい。


「ありがとうございます。新しい武器が必要になったら行かせて貰います」


 俺は礼を言ってギルドマスターの部屋を出る。


 そして今日は暗くなってきていたので、別室で待っていた5人とともに宿に帰った。


 そこで一つ思い出した。


「そうだセバスさん、この宿でも神像用の石材は手に入るでしょうか?」

「ええ、手に入りますよ。また作られるのですか?」

「実は今日の洗礼で今まで全く祈った事がない神様からの加護を頂いていまして……その方の像を作ろうと」

「なるほど……差し支えなければどなたの加護か教えて頂けますかな?」


「はい、酒の神テクンの加護、とステータスボードには出ています」

「酒の神テクン様ですか……人間に加護が与えられるのは珍しいですな、テクン様は酒の神であらせられるとともに、技術と職人の神。基本的にドワーフが崇める神ですからね。何か心当たりはございませんか?」

「僕を拾ってくれた祖父はドワーフでした。あと、祖父の手伝いで鍛冶仕事を少し」


「なるほど、それが理由でしょうな。おそらくその頃にあった何らかがきっかけで、リョウマ様はテクン様に気に入られたのですよ。しかし、何故技工神の加護ではないのかが少々気になりますが……」

「技工神の加護、ですか?」


「テクン様が与える加護は技工神の加護と酒の神の加護の2種類がありまして、加護の効果が違うのですよ。技工神の加護は鍛冶などの上達が早まり、良い作品を生み出せるようになると聞きます。酒の神の加護はどれほど酒を飲んでも泥酔せず、二日酔いにならないそうです。それから良い酒とめぐり合い、手に入る機会が増えますね。これは羨ましがられますが、特にバレても問題のない加護です」

「そうなんですか……」


「話がそれましたが、テクン様の像を作るならこちらの石材の方がよろしいでしょう」


 そう言ってセバスさんがアイテムボックスから取り出したのは、俺が土砂崩れの土砂で作った石材だった


「これ……」

「リョウマ様がお作りになった石材です。街ではお金も必要になりますし、大きさは一定で大量にありましたから、街で売り、リョウマ様の生活資金の足しにしようと持って来ておりました。リョウマ様は私やお館様達からの援助は遠慮なさると思いましたから」

「わざわざ、ありがとうございます」


「いえいえ。それで石像の件ですが、テクン様は無駄に豪華な物を嫌うと言われています。テクン様の像をつくる場合、安物の石材でも心を込めた精巧な像を作るのが最も良いと言われていますね。あとは石像の前にお酒をお供えするのが1番良いそうです。テクン様の絵は石材と同じように購入できますし、宿ですからお酒も買えますよ」

「では、それを買いたいと思います」


 俺はセバスさんと宿の従業員の所へ行き、その件を伝えると、ついさっきケロミの涙という滅多に手に入らない高級酒が入荷したと伝えられた。


 俺はその酒を供え物用の瓶3本だけ購入したが、セバスさんが目の色を変えて樽で2つ購入していた。なんでもラインバッハ様の大好きな銘柄のお酒だったらしいが、年に限られた量しか作れないため非常に手に入りにくいのだそうだ。


 リョウマ様の得た加護のおかげです、と物凄い笑顔でお礼を言ってきた。ラインバッハ様だけでなく、セバスさんも好きなんじゃないか……?


 その後は部屋に帰り、石像を作って酒を供えた後、クリーナースライム浴をして就寝した。

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