第一章 11話
~Side 竜馬~
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名前:リョウマ・タケバヤシ
性別:男
年齢:11
種族:人間
体力:11052
魔力:198000
力 :B
速さ:A
防御:B
精神:SSS
耐久:A
器用:SS
運 :B
日常生活スキル
家事Lv10 礼儀作法Lv7 楽器演奏Lv3 歌唱Lv3 計算Lv5
戦闘系スキル
体術Lv7 剣術Lv7 短剣術Lv6 暗器術Lv7 槍術Lv4 弓術Lv6 棒術Lv6 分銅術Lv4 投擲術Lv7 隠密術Lv7 罠Lv6 身体操作Lv6 気功Lv5
魔法系スキル
従魔術Lv2 結界魔術Lv2 回復魔法Lv1 錬金術Lv2 火魔法Lv3 水魔法Lv3 風魔法Lv2 土魔法Lv4 無魔法Lv3 雷魔法Lv1 氷魔法Lv2 毒魔法Lv2 木魔法Lv3 光魔法Lv2 闇魔法Lv1 空間魔法Lv3 魔力感知Lv3 魔力操作Lv4 魔力回復速度上昇Lv2
生産系スキル
薬学Lv6 鍛冶Lv1 建築Lv3 木工Lv3 造形Lv4 描画Lv4
耐性系スキル
肉体的苦痛耐性Lv8 精神的苦痛耐性Lv9 毒耐性Lv7 病気耐性Lv7 睡眠耐性Lv7 寒さ耐性Lv7 暑さ耐性Lv7 悪臭耐性Lv3
特殊スキル
神託Lv3 生存術Lv5 生命強化Lv3 超回復力Lv3 耐久力強化Lv6 精神集中Lv5
称号
下克上
不幸な人生を乗り越えた者
神々の寵児
賢者の弟子
武神の弟子
加護
創造神ガインの加護
生命神クフォの加護
愛の女神ルルティアの加護
酒の神テクンの加護
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魔力は転移前に増える事を教えられてたからいいとして……
スキルがレベルアップしてるのがいくつかあるな。しかしこうして見ると魔法系スキル多いな……ん? この生存術ってなんだ? ……そういやサバイバルがあったはずなのに無くなってる、それか? よく見れば称号も微妙に変わってる気がするし、この~の弟子ってのはアレだな、この世界に来た時、神の手紙に書いてあったスキルレベルの辻褄合わせ。
加護はあの3神と酒の神の加護がある。
何はともあれ、とりあえず言われた通り名前・年齢・種族以外は隠しておこう……出来た。
「できました」
「では、付き添いの方が待っている所に案内します。詳しい説明は付き添いの方に聞くと良いでしょう」
女性に促されて部屋から出る。すると外から子供の声が聞こえてきた。
「まてー! まてー!」
「あははは! こっちだよー!」
声のする方を見ると、窓の外でボロボロの服を着た子供達が遊んでいた。それを見ていた俺に女性が説明してくれた。
「彼らはこの教会で面倒を見ている子達です。いつも元気いっぱいで、手伝いが終わるとああして外で遊んでいるのですよ」
孤児か家庭の事情かはわからんが、なるほどな……
「さぁ、行きましょう」
俺は女性の後をついていくと、教会の中の一室に通された。そこには付き添ってくれていたラインハルトさん、奥様、ラインバッハ様、エリア、セバスさんが首を長くしていた。
「お待たせしました、洗礼は滞りなく終わりましたよ」
「お待たせしました、皆さん」
「大丈夫さ」
ラインハルトさんがそう言った直後、女性がすぐに立ち去ろうとする。
「それでは、私は失礼いたします。お帰りの時まで、この部屋は自由にお使いください」
「ありがとうございます」
とっさに俺も礼を言っておく。
「ありがとうございました」
「どういたしまして。それでは」
部屋から出て扉をしめる女性を見送って、ラインハルトさんに聞いてみる。
「さっきの人、急いで出て行きましたけど……何かありました?」
「ステータスボードの内容は皆秘密にする個人情報だからね。配慮してくれたんだよ」
「この部屋も、洗礼を受けた人とその家族がステータスボードの内容について内緒で話せるように用意された場所なのですわ」
「そうだったんですか」
「うむ、ステータスボードの情報は無闇にしゃべるとマズイからの。昔は情報を隠すことが違法だったのじゃが、ステータスボードの内容を知って悪用するものが増えたため、今では隠すのが通例になっておる」
「スキルは自身の戦い方や手の内を晒す事で不利になりますし、体力や魔力等は昔戦場で無敵と言われた国一番の戦士や優れた魔道士が怪我や魔力切れで戦えない事がバレ、敵の襲撃を受け討ち取られた事が何度もありまして、現在では殆どの者が心を許した相手にしか明かしません。似た様な理由で加護も明かしませんな。明かすのは名前と年齢と種族、人によっては称号も明かします」
「なるほど」
「だから、リョウマ君の情報はちゃんと秘密にしておくのよ? 分からない事があれば相談に乗ってあげるけど、教えたくない事は教えなくて良いからね?」
本当に優しいな、この人達は……どれを教えるかはあとで決めるとして、まず1つは見せたいものがある。
「わかりました……でも……1つ見て下さい」
「なんだい?」
俺はステータスボードの魔力の欄を開示して、まずエリアに見せる。
「エリア」
「なんですか? ……!? リョウマさん、これ!」
イチキュッパ、エリアの魔力にはちょっと足りなかったが、まぁ近いよな。その後ほかの四人も俺のステータスボードに表示された魔力の欄を見て目を見開く。
「エリアには負けた……でも……そんなに違わないはず」
「これは凄いな、エリアには及ばないが、近い」
「あの時は冗談のつもりだったんじゃが、まさか本当にエリアと同じ位の魔力を持っているとは……」
「あらあら、やっぱりすごい子だったのねぇ、リョウマ君」
俺の魔力の欄を見たエリアが震えだし、俺の手を取って喜びだした。
「凄いですわ、リョウマさん! 私と同じくらいの魔力の持ち主が居たなんて、嬉しいです!」
エリアは俺の手を取って、飛び跳ねるようにして喜びを表し、1分ほどして息が切れるまでその行動は続いた。
「はぁ、はぁ……ごめんなさい、ちょっと、はしゃぎ過ぎましたの……」
息切れか恥ずかしさか分からないが、顔を真っ赤にしているエリア。そこに奥様が話しかけてきた。
「ん~……リョウマ君、これだけ魔力があるなら、魔術の方はどうしてる?」
「魔法スキル、見せます……皆さんなら大丈夫です」
そう言って俺は各魔法系スキルとレベルを見せる。
従魔術Lv2 結界魔術Lv2 回復魔法Lv1 錬金術Lv2 火魔法Lv3 水魔法Lv3 風魔法Lv2 土魔法Lv4 無魔法Lv3 雷魔法Lv1 氷魔法Lv2 毒魔法Lv2 木魔法Lv3 光魔法Lv2 闇魔法Lv1 空間魔法Lv3 魔力感知Lv3 魔力操作Lv4 魔力回復速度上昇Lv2
「見事に幅広い、が、年齢の割にレベルが高いな。それに全属性を持つとは聞いていたが実際に全属性の魔法を使えるか」
「下位属性は全てレベル2以上、中位以上もレベル2,3があることを考えれば十分だよ」
「やっぱり特に土と空間のレベルが高いわね。空間魔法のレベルは上がりにくいのに、よくここまで上げたわね」
「将来的にはわたくしを超えるかもしれませんな。それに魔力感知・操作・回復速度上昇のスキルまでお持ちとは」
「森で生活するため、魔法を使っていたら、こうなってました。たぶん、火と水は料理やお風呂、土と空間は狩りのためにほぼ毎日使ってましたから」
「ふむ……攻撃魔法などは使われますか?」
「いえ……狩りは基本的に……弓か罠でやっていました。ファイヤーボールは使えます、でも肉が焦げて食べる所が少なくなります。アースニードルは落とし穴の中に設置する杭の代わりに使いました」
「なるほど、今まではほぼ生活に使える魔法のみでここまでレベルを上げたのですな。ならば、攻撃魔法の練習をした方が良いでしょう。使えて損はありませんし、希に武器が効かず、魔法での攻撃のみでしか対処できない魔物も存在しますゆえに」
……忘れてた、そういう魔物も居るんだったな。ってか異世界ものの小説とかだとテンプレじゃん、そういう魔物って。俺、長くひきこもりすぎてすっかり忘れてたよ。これから始めよう、攻撃魔法の訓練。
「そうですね、やってみたいと思います」
「下位属性の魔法なら比較的簡単ですので、今のレベルでも中級までなら少し訓練すれば使えるでしょう。土魔法に至っては上級も扱えるかもしれません。特に難しい事は無いと思いますよ」
「リョウマ君も魔力が多いし、魔力操作の効果で魔力の消費を抑えられ、更に回復速度上昇で回復が早くなるから、その分1日に沢山練習できるしね」
「魔法使いとしては非常に有利じゃ、無駄にせんようにの」
「はい、頑張ります」
俺がそう返事をすると、ラインバッハ様は満足そうに頷いた。しかしその次に真面目な顔をしてこう言った。
「リョウマ君、1つ言っておかねばならん事がある」
「なんでしょうか?」
「君の能力は同年齢の子と比べて、非常に高い。そうなるとよからぬ輩が寄ってくることが多くなる。そう言う事が嫌ならば実力を隠すか、早く地位を手に入れて、身を守るのが有効じゃ。じゃが君の場合は能力が高すぎて、隠すのはちと難しかろう。君は早めにギルドに登録し、上位のランクを手に入れるべきじゃ。何かあれば儂らも力を貸すが、君自身も注意が必要じゃぞ」
「君の場合、能力が高すぎて神の加護持ちなのがすぐ分かるからね。私達は薄々気付いていたけど、スキルを見た事で確信したよ。加護持ちは本気で狙われるから、気をつけて」
マジですか……確かに自重はあまりしてないけど、そんなにおかしかったか。気を付けよう。
「わかりました、気をつけます」
こうしてひとまず教会での洗礼とその後の注意が終わり、今度こそテイマーギルドへと行くことになった。
テイマーギルドに行くと、その周辺には沢山の魔獣が繋がれている場所や、多くの馬車を停める場所が多くあった。鉱山の街らしく、運搬作業用の魔獣がメイン らしい。小型の魔獣ならギルドの中に連れて入っても良いらしいので、縮小化のスキルを使ったスライム達を連れて行くことも出来そうだ。
ギルドの中に入ると、殆ど人だけだが、所々に荷物を持たされているゴブリンやコボルドも居た。俺達はそんな中をラインハルトさんを先頭に職員のいるカウンターに向けて歩いていく。
「いらっしゃいませ。テイマーギルド、ギムル支部へようこそお越し下さいました。本日のご用件は…?」
「娘とこの子の登録をしたい、それから情報提供だ」
「かしこまりました。奥の部屋へどうぞ」
職員の案内で奥の部屋に通され、お茶が出された。そして数分後、ほかの職員よりも豪華な服を来た男がやって来た。その時、俺はその男から何とも言えない嫌な物を感じた。……なんだこの嫌な感じ……
「ようこそお越し下さいました、私、支部長のマシュー・ガンテインと申します。名高きジャミール公爵家の皆様にお会いできるとは、このマシュー、光栄の極みにございます。本日は、お嬢様のご登録でよろしいですね?」
「娘と、この子の登録を頼む」
「この子?」
そう言ってマシューと名乗った男は俺を見た。その時俺は気づいた、こいつは前世の上司と同じタイプの人間だと。上に媚び、下の者の名前すら覚えない。酷い者になると下の者を人とも思わず、ただ見下して道具のように使う人間、コイツはそのタイプだ。今の今まで俺の存在すら目に入っていなかったようだしな。
おそらく服装で判断したのだろう。さっきまで浮かべていた媚び諂う目が、俺を見た瞬間表情は変えなかったものの、侮蔑と嫉妬を混ぜたような視線になった。今も『なぜお前の様の者が公爵家の方々と共に居る』と思っているのが透けて見える。
「この者もですか?」
「ええ、そうよ」
「かしこまりました……おい」
マシューは後ろに控えた職員から2枚の紙を受け取り、俺とエリアに差し出してきた。
「この用紙に記入をお願いします。代筆は必要かな?」
後半は俺だけに向けて言った言葉だ、それに俺は普通に返す。
「お心遣いありがとうございます。しかし、多少は書けますので結構です」
「そうか」
俺は手早く用紙に必要事項を記入して提出する。必要事項は名前、年齢、種族、そして従魔術もしくは召喚術を覚えてからの期間だ。
「それでは確認させていただきます。……お嬢様は先日初めてテイムをしたのですか、おめでとうございます。これからの躍進を期待しております。そして君は……3年前? 従魔は何を連れているのかね?」
「スライムです」
「フン、スライムかね? 従魔術を覚えて3年も経つというのに」
そう言ったマシューに、エリアからの不満が混じった質問が来た。これにマシューは少し慌てた。従魔術師が練習として最初にテイムするのがスライムである事を思い出したのだろう。
「スライムの何がいけないと言うのですか?」
「いえ、いけないという訳ではありませんが、何分スライムは弱いモンスターですので残念ながらこの街で受けられる仕事が少ないのですよ。この街の従魔術師の仕事は殆どが鉱山の荷運びですので、せめてゴブリンかコボルド位でなければご紹介出来る仕事が限られるのです」
マシューはそんな言い訳をするが、通用しない。奥様からの援護射撃も来た。
「確かに仕事は少ないかもしれませんね。しかし彼は従魔術を学ぶ途中で師が亡くなられたため、完全な教えを受けられなかったのです。そこは、理解してあげて下さいね?」
「そうでしたか、これは大変失礼致しました」
そう言って頭を下げるが、俺にではなく奥様にだ。俺には視線すら向けない。
「では手続きを続けさせていただきます。書類に不備は無い様なので、従魔術の確認をさせて頂きます。ステータスボードの従魔術スキルを開示して頂くか、実際に従魔契約を見せていただけますか?」
その言葉に俺とエリアはステータスボードの従魔術スキルを開示して見せる。
「はい、結構でございます。それではこちらの石版にステータスボードを乗せて下さい」
取り出された石版は教会の洗礼の間にあった台座と同じように、四角の凹みがある。しかし今度は凹みに金属のプレートが嵌め込まれており、何もない板状の部分にステータスボードを乗せるようだ。
まずはエリア、その次に俺がボードを乗せると、金属の板に字が浮き上がった。
「これでお2人の登録は完了致しました。我らテイマーギルドは新しき従魔術師のお2人を歓迎いたしますよ」
マシューはそう言ってから次の話題に入った。
「さて、本日は何やら情報提供にも来られたと聞きましたが?」
「ええ、この子の発見ですわ」
そう言って奥様が俺を見る、それにつられてマシューも見てくる。
「この子が、ですか?」
「ええ、私達4人の誰もが知らないスライムをテイムしていたのです。調べてみた所、まったく情報がなかったので、新種かと思われます」
「ほう……そうですか……」
奥様の言葉を聞いたマシューは明らかに興味を失ったようで、取り繕った笑顔とゴミを見るような目で俺を見ている。
……気が変わった、情報提供は新種のスライムの情報だけにしよう。
「報告してもよろしいですか?」
「ああ、いいとも」
「では……私が発見した新種と思われるスライムはクリーナースライムとスカベンジャースライムという種類です。これは従魔術の魔獣鑑定で確認しましたので間違いありません。特徴としてはどちらも汚れを好んで食べますが、クリーナースライムは汚れ以外、動物も人も襲いませんし、食べません。
スカベンジャースライムはクリーナースライムと似ていて人や動物を襲う事もあまりありません、しかし何でも食べます。特に腐った肉等を好みます」
「そうか……確かに聞いた事のない種類のスライムだ。その性質も珍しい、おそらく新種だろう。こちらで魔獣の情報に登録しておこう。情報提供、感謝する」
「いえ、偶然発見した事ですので」
「うむ……それではジャミール家の皆様、私は他の仕事がございますので、お見送りが出来なくて申し訳ありませんが、ここで失礼させて頂きます」
「こちらこそ、お忙しいところをありがとうございました」
「ありがとうございました」
「ありがとうございました」
俺とエリアは去っていくマシューに礼を言い、その後ギルドを出た。
「さて、これからどうしましょうか?」
「特訓ですわ! リョウマさん!」
いきなりどうした?
「どうしたんですか? 急に特訓だなんて」
「……悔しいですわ……リョウマさんはずっと研究を続けていたのに、リョウマさんは悔しくありませんの?」
「そうですね……別に褒められたくて研究をしていた訳ではありませんし、ああいう対応には慣れてますから特には」
前世の職場はああいう奴の溜まり場だったからな…あの程度の言葉でムカついていたら何も出来んさ。
「それに、僕もあの人には教えたくないと思ったので、与える情報は最低限にしてやりましたから。この程度なら何でもありませんよ」
「リョウマさん……」
「心配して、怒ってくれてありがとうございます」
そこで気づいた。俺、普通にしゃべれてる。ここ数日エリア達と過ごして大分マシになってたけど、さっきの奴で喋り方を思い出したのか? あの時から妙にスラスラと言葉が出て、まるで前世の会社みたい…………俺、社畜根性染み付いてるんだな……
「リョウマ君?」
「あ、はい、なんでしょうか?」
「どうしたの?」
「いえ……喋り方が完全に戻ったようです。昔はああいう人が周りに大勢居ましたから、喋り方が体に染み付いていたようですね」
「…………今まで通りにしなさい。そんなに畏まる必要は無いよ、我々には」
「そうよ。リョウマ君の今の喋り方、よそよそしくて嫌」
「子供が遠慮するでない」
「貴族同士のお話のようで、肩が凝ってしまいます。リョウマさんは前の喋り方の方が良いですわ」
そう言われてもな……まあいいか、気楽だし。
「分かった。普段通り、心がけます」
「家族のように接してくれてもいいんだよ?」
「お母さんって呼んでいいわよ?」
「まぁ、ゆっくりやっていけば良い。さてこれからどうするかの? 宿に帰るか?」
「リョウマ様を冒険者ギルドにも登録をしておいた方がよろしいかと思われます」
というセバスさんの言葉に俺とエリア以外が賛同した。
どうやらあの男が言っていたここのテイマーギルドに荷運びの仕事が多いという事は事実らしく、荷運びの仕事は従魔がスライムだけでは受けられない。そもそも従魔術師・召喚術師への仕事は他と比べて少ないので、大半のテイマーギルド所属員は冒険者ギルドにも登録してできる仕事を貰うそうだ。
そして俺達はそのまま冒険者ギルドに行ったが、冒険者ギルドのテンプレのように、破落戸に絡まれるような事は無かった。
ギルドランクはGからSの8段階、基本的には自分のランクと同じランクの仕事しか受けられないが、パーティーを組んだりギルドが複数のパーティーを集めて行う大規模な作戦では人数が多い分難易度が下がり、1つか2つ上のランクの仕事を受けられる事がある。
登録は10歳からなので年齢制限もクリア、ただし13歳までは各自の持つ戦闘能力をギルドがチェックして、完遂できると思われる物しか受けられないそうだ。たとえ自分のランクと同じでもである。
これは自制心の薄い子供が無謀なことをしないようにとの安全策だ。故に14歳からはその制限も注意も無くなるが、依頼に失敗しても自己責任、違約金の支払いは勿論、命を失う危険もある。
また、街などが危機に晒された時に、街に居た場合はギルドから招集がかけられる事がある。これを断ることは可能だが、正当な理由か多額の免責金が必要になる。どちらも無く断った、または逃げた場合罰則が与えられ、最悪の場合は冒険者資格剥奪となる。
とこれまたテンプレの説明を受けた後、今俺はギルドの裏の試験場で待たされている。13歳以下のため、戦闘能力チェックを受けるためである。しかしここで問題があった。
「皆さん、ボク、全力でやるべきですか?」
「そうですな…………テイマーギルドの方で正当な評価が受けられるかどうかに不安があります。ですからここでは全力でやっておき、自分の実力を示しておくべきでしょうな」
「うむ。それが良いじゃろ」
「何かあればサポートするわ」
「頑張ってくださいまし!」
「安心してやってきなさい」
と皆さんからの応援を受けた所で受付の人ともう一人、ガタイのいい男が訓練場に入ってきた。
「お前さんが今日の受験者か?」
「はい、リョウマ・タケバヤシです。よろしくお願いします」
「おう。で、そちらは付き添いですね?」
「そうじゃ、よろしく頼む」
「見学はご自由にどうぞ、しかし試験中の手出しは無用にお願いします」
「勿論じゃ」
そう言ったあと男は俺に向き直る。
「お前さんの得物は弓か。よし、早速始めるぞ。まずはあの5つの的にあの線から弓を射ろ、数は5本だ。1つの的に1つずつ射っていけ」
おれは指示された通り、指定された線に立ち、指定された的を狙う。
足を肩幅に開き、矢を番え、弓を引き、狙いを定めて射る。この作業を淀み無く、滑らかに素早くこなし1本、2本と的を変えながら射っていく。
慌てることなく、騒ぐことなく、ただただ静かに5本を射ち終えた後、全ての矢は5つの的の中心に突き刺さっていた。
弓に関してはこの世界に来てからの狩りで大分上達しているな。昔からやってはいたが、前世はここまで素早く射る事は出来なかった。
ちなみに俺の流派は現代の弓道ではなく弓術である、よって弓道の射技八節のように動きを止める事は無い。途中で止めようとすれば止められるが、俺の家に伝わる弓術の本質は如何に早く、正確に敵を射るかを突き詰めた弓である。昔は動きが一瞬でも止まると、次の瞬間親父の拳と罵声が飛んで来たものだ。
矢を打ち終わったあとそんな事を思いだしたが、試験中なのを思い出し、即座に試験監督の男を見る。彼は既に的の方に歩き出しており、一つ一つを間近で確認してから戻ってきた。
「全てど真ん中だ、動かない的とはいえやるじゃねぇか。次は動く的だ、向こうの壁を見ろ」
指し示された壁には両端に柱があり、その柱の横には穴が空いている。
「あれは300年前に居たショットガンという魔法武器を使ったケンゴって冒険者が考案した飛び道具の訓練用魔法具だ」
確実に転移者だな、おい。剣と魔法の世界にショットガン持ってきたのかよ。
「魔法武器が使えなくなってランクはC止まりだったが、この装置の考案で死ぬまでなんとかそれなりに裕福に暮らせたって話だ。それだけこの装置は訓練用として価値があるんだぜ?」
使えなくなった? まさか整備不良か弾切れか? ……絶対そいつあの3神の怒りをかっただろ! じゃなきゃ整備や弾を作る能力くらいは貰えただろうに……あの3神はまともに接してればそんな適当なサポートはしないぞ?
そんな事を思っている間も説明は続く。
「あの柱の穴から的が飛び出てくる、お前さんは出てきた的を打ち落とせばいい。出てくる的の数は100、お前さんに渡す矢も100本。どれだけ打ち落とせるかで成績が変わる」
つまり、クレー射撃を弓でやれという事か……
「わかりました」
「それじゃ、俺の笛が合図だ、頑張んな」
そう言って男は俺に矢筒を渡して後ろに下がった。俺は弓を構えて合図を待つ。




