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第一章 9話

 ~Side 竜馬~


 雨は止み、土砂崩れの除去作業が始まった。周囲では土魔法を使える護衛が大きな岩を、石・岩を崩す効果のある『ブレイクロック』で崩したり、土を固める『ロック』の魔法で固めて運びやすくして除去していた。


『ブレイクロック』は岩が削れて土になっていくイメージが、『ロック』は土が集まり押し固められるイメージで発動する。


 俺はと言うと、森の洞窟を掘った時になんとなくやってみたら出来てしまった『ブレイクロック』と『ロック』の合体魔法、『クリエイト・ブロック』により、多量の土と岩を同時にレンガ大の石材に変えてスライムに運ばせていた。


 他の人達は、土は土で岩は岩で別々に魔法をかけているが、おれは2つを同時に除去しているので作業速度が段違いに早い。更に出来上がったレンガを運ぶのは バケツリレーのように並んだスライムによる流れ作業なので、俺はどんどん魔法をかけるだけという凄まじい速さで進んでいく。そんな俺を見て一人の護衛の男性が声をかけてきた


「ちょっと待ってくれ」

「何でしょうか?」

「リョウマ君、だったね? その魔法、一体どうやってるんだ? 俺は土魔法使いと言っても本業は剣士だからそれ程魔法に詳しい訳でもないんだが……土と岩を同時に処理できる魔法なんて見たこと無いんだ。教えてくれないか?」


「これは『クリエイト・ブロック』という魔法です……『ブレイクロック』と『ロック』が使える人なら多分使えますよ……ブレイクロックは岩を土に、ロックは土を岩に変えるでしょう?」

「そうだな」


「だから、岩から土に、そして土から岩になるまでを1つの工程とイメージして魔法をかけてください。……そうすれば魔法がかかった範囲にある岩は土に……土は土のまま次の岩になるところで全部一気に岩になります。……この時1つの岩の大きさを事前に決めておくと、その大きさに出来ます……僕の場合はスライムに運ばせるからこのサイズです」


 なるほどと頷いた男性は、近くの岩に向けて実際にやってみる、すると出来上がった岩の大きさは少しばらつきがあるが、見事に岩と土を同時に持ち運べる大きさにできたようだ。


「おおっ! 本当に出来たぞ! 一度にできる量と作る岩の大きさを同じにするには慣れが必要そうだが、消費魔力は別々に行うより少ないようだ。ありがとう、リョウマ君」

「いえ、お役にたてたなら……良かったです」


 クリエイト・ブロックを他の者にも教えて良いかと聞かれたので、俺が良いと言うと男性は作業をしている他の人の所に駆け寄ってクリエイト・ブロックを教えていた。


 その結果今日の作業が終わるまでにクリエイト・ブロックを完璧に物にした人が1人、それなりに使えるようになった人が3人になり、大幅に全体の作業速度が上がった。ちなみに完璧に物にした1人は俺に話しかけてきた男性で、ゴルチェさんという人だ。


 今日の作業は終了という指示が出て、俺がテントに戻ると奥様が抱きついてきた。


「ふがっ!」

「おかえりなさ~い! 頑張ったわね! リョウマ君!」

「は、離して……く、くびぃ……」


 締まってる! 締まってるから! 頼むから……


「奥様! 少々危険な位置を締めてます! お離し下さい!」

「え? あっ!」

「ゲホッ! はぁ……」

「ごめんなさい!大丈夫だった!?」

「はぁ……はい、大丈夫です……あ、えっと……」


 なんて名前だっけな……奥様を止めてくれたこのメイドさん。確か……


「リリアン……さん?」

「は、はい!」

「ありがとうございました。助かりました……」

「いえ、ご無事で何よりです。お食事の用意が出来ておりますが、いかがなさいますか?」

「いただきます」


 そう言うと、『ではこちらへ』と奥の部屋のテーブルへ案内された。


「やぁリョウマ君、頑張ってたみたいだね。お疲れ様」

「食事は出来るのか? 無理はするでないぞ?」

「体調は大丈夫です」

「ほう、かなり魔法を使っていたように思ったが?」

「凄かったわよ、あの魔法。クリエイト・ブロック、だったかしら?」

「そうです」

「リョウマ君のあの魔法とスライム達のおかげで効率が上がって、更に護衛の土魔法使いにもあの魔法を教えてくれたおかげで予定よりだいぶ早く土砂の除去が終わりそうよ」

「それは良かったです」


 そこで料理が運ばれてきたので、皆で食べ始める。すると、エリアリアがこう言って来た


「リョウマさん、リョウマさんの魔力はいくつありますの?」

「へ?」


 そういや、俺、魔力どれだけあるんだろうか……この世界、ステータスって自分で見られないんだよな……今までは全然気にしてなかったけど。この世界に来た当初、魔法に興奮して使いすぎて、魔力切れになったから無限って訳じゃ無いだろうが……


「どうしました?」

「分からない……です」

「え!? 普通は10歳で1度は教会に……そうでした、リョウマさんは森に住んでいたのでしたね……それでは今までどうやって限界を知っていましたの?」

「体調と感覚で」

「それで、大丈夫なのですか?」

「慣れれば問題無いです」


「普通の家庭では10歳の誕生日に教会に行き、ステータスを計測して貰うのじゃ。その際、魔力の数値を見て将来魔法使いを目指すかどうかを決めるんじゃ。 我々貴族などは5歳の誕生日にやってしまい、早めに訓練をさせるがのう。しかし、リョウマ君の魔力も低いという事は無かろう。あれだけ魔法を連発し、魔力切れを起こしていないならなかなか高い魔力を持っている筈じゃ」

「もしかしたら、エリアリアと同じくらいの魔力を持っているかもしれないね」

「そうでしたら嬉しいですわ」

「?」


 何でお嬢様が喜ぶんだ? そう考えているのに気づいたセバスさんが教えてくれる


「お嬢様はとても高い魔力をお持ちで、立場もあり、幼い頃から周りから特別扱いを受けていたのです。それにより気軽に話しかけてくる友人を作り難かったのです」

「……この国の宮廷魔道士で最も魔力の強い方が6万を少し超えた位なのに対し、私の魔力は20万もありますの」


 20万か……このお嬢様、地球から転生してきたんじゃないだろうな? 神様は前にチートをつけて送った奴がいるって言ってたし。


「そうですか」

「そうですか、って、驚きませんの!? 宮廷魔道士の4倍ですわよ!?」


 そう言われても、俺もチート野郎だしな……色々と。


「別に」

「別に、ですの……」


 魔力が6万だろうが20万だろうが変わらないだろうに。そう思っていたらお嬢様の表情が急に不安げになり、こう聞いてきた。


「……私が、怖くありませんの?」

「何故です?」

「私は……とんでもない量の魔力を持っていますのよ………?」


 だからどうした


「お嬢様は、その魔力で悪い事をするのですか?」

「しませんわ!」

「人を傷つけたいのですか?」

「そんな事ありません!! わたしは……」

「なら、何が怖いのですか?」

「えっ……?」

「悪い事をするつもりは無い……人を傷つけるつもりも無い……そんな人の……何が怖いのですか?」

「それは……でも……」


 こりゃ昔何かあったんかね……?


「では……お嬢様は僕が怖いですか?」

「えっ!?」

「僕は……盗賊……大勢の人を殺しましたよ? 全部で30人は殺しました……動物も殺しました……魔獣も殺しました………挙げ句の果てに……小金貨700枚の賞金首も殺しました……全部生きるためでしたけど、僕が殺したのは事実です」


 ああ……殺したなぁ……日本じゃ大量殺人鬼だよ、俺。間違ってたとは思わないがな?躊躇ったら俺が死んでたんだ。でもよ、俺が殺したって事は事実だ。つまり……


「お嬢様の目の前にいるリョウマという人間は……それだけの人を殺せる力を持っているんです……お嬢様は、そんな僕が怖いですか?」

「そんな訳ありませんわ! だってリョウマさんは……! あ……」


「同じです……僕も、お嬢様が怖いとは思いません……魔力が6万でも20万でも……変わらないんです……大体、人間なんて簡単に死にます…… 20万どころか6万も魔力要りません……下級魔法のファイヤーボールでも人は殺せますし、下手したら転んで頭を打っただけでも死んでしまうんですよ?」


 クシャミで死んだ人間(俺)も居るしな……


「ですから僕は……お嬢様を怖いと思いません」

「本当ですの……?」

「はい」

「本当に、本当ですの?」

「はい。将来僕がどんな生き方をするか分かりませんが、……少なくとも……お嬢様の魔力を理由にお嬢様から逃げるような事はありませんよ」

「うっ、ううっ……ぐすっ」


 俺がそう言った直後、お嬢様が泣き出した。


 うぇっ!? ちょ、ちょっと待って、落ち着いてくれ……って、声でねぇ! どもり、カタコトどころじゃなく一言も出なくなった! ってそんなこと考えてる場合じゃねぇ! そう考えてるうちにお嬢様本気で泣いてるじゃねぇか! ……12歳の女の子泣かせちまったよ、本当は42歳のオッサンが……どうすりゃいいんだ、これ。


 その後、俺はお嬢様が泣き止むまで何も出来なかった。今は目が赤くなったが、お嬢様は既に泣き止んでいる。


「リョウマさん」


 まだ若干混乱していた頭が、お嬢様の声に反応した。俺は未だに何も言えないままだが、お嬢様の方を見た。


 するとお嬢様は深々と頭を下げ、俺に礼を言った。


「ありがとうございます。リョウマさんの言葉のおかげで、心が楽になりましたわ。それで……」


 お嬢様は大きく息を吸って。


「私と、お友達になって頂けませんか?」


 そう言った。それにたいして俺はかろうじて返答する


「お嬢様が、良いのなら……よろこんで」

「これからは、お嬢様ではなくエリア、と呼んで下さいまし。お友達でしょう?」

「エ、リア」

「はいっ!」


 そう言って花のような笑顔を見せるお嬢様………もといエリア。とりあえず丸く収まったが、俺、言いたい事言って最終的に状況に流されただけじゃないか? ………………まあいいか。エリアが嬉しそうだし、悪い事でもない。ここは流れに逆らうほうが野暮だな。


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