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第一章 8話

 翌日


 ~Side 竜馬~


 結局ケレバンの街では教会に行かなかったが、目的地であるギムルって街にも教会はあるらしいし、そっちでいいだろう。持ち運べる石像作ったしな。


 こうして俺達はのんびり馬車の旅と思っていたんだが……


「少し寒いですわね……」

「雨だからのぅ」

「この季節にこんな土砂降りになるのは珍しいのだけど」

「運が悪かったね、エリアリア」


 どうやら俺達は季節はずれの土砂降りにあったらしい。久しぶりだな、ここまではっきり運が悪いのは。この世界に来てから、地球にいた頃とは違って運が悪いと思うような事は起こらなかったし。馬車の中だし、土砂降り程度ならまだ運がいいほうか?


 って、お嬢が少し震えてるな。確かアレがあったはず……


 俺はアイテムボックスの中から1着の毛皮のコートを取り出す。毛が内側にあり、外側に布が貼ってあり一見裏返しに見えるコートだが、外側の布にはスティッキースライムの粘着液を塗って乾燥させてある。


 この加工をすると粘液が水を弾いてレインコートみたいになるんだ。偶然乾燥した粘着液に触れて、スベスベし てたのに気づいてやってみたら大成功した。これのおかげで雨の中の狩りが楽になったんだよな~


「お嬢様、これ、どうぞ。見た目は悪い……でも暖かいです」

「ありがとうございますリョウマさん。お借りしますわ」


 って受け取ったはいいが裏返しだと思ってるな。


「裏返しじゃないです。表面に少し加工してますから、そのまま着ないと加工の意味が無いです。……馬車の中では意味無いですけど」

「あら、そうでしたの?」

「これは一体どんな加工をしたのですか? これほどスベスベとした手触りは初めてにございます」

「スティッキースライムの粘着液を塗って……乾かしました。水が染み込まない……雨を弾きます」

「スティッキースライムの粘着液にそのような効果があるのですか?」


 え、まさか知らなかった?


「知らなかったですか?」

「スティッキースライムの粘着液の使い方としましては、接着剤としての用法しか存じません。それに雨具と言えば何枚も布や毛皮を重ねたローブのような物しかありません。これほど薄い雨具を見たのも初めてにございます」


 そうなの? 何か、ラインバッハ様と奥様の目が輝きだした。これも新発見かよ! どんだけ研究されてないんだよスライムって


「その雨具、少し試させて貰っても良いかね?」

「試すなら……」


 俺はもう一度アイテムボックスを発動して数枚の布を取り出した。


「加工済みの布。薄いので水を通さないのがよくわかります……ボロボロですけど、クリーナースライムできれいにして加工したから汚くはないです」


 元は盗賊の服の切れ端やゴブリンの腰布だから、ボロボロなのは見逃して下さい。


 そんなことを考えつつ布を差し出すと、ラインバッハ様と奥様だけではなく、ラインハルト様とセバスさんまで布を手にとって自分の手をくるみ、馬車の小窓から外に手を出し始めた。


「おお! 本当に水を弾いておるぞ!」

「凄いわ、全然水が染み入ってこない」

「多少雨粒で冷たさはありますが、内側に毛皮を貼れば快適に過ごせそうですな」

「これは売れる!リョウマ君、僕らと協力して雨具の商品開発を……」

「失礼します、何かございましたか?」


 4人が布の撥水性を試していると、アローネさんが来て馬車の扉を開けた。どうやら馬車の外、後部に座っていて、何か用がある場合手を出して合図する手筈だったらしい。


「いや、何でもないよ。リョウマ君が開発していた雨具の効果を確かめただけだ」

「そうでしたか、それでは失礼いたします」


 俺はそう言って扉を閉めようとしていたアローネさんの足元が濡れているのに気づいた。どうやら後部の座席には足元までカバーする屋根は無いようだ。


 俺は慌ててアローネさんを呼び止めつつ、アイテムボックスから盗賊の盗品らしきカーテン(防水加工済み)を取り出す。


「ちょっと待って……アローネさん」

「どうしました?」

「これ、足元に……雨、水通しません」

「これをお借りして宜しいのですか?」

「濡れると寒いです……それに長時間濡れても水が染みない事、実証出来ますから」

「ありがとうございます。お借りします」


 アローネさんは笑顔で俺に礼を言い、去っていった。


 それから数時間は何事もなく、ラインハルト様と防水布を新しい雨具として販売する事が決まり、更なる商品開発案を場車内の全員で考えていた。


 俺は現代の知識を活かし、レインコートや傘などを提案。ちなみに最も俺以外の5人が反応を示したのはテントを防水布で作る事だった。この世界にもテントはあるが、防水ではないので雨が降ると雨漏りの可能性があり、大雨だとほぼ確実に雨漏りが起こるらしい。


 他にも革製の水袋の代わりに防水布を使えば、水が入ってない時には折り畳めてコンパクトだなんだと、渡した実験用の布をみんなで弄りながら考えていた。


 ようやくテンプレ異世界って実感がしてきた! ていうか、今気づいたら、俺はいつの間にか内政チートの方向に行ってるな。俺って武力と魔法チートじゃなかったっけ? 現代知識および商品=この世界ではチートって事か?


 商品開発に疲れて気が散りそんな事を考えていたら馬車が止まり、護衛からの連絡が来た。


「お館様、どうやらこの雨で崖崩れが起こっているようです。遠目からこの先の道が塞がれているのを確認しました」

「なんだと? 本当か?」

「はい、完全に道がふさがっています。かなり大きな岩や木も倒れていました。このままでは通れません」

「迂回は?」


「ここからだとかなりの遠回りになるか、未確認ながらそこそこ大きな盗賊団が出るという情報のある道しかありません。天気予測スキルを持った者が言うにはあと数時間で雨が止むそうですので、崖崩れから離れた位置で野営の準備をしつつ雨が止むのを待ち、今晩と明日にかけて土魔法で土砂の除去作業に当たるのが最も早くギムルに到着できるかと思われます。お館様の判断を仰ぎたく……」


「そうだな……長旅は旅に慣れていないエリアリアにはきついだろうし、危険がある道は避けたい。お前の判断を採用する」

「ありがとうございます。早速作業に取り掛かります」


 するとまた馬車が動き出した。もう少し先に少しだけ雨宿りができそうな木があるそうだ。土砂降りの時に木のそばってやばい気がするんだが……まぁ、雷は鳴ってないし、大丈夫か?とりあえず、木から最低2mは離れておこう。そうすれば雷に対する安全性は高まる


 5分ほどでまた馬車が止まり、周囲が慌ただしくなる。それとともにアローネさんが入ってきた


「現在、急ぎ野営の用意をしております。もうしばらくお待ちくださいませ。それからリョウマ様、この布、ありがとうございました。もう一人のメイドのリリアンも大変感謝していました」

「どういたしまして……水漏れ無かったですか?」

「ええ、私が見た限り、一滴もございませんでした」

「それは凄い、この布は長時間の使用にも耐えうるのか!そうだアローネ、リョウマ君とこの布を使った雨具の開発・製造・販売を行う事が決まった。試作品ができたら意見を聞かせて欲しい」

「それは良うございました。この布で作り上げた雨具なら、間違いなく人気が出るでしょう」


 そう言って笑顔を浮かべるアローネさんだったが、俺の目にはアローネさんの後ろで濡れ鼠になりながら作業をする護衛の人達が見えていてそちらが凄く気になる。


 何か元地球のブラック企業にいた身としては、人が働いている時にボーッとしていると、それが彼らの仕事だと分かっていても、下手に素人が手を出すと邪魔なのが分かっていても申し訳なくなって何か手伝いたくなる……そういや結界魔法に雨避けの結界があったな、長いこと使ってなくて忘れてた。あれなら作業の邪魔にはなるまい!


「結界魔法、使っていいですか?」

「突然どうしたんだい?」


 いかん、唐突過ぎた。事情説明せずにいきなりそう言っても分からないよな。


「外、濡れてる人、居ます……雨避けの結界……使うと雨を防ぎます。作業楽です」

「なるほど、それはありがたいね。やってくれると彼らも助かるよ」


 許可を取ったので、人の集まっている位置に早速結界魔法を発動させる。


「彼らを包み、彼らに注ぐ雨を防ぐ盾となれ『雨避け』」


 俺が呪文を唱えると、作業をしている人達を包み込むようにドーム状の結界が張られ雨を防ぐ。


 突然雨が止んだ事に結界内の人は驚くが、カミルさんが結界魔法であることに気づき、手を振って礼を言ってきた。それに続き他の人たちも礼を言ってきたが、俺は手を振るだけにとどめ、次の対象を見定める。


 一度では全体を包むような結界は張れなかったので、まだ4箇所ほど人の集まっている位置に結界を張らないといけない。先ほどと同じように呪文を唱え4箇所に結界を張って、ついでに馬と馬車の周りにも結界を張った。


 しばらくするとテントの用意ができたので、ゼフさんが俺達を呼びに来た。


「お待たせいたしやした、テントの用意が出来やしたぜ。あと、坊ちゃんには他の連中が礼を言ってましたぜ」

「どういたしまして」

「雨はあとどのぐらいで止むんだ?」

「あと2時間程だとスキル持ちは言ってますんで、止みしだい、土魔法で土砂の除去を始めます」

「わかった、それまでは交代で休みを取れ、土魔法使いは大仕事になるから長めに休ませてやれ」

「了解です」


 そう言って命令を伝えにいくゼフさんを見送って、俺達はテントの中に入る。テントはなんと、とても豪華なテントで中が4部屋に区切られていた。


「ふぅ……うっ、イタタ……」

「エリア、まだ馬車に慣れない?」

「すみません……」

「いいのよ、こればっかりは仕方ないわ」

「今日は雨で土が緩かった。普段より揺れたから仕方ない、ゆっくり休むと良い。リョウマ君もな」

「はい、しっかり休んで、後で頑張ります」


 タダで馬車に乗せて貰ってるし、宿代も世話になってるし、このくらいはしなきゃな。俺の訓練にもなるから良いだろう。


「頑張る? 何をじゃ?」

「土魔法で、土砂崩れ……取り除きます」

「護衛にやらせるから、君は休んでていいのじゃよ?」

「沢山、お世話になってます。自分の為にもなります。やらせて下さい」

「ふむ……そう言うなら手伝ってもらおうかのぅ。ただし、疲れたら休むのじゃぞ?もう結界魔法を連発しておるし、魔力切れは苦しいからのぅ」


 ああ、それを心配してくれていたのか……本当にいい人だな、ありがたい。


「ありがとうございます、気をつけます」


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