表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
101/176

第三章 40話

2014/7/7の投稿です。次回は7/10になります。

 俺は地上に戻り地下に続く入口を元通りに岩で塞いだ。そして外の空気を吸おうと思って調剤室から出たその時、足元が大きく軋んで大きな音を立てた。同時に俺はバランスを崩しかける。


「うおっ!?」


 ……床板を踏み抜いてしまった……とっとと外に出よう、危なそうだ。


 俺は家の外に出て暫く外の空気を満喫した後でディメンションホームに入り、大小大きさの違う麻袋が2つ、剣や槍等の武器が入った樽が1つ、大人が腕を広げて抱えられる大きさで金属製の箱が4つある遺産の中身を確認する。本棚にも遺産はあるが、そちらは古い本が100冊以上あると言う事が分かっている。本棚の中身だったし、当然といえば当然だな。


「まずは中身の分かる武器の樽から行くか……といっても、これはあまり期待出来そうにないな」


 長い間地下室で放置されていたからか、樽の中にある武器は錆び付いている物が結構ある。武器を全て取り出して丁寧に調べていくと、無事だったものは8本だった。


 内訳は剣が3本、槍が2本、斧が2本、戦槌が1本。武器としては一級品の様なので、剣と槍はともかく斧と槌は売ってしまおう。俺もスライムも使えないからな。


「次は麻袋だな」


 俺が麻袋の中身を確認していくと、大きな袋には魔石が詰められていた。属性は無、水、土、木、毒、そして光属性の魔石がある。


「光属性ってかなり貴重な魔石だったよな? 流石に少ししか無いけど、凄いな……今の所使い道は無いけど、杖作りにも使えるだろうしとっておこう」


 そう言いながら次の袋を開ける、その袋は魔石が入っていた袋より小さくまるで給食袋の様だ。袋の中には種類が違う金属のインゴットが3本入っていた。少し考えたが何のインゴットなのか分からない。色合いからすると鉄、銀、銅等の普段よく使われる金属ではないと思う。


 とりあえず袋の中から1本、淡い青色を放つインゴットを取り出して無属性魔法の鑑定で調べた俺は、鑑定結果に驚いて手に持っていたインゴットを取り落としそうになる。


 鑑定結果はこうだった。


 ミスリルのインゴット

 ミスリル鉱石を精錬し、純度を高めてインゴットにした物。

 金属だが非常に軽く魔力を通し易いが、欠点として加工が難しい。


 ファンタジー金属来た!!


 これがミスリルか……これで武器を作って貰ったら、魔闘術を使いやすい武器が出来るかな? 今のスライム刀のままでも問題は無いけど、興味はある。


 とりあえずこれは置いておいて、続いて次のインゴットを鑑定する。今度は黒っぽくてやけに重たいな……


 アダマンタイトのインゴット

 アダマンタイト鉱石を精錬し、純度を高めてインゴットにした物。

 非常に高い強度と耐蝕性を持つ。重くて加工が難しく、魔力を通しにくい。


 これもファンタジー金属。使うとしたら武器か防具だな。間違っても杖には出来ないと思う、杖を打撃武器として使うなら別かもしれないけど、それなら最初からメイスにでもした方がいい。


 これも置いておいて次に行く。今度のインゴットは他の2本より半分位の大きさで金色に輝いている。金の延べ棒じゃないよな?


 調べてみると、やっぱりファンタジー金属だった……


 オリハルコンのインゴット

 オリハルコン鉱石を精錬し、純度を高めてインゴットにした物。

 高い強度と高い魔力伝導性を併せ持つ金属。採掘量が非常に少なく、加工は非常に難しい。


 ミスリル、アダマンタイトと来てオリハルコンか……まぁ武神と賢者と呼ばれた2人の遺産なのでこれくらいの物があってもおかしくない。……驚きはしたが、それは仕方ないだろう。


 俺は前に一度だけギムルのディガー武具店で話を聞いたから知っていたが、この3種類の金属のどれかを使って武器を作ると最低でも小白金貨数枚の値打ちがつく武器になるらしい。滅多にお目にかかれるものではない。


「……このファンタジー金属、もしかしてこの樹海で採掘できるのか?」


 そんな事を考えていたら袋の中からカサッと音がして、一枚の紙が入っているのに気づいた。その紙には祖父が書いたと思われる地図だった。だいぶ色褪せているが、下の方にはこう書かれている。


 “手元にあるのはこれだけだ、もっと欲しければ勝手に取りに行け”


 どうやらこの地図はミスリル、アダマンタイト、オリハルコンが採掘できる洞窟までの道を示す地図らしい。貴重な鉱石の在り処を教えて貰えたは良いが、俺は素直に喜べない。


「普通は喜ぶ所なんだろうが、今のままじゃ行けないな……」


 その地図が示す先は、間違い無くシュルス大樹海の中心部に踏み込んでいる。アンデッドスネークみたいな魔獣がウヨウヨしてる魔窟に立ち入るにはまだ実力が足りない。つーか、祖父はそんな所に日常的に踏み込んでいたのか。武神の名前は伊達じゃないという事だろうな……


「とりあえず今すぐ必要な物でもないし、行くのはやめておこう。少なくとも、ブラッディースライムの奥の手無しでアンデッドスネークを簡単に仕留められる位の実力を付けてからにしよう。うん」


 俺は地図を大切にしまっておく。


「さて、気を取り直して次は箱だな。確か、手紙には魔法道具だと書いてあったけど」


 箱を開けてみると4箱の内3箱は大量の本と薬品の調合に使う道具で、残りの1箱は色々な物が雑然と詰め込まれていた。


 祖母の物である本と道具は整理整頓されとても丁寧に箱に収められていたが、最後の一箱はゴチャゴチャし過ぎていて何が入ってるか良く分からない。


 最後の一箱をよく見てみると食器やそれほど高そうではないアクセサリー……あっ、荷物の隙間に無理矢理金貨が詰められている……この箱だけとにかく入るだけ入れたって感じだな。多分、これが思い出の品なんだろう。


 そして中身を調べていくと、箱の大きさと入っていた物の量が合わない事に気がつく。大体3倍位の物が入っている。それによく見てみると、中に入っていた物に長年放置された様子が無い。


 例えば箱の中に小さなエメラルドの指輪が入っていたが、その宝石には劣化が見られない。その他にも先程の袋の中にあった地図や手紙、本棚の本は色褪せていたのに対し、箱の中にあった日記らしき本は色褪せをしていない。


「外見より多く物が入って、なおかつ入れた物が劣化しない魔法道具……これ、普通に凄い物じゃないか?」


 この世界の魔法道具には空間魔法を込められた道具もあるが、それは魔法具の中でも貴重な部類に入る。なぜなら、空間魔法を物に込められる付与魔法使いが少ないからだそうだ。しかし、例え空間魔法のアイテムボックスを込めたとしてもそこに劣化防止なんて効果は無い。アイテムボックスは物を収納できる空間を作り出す、ただそれだけの魔法だ。


「物を保管するという一点に関して、これ以上の物は無いな。有効に使わせてもらおう」


 更に、箱の底の方には鋼ではなくアダマンタイトやミスリル製の武器が何本も入っていた。どうやら祖父は本当に良い武器は箱の中に入れていた様だ。使えない武器は置いておいても勿体無いけど、これほどの物だと売るにも困るな……下手に売ると悪目立ちしそうだ。


 魔法道具の箱があるから置いておいても劣化はしないけど、下手にしまい込んでるとメルゼンの槍みたいに何年も放っておく事になりかねないし……俺かスライム達が使える物は残しておくとして、太刀や槍は出処を秘密にする条件をつけてアサギさんやジェフさんに安く譲ろうか。


 こうして遺産の確認を終えた俺は、ディメンションホームの外に出る。外は日が暮れかかり、綺麗な夕焼け空になっていた。


「しばらく休んで、夕飯にするかな」


 ついでにミミックスライムの生態を研究しよう。幸いここにはアンデッド以外の魔獣はいないようだし。


 そう思いついた俺は何となくテンションが上がり、ミミックスライムをディメンションホームから出す。




 まずは餌の確認からだ。俺はグレイブスライムに保管して貰っていた獲物を出して貰う。会った時に俺を捕食しようとした所を考慮するとまず肉食だろう。一応野菜や毒草も用意する。


 1つ1つ食べるか食べないかを聞いてみると肉も野菜も食べられる事が分かった。どうやらミミックスライムは雑食の様だ。ただし近づいてきたアンデッド系の魔獣、つまり腐った肉は食べない。そして毒草も食べない。食べる物は人間や普通の生物に近いか。


 なお、ここで面白い事が分かった。肉を食べると確定したのでラプターとガロモスアリゲーターの肉を用意すると、ミミックスライムはガロモスアリゲーターの肉に飛びついて食べ始めた。


 そして肉を食べた次の瞬間、ガロモスアリゲーターに姿を変え始めた!


「ミミックスライムの擬態にも食べ物が関係してるのか! 相手を食べる事で擬態するんだな? そうだとしたら擬態にはどれだけ食べる必要があるんだろうか?」


 そう思った俺は、試しに自分の髪を1本引き抜いてミミックスライムに与えてみた。しかしこれだけでは擬態出来ないようだ。ならば、量を増やしてみよう。


 アイテムボックスから裁縫に使うハサミを取り出し、前髪や後ろ首にかかっていた髪を適当に切り落とす。髪も若干伸びてきていたから、これぐらいなら良いだろう。丸坊主にするほど量が必要ならギムルに戻ってからになるな。


 この体が12歳なのでまだ髭が生えておらず髭を剃るためのカミソリを持ってないし、出かけた俺が帰ってきた時丸坊主になってたらみんな驚くだろう。この国では丸坊主とかスキンヘッドという髪型はあるけど、そんなに一般的じゃない様だ。街を歩いていてもそういう髪型の人は殆ど見ない。南の方の国ではそこそこ居るらしいけど、少なくともこの国では珍しい。


 あ、あと腕や足まで食べさせなければならないなら勿論無理だ。流石にそこまで身を削って実験しようとは思わない。




 出来ればこれで擬態を成功させて欲しいと願いつつ、切った髪をミミックスライムに与える。すると、ゆっくりとだがミミックスライムが体の形を変えて、俺の姿になる。どうやら成功したようだ! しかし……


「何で全裸!?」


 ちょっ! 自分じゃないけど、他に人は居ないけど、これは恥ずかしい! 何で裸!? あの男の時は鎧とか着てたじゃないか!


「とりあえず服着ろ、服!」


 俺は慌ててアイテムボックスからズボンとシャツを取り出してミミックスライムに渡そうとする。ミミックスライムは服にゆっくり手を伸ばし、歩み寄ろうとした所で何故か思い切り倒れ込んだ。


「どうした!?」


 ミミックスライムに駆け寄って調べると、体調は悪くない様だ。しかし、立ち上がれずにその場で転がったりもがいたりしている。


 その後時間をかけて調べてみた所、どうやら今のミミックスライムは俺の姿に擬態できても歩く事すら出来ないらしい。体と能力を十全に発揮するためには時間をかけて擬態した体に慣らす必要があるのかもしれないな……


「冒険者に擬態してた時に動けないふりをして、俺が抱えた時に人間の動きじゃない動きで襲ってきたのはそれでか……しかし、夕焼け空の下全裸で、まるで子供が駄々をこねる様にもがく自分を見るのは嫌だ……他人に見られなかっただけマシか」


 ちなみにその後ミミックスライムは服を着た。というか、服を食べて体の表面を服に擬態させていた。見た目は勿論、手触りまで完璧に擬態していた。おそるべし、擬態Lv10。


 しかし一度擬態をやめさせてからもう一度俺に擬態する事は出来なかった。おそらく擬態対象記憶スキルのレベルが低いか、記憶に必要な条件があるのかもしれない。


 そう考えた所で暗くなってきたので、ディメンションホームの中に入って夕食の準備を始める。


「今日のメニューはパンと……そうだ、アレにしよう」


 俺はグレイブスライムに先日倒したアンデッドスネークを出して貰う。そして頭のない体を解体して骨と皮を取り除き、拍子切りにした肉をひと切れ焼いてみる。


 事前に調べた所によるとアンデッドスネークは再生能力を十全に使うため体内に栄養を蓄えているらしく、肉は脂が乗っていて非常に美味になっていると聞いたので食べてみることにした。


 焼き始めて数十秒で火にかけられた肉から油が滴り始め、徐々に焼き鳥の様な香ばしい匂いがディメンションホームの中に充満していく。


「美味そうだな」


 こんなに良い匂いがするなら、もっと早く思い出せば良かったな……


 表面に焼き色がついた肉を何もつけずに一齧りしてみる。すると肉は簡単に噛み切れる程柔らかく、溢れる程の肉汁を出して口の中で溶けていった。


「おお、本当に美味い! 肉汁がたっぷり出て、旨みがしっかりある。そう言えば、アンデッドスネークの肉は滋養強壮や美容に良い食材とも聞いたな。美容って事は、この食感コラーゲンか何かか? コラーゲン鍋とか食べた事無いから分からないけど……まぁ、美味くて安全なら何でもいいか」


 そう考えて俺は夕食用に更に肉を焼いていく。肉が美味いから調味料は塩を少しで良いな。今日のメニューはパンとアンデッドスネークの塩焼きにサラダだ。


 なお、夕飯を食べた後に頭だけの状態から再生したアンデッドスネークの体も解体し、塩焼きにして肉を食べるスライム達に振舞ったが、ひと切れ味見をした時に肉質が少し落ちている事に気がついた。再生にエネルギーを使ったからのか若干肉が固くてパサつき、味も落ちていた。それでもまだ十分美味い肉だったが、さっきの肉を味わってからだと若干物足りない気がする。


 ちなみにスライム達はそれでも喜んで食べていた。それからミミックスライムは焼いた肉では擬態しない様だ。擬態するためには生肉である必要があるのか、これから時間をかけて調べていこう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ