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神様

明人は、約束通りに三人を迎えにその屋敷へと、数人の軍神達と向かった。実は、博也に自分を重ねていた…ここへ来たばっかりの時は、飛べないし自分が神なんて知らなかったしで、回りがあまりにも違って見えてつらかったものだ。

その屋敷に到着すると、既に三人は着物に着替えてそこに立っていた。着物が慣れないのか、博と博也はぎこちない。その様子まで自分と同じだと思った明人は、思わず表情が緩んだ。

「では、我が博也を、この軍神は博殿を抱えて連れて参る。そのうちに博也は飛べるようになるだろうが、博殿は無理であるから、宮で自転車を貸し出してもらえるだろうと思う。」

博也は驚いた顔をした。

「オレも、飛べるのですか?」

明人は苦笑した。

「その気の量なら飛べるであろう。では、参る。」

明人は博也を小脇に抱えて、飛び上がった。

博也が、身を固くしている。落とされたらどうしようと思っていることだろう。明人は懐かしくて、そのまま宮の入り口に着くまで自分の時のことを思い出していた。

入口に着くと、侍女が二人待っていた。

「杏樹。待っててくれたのか。」

明人が侍女の一人に言った。相手は頷いた。

「王からの命で。そちらが、新しい侍女のかた?」

明麗が進み出て頭を下げた。

「明麗と申しまする。よろしくお願い申します。」

博と博也が驚いた顔をした。明麗は、明人から見ても完璧に神の女だった。碧殿の宮で侍女をしていたのだから、神の世は完璧だろう。人の世に下って人のふりはしていたものの、恐らくこれが明麗本来の姿なのだ。杏樹が頭を下げた。

「我は杏樹。王付の侍女でありまする。では、案内致します。こちらへ。」

明麗は、博と博也に目配せをしてそれに付いて、宮の方へと入って行った。明人は、学校の方を指した。

「この宮の入り口から宮に向かって左が軍の宿舎と軍の施設、右が学校になっておる。主らはこちらだ。」

玲が、にっこり笑って立っていた。

「明人、連れて来てくれた?」

玲が、学校の入り口から出て来た。

「玲、お前が担任か?そう、二人だ。こっちが博殿、こっちが博也。頼んだぞ。」

玲は頷いた。

「王からも急いで教えてくれと言われているんだ。仕事先を振り分けるのに、何かお考えがあるようだったし。じゃ、行こうか。」

玲は二人に頷き掛ける。

二人は少し心細げに玲について学校へ入って行った。


博也は勉強が進むにつれて、神の世の事がよく分かって来た。

まるで人の昔の封建制度のようだ。しかし違うのは、やはり神は神であって、力が全てで、その力とは生まれながらに持っている、どうしようもないものであるということだった。

不公平ではないかと思う所もあったのだが、その力と能力によってきちんと分けられた責務があって、皆がそれを守り、王に無心に仕えていた。王は、生まれながらの王であって、そしてその力ゆえに皆を守り、威張り散らすなどなかった…そのような王は、この世界では排除されて行ったのだった。

神の王は、本当に王らしい王だと博也は思った。

驚いたのは、この月の宮の王は元は人であったという事だった。

そして、龍王に助けられてこの宮を作り、人の世で生活していた神を受け入れる場として運営し始めたのだという。なので、ここの図書室にパソコンがあった時は本当に驚いた。自分も、ここで生活して行けるかもと思えた瞬間だった。

母は、まるで水を得た魚のようだった。

宮では、あれほどに洗練された身のこなしが出来るなんて、まるで王族のようだと称えられ、皆に教育する教育係にも任命されていた。

おかげで屋敷に送られる電力は増えて、パソコンも置いてもらえた。毎日新鮮な食材を宮から持って帰って来るので、父がそれを、母に代わって料理するのが日課になっていた。

そうして三か月も過ぎた頃、気の使い方を学んだ博也も空を飛べるようになり、学校の試験にも無事合格することが出来、卒業することになった。

博も必死にやると言っていただけあって、博也と同じように試験に通った。二人は揃って、卒業することになったのだ。

「博也は神様だから」父が言った。「ここで何の仕事をするんだろうな?」

博也は首を傾げた。

「本当なら選ばせてもらえるって聞いてたんだけど、半神のオレじゃあ気の量も限られてるし、出来ることが少ないみたいだ。だから、王から直接言い渡されるって聞いたけど…。」

父も不安そうに言った。

「父さんなんて、神様でさえないからな。何が出来るんだろうって思って不安なんだが。掃除でも何でもするけどな。」

そんなことを話しながら、最後の授業をうけようと待っていると、玲と翔馬が入って来た。二人は緊張して背筋を伸ばした。

「今日で終わりだから、本当ならもう、行く場所が決まっててそこの試験を受けるんだけど…二人は王からお話しがあるから。」

横の翔馬が頷いた。

「我について参るように。王がお待ちでございまする。」

二人は顔を見合わせた。王に直接会いに行く…。

二人が立ち上がると、玲は言った。

「何かまたわからないことがあったら、遠慮なくここへ来てくれ。待ってるよ。」

博也は頷いた。

「ありがとうございました、玲殿。」

博も言った。

「とても分かりやすい授業でした。本当にありがとう。」

玲と二人は握手を交わすと、そのまま翔馬について宮へと歩いて行った。


宮への道すがら、博也は今、王が大変なのだと聞いていた。

なんでも王妃が正月の祝辞を受けにも出て来ない始末で、近隣の宮では王は何をしておられるのかと噂されているのだというのだ。

それにはここの王妃の兄である龍王が、大変に立腹していて里帰りに来た王妃一向を追い返したとか。事は龍王を巻き込んで大騒ぎになっていると聞いていた。

しかし、こうやって王の責務は多岐に渡り、自分達のような下々の者のためにも時間を割いてくださる…。それがどれだけ大変なことなのか、博也にはもうわかっていた。

王の居間の戸の前で、翔馬が頭を下げた。

「王、連れて参りました。」

「入れ。」

蒼の声がそう答える。翔馬は中へ入って、また頭を下げた。博も博也も頭を下げる。礼儀も何もかも、学校で習ったのだ。

「ああ良い。そこへ座るが良い。」

蒼は気軽に言った。三人は並んで座った。蒼は自分の椅子に座ってこちらを見て言った。

「二人とも、良く頑張った。無事に終了したそうだな。なんでも歴代二位の速さだそうだ…一位は一か月個人レッスンで終了した、明人という軍神なのだがな。ほれ、主らが最初に見たあの気の強い軍神ぞ。」

博也は思い浮かべた。気の圧力にものすごく怖いと思った最初とは違って、今では気軽に声を掛けて、気に掛けてくれるとてもいい神だと思っていた。ちなみにまだ30歳になるかならないかの歳なのだという…。神の世では、同い年の感じだ。

「明人殿は、とても親切な神です。」

博が言った。蒼は頷いた。

「そうだな。うちの軍神の中でも序列は上で良い龍ぞ。」と、博也を見た。「それで、博也。早速だが主には学校へ行ってもらう。」

博也は驚いた。オレが先生?

「オレに…務まるでしょうか。」

蒼は頷いた。

「これまで月の宮に、コンピューターを専門にする者が居なかったのだ。なので、授業の時はそれを教え、そうでない時は、オレが今考えているのだが、ここの宮のマザーコンピューターをプログラミングして作って欲しいのよ。音声認識できるタイプで、あんな個別にハードディスクを置くのでなく、全てを一括管理できるように。机に置くのはそれに接続する端末だけにして…本は残すが、電子書籍を増やしていきたいと思っておるしの。金はいくらかかっても良い…と言っても、部品やらなんやらを仕入れに行くのは大変であろうが、飛べるのだから簡単であろうし。」

博也はびっくりした。それは、自分にコンピューターを一つまるまる作れと言っているのか?

「一人では…かなりの時間が掛かりますが、よろしいのでしょうか。」

蒼は手を振った。

「別に百年掛かっても二百年掛かってもよいわ。主の寿命は800年から1000年ある。死するまでには完成してもらわねばならぬがの。」

「いえ、そこまで掛からないかと…せいぜい掛かっても10年ほど…。」

蒼は笑った。

「では、頼むぞ。で、博。」と父のほうを見た。「主は宮の厨房へ入ってもらおうと思うておっての。実は人の世で板前をしていた者が一人居るのだが、たった一人でな。しかもあれは料理だけは手でするのだと言って、気を使ってすることはない。丁寧に人と同じように手で作るのよ。そんな訳で、オレがここへ客人を呼んで、何か食べ物を振舞おうと思っても、一人で作るのでそれは大変なのだ。神の世では基本食べないので酒しか出さないのだが、ここへ来る神の中にはここで出される酒のアテを楽しみにしておる者も居て…出さない訳には行かぬのだ。月に一回は、希望者に外食の雰囲気を楽しませようと思うて、順番にあれの手料理を配らせておるしな。主らも食べたであろう…なんでもこなして作るのよ。そんな訳で、月に半分は厨房、半分は宮の他の仕事に従事してもらおうと思うておるのだが、どうか?」

博は目を輝かせた。だが、自分に出来るのだろうか…ブランクは長い。

「私にできますでしょうか…長くプロの調理場になど立っておりませぬゆえ。」

蒼は微笑んだ。

「誰でも最初はそうではないか?オレは出来ると思うがな。」

博は頷いた。

「ありがとうございます。では、厨房で仕えさせて頂きまする。」

蒼は頷くと、翔馬を見た。

「では、主今から二人をそこへ連れて参れ。明日から入れるようにの。」

翔馬は立ち上がって、頭を下げた。

「はい。では王、御前失礼致しまする。」

翔馬は、同じように頭を下げた二人を連れて、蒼の居間を出て行った。

蒼はまた、他の事を考え込んで沈みこんだのだった。


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