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四,願いと祈り

部屋に戻ったノギクは考えました。何か良い方法がないかと。しかし、いくら考えても無理があるのです。

夜中も住民達は起きて騒いでいるし、抜け出すにしても窓がありません。外に出るには、一つの扉しかないのです。

ですが、ガウラの切ない声と小さいけど大きい夢を聞き必ず叶えてあげようとノギクは決心します。


初めての友達です。やっと人間らしい感覚を教えてくれた恩人でもあるのです。


ノギクは夕食の時間に実行する事にしました。




夕食の時間。ノギクは平静を装っていますが緊張しています。緊張がばれないために黒い大きな布を頭からすっぽり被り顔を隠しています。

住民達に夕食を配り終え、ガウラの部屋へ急ぎました。また、住民は「気持ち悪いガキ!黒い布が目障りだ!この能無し、お前は幻想だ!」とノギクに訳の分からない罵声を浴びせます。ノギクは声には反応せず「どうか、成功しますように」と祈りました。


ガウラの部屋に入っていくと、少し寂しそうなガウラがノギクを見つめました。ノギクは黒い布を脱ぎガウラを見つめ返しました。


「これで、最後ね…。とても寂しい」


ガウラの寂しそうな声を聞きながら、ノギクはゆっくりと檻の鍵をあけました。ガウラは食事を受け取りに歩いてきます。

「ノギク、もう会えないかもしれないけど一生の友達でいてね」


ガウラは一粒の涙を流しました。ノギクは胸が痛くなり「必ず夢を叶えてあげよう!」と、更に決心を固めました。食事を渡すと、ノギクは身振り手振りでガウラに伝えようとしました。

しかし、ガウラには意味が通じず困った表情をしています。

「どうしたの?ごめんなさい、よく分からないわ」


ノギクは声が出ない事に、憤りを感じましたが諦めずに何とか伝えようと必死でし。ガウラはじっと見つめています。

「何?何を伝えたいの?」


ノギクもガウラも必死です。あまり、長い時間ガウラの部屋にいると住民が怪しむと分かっていたのでノギクは焦ってきました。

「どうか、伝われ!」とノギクは必死になってガウラへメッセージを送り続けます。

しかし、ガウラは訳が分かりません。焦ったノギクは一か八かの賭けにでました。


ノギクは自分の着ていた服を抜き始めたのです。

ガウラは悲鳴をあげました。

「何を考えてるの!?やめて!」


ノギクは真剣な表情で、ブンブン首を横に振ります。ガウラは真剣な表情のノギクを脅えた目で見つめます。

ノギクは上着だけを脱ぎ、ガウラへ手渡そうとしました。

「そんなの要らないわ!やめてよ!」


ノギクは、また首を横に振ります。ガウラは意味が分かりません。

ノギクは上着と一緒に黒い大きな布をガウラへ差し出しました。

「だから、要らないって言ってるでしょ!お父様に言い付けるわよ」


ガウラは険しい表情で怒鳴りました。ノギクは少し戸惑いましたが真意を伝えようと必死です。

自分の服を差し出しながら、ガウラと自分を交互に指差すのです。ガウラは段々と落ち着きを取り戻しハッとしました。

「もしかして、入れ替わろうって事?」


ノギクは首を縦にブンブン振りました。「やった!伝わった!」ノギクは安心しました。ですが、ガウラは暗い表情です。

「そんな…。確かに外には出たいけど、それはノギクとよ」


ノギクは困った表情で首を横にふります。ノギクは一生懸命に様々な作戦を考えましたが、一緒に外に出る方法は見付からなかったのです。ただ、ガウラ一人なら何とかできそうだと思い、この作戦を考えついたのです。

「ほんの一瞬で良いの。ノギクと外に行きたい」


ガウラは悲しそうに訴えます。ですが、ノギクは笑顔で顔を横にふり早くするように促します。ガウラはノギクを涙で潤んだ瞳で見つめました。

「ノギクは最高の友達だわ。お客様もお父様も褒め続ける意味がよく分かる。本当に良いの?バレたら、ただじゃ済まないわよ」


ガウラは少し強い口調です。ノギクは笑顔で頷きました。友達の夢が叶うと思うと自然と笑顔になります。

「わかったわ。ノギク、ありがとう!少しだけ、外に出てみるわね。初めてだから、緊張するわ」


ガウラも笑顔になって、準備を始めました。ノギクは自分の服を渡し、ガウラに背中を向けました。


ガウラは自分のドレスを脱ぎノギクの服に着替えます。しかし、足が多いため上手く着れません。ガウラは自分の檻の中にあるタンスから長めのスカートを取り出し代わりに着ることにしました。


そして。黒い布を羽織りスカートをまくし上げ見えないようにしました。


「ノギク、もう良いわよ」


ノギクは振り返りました。

何処からどう見ても、可愛い普通の女の子です。ノギクは見とれてしまいました。

「ノギクも寒いでしょ。私のドレスを着てちょうだい。それから、白いヴェールも被るのよ」


ガウラはそう言うと、ノギクに自分が着ていたレースがたっぷりの可愛らしいドレスと、絹の光沢は美しい白いヴェールをかぶせました。

「まぁ、まるで女の子ね!これから、もしお父様が帰ってきても分からないわ!」


ノギクは着慣れないドレスに戸惑いながらも、ガウラの夢が叶うと思うと元気に頷きました。

「じゃあ、外に行ってみるわ…。とても緊張するわ。ノギク、少しだけ我慢しててね。すぐに戻るから!」


ガウラの声は期待に満ちた嬉しそうな声です。ノギクも「上手くいきますよう」と祈りながら頷きました。

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