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5歳児と変わらないよ?

作者: 井上さん
掲載日:2026/04/05

よくある婚約破棄の話

 この国の王太子は、婚約者の私に執務を任せている。



書類を精査し、回答する

必要な部署へ回す

資料を集める

視察の報告、交渉、根回し、尻拭い…



 王太子のする事は、最後の署名だけ。会議には、座ってるだけ。

それは、婚約者と、王太子の周りの文官達しか知らない事だった。



 王太子は学園で、男爵令嬢と出会い、いつも一緒に過ごしていた。


周りの生徒達は、婚約者がいるのに…と冷めた目で見ていた。





 男爵令嬢と出会ってから、王太子は月に1度のお茶会にも来なくなった。


第2王子が代理で来た。



私は、挨拶の後に聞いてみた。


「お名前は書けますか?」


「はい。かけます」


 得意そうに言う第2王子。


「素晴らしいですね」


「まだ、なまえだけだけど…」


 恥ずかしそうに言う第2王子。


「それでも、お名前が書けるだけで十分ですわ。お兄様も、お名前を書くお仕事をなさっておりますもの」


 第2王子は首を傾げた。


「そうなの?」


「はい。第2王子殿下も、王家の執務をなさりますか?」


「はい!おにいさまとおなじおしごとしてみたいです!」


 周りのメイドや護衛達は、第2王子を微笑ましく見ていた。




 第2王子は、執務室のイスにチョコンと座っている。


 後ろから見たら、第2王子の身体はイスに隠れて全く見えない。

身体が小さいからだ。



 小さい手で、一生懸命に名前を書く第2王子。


「ありがとうございます。これで、次の部署に書類を回せますわ。王族の方のサインが必要な書類なので」


 私は礼を言う。第2王子のお陰でスムーズに進む。

今までは、王太子が執務室に来ないとサインがもらえず、仕事が進まなかったのだ。


 国王の許可を取っており、きちんと決済権限も与えられている。


「殿下のお陰で早く終わりますわ」


「そうなの?よかった!」


 ご満悦な様子の第2王子。周りの文官達も、微笑ましく見ている。




 執務室への行き帰りは、第2王子にエスコートされている。

…第2王子が私をエスコートするというよりも、私にエスコートされているように見えるが。


 一生懸命にエスコートをする姿は、通りすがりの仮面…メイドや文官や騎士達の癒やしだった。




 国王の生誕祭として行われる夜会。


国王の挨拶が終わり、貴族達は夜会を楽しんでいた。




「お前とは婚約破棄してやる!私は、この愛する令嬢と婚約する!」


 突如、王太子が叫んだ。


「かしこまりました」


 私は王太子に礼をした。


「え?」


 王太子は目を丸くした。


いや、驚く事ある?

皆、浮気している事は知ってるよ。

 いつか婚約破棄するんだろうなと思っていたよ。皆が。

王太子は目立ちたがりだもの。

夜会でやるだろうなって、大半の人が思ってたよ。

予想を裏切らないね。



 国王が厳かに言った。


「お前を廃嫡し、第2王子を王太子とする!」


「何故ですか!?父上!」


 王太子が叫んだ。


「お前は王太子の執務を何もしていない」


「しております!」


「名前を書くだけだろう?」


「う…」


 王太子は目を逸らした。


「それすらも、最近はしていない」


「そんな事は…それに、第2王子はまだ5才です!王太子など…」


 反論する王太子に


 「おにいさま!わたしは、おにいさまとおなじおしごとをしています!」


 第2王子が大きな声で言った。


「何だって!?」


「しょるいに、おなまえをかくしごとです!おにいさまといっしょです!みんな、おなまえをかくだけで、ほめてくれます!」


 エッヘン、と胸を張る第2王子。


周りの貴族達は、微笑ましく見ていた。


 だが、しかし…


王太子と同じ仕事をしている…?


名前を書く仕事…?


王太子は、名前を書くしか仕事をしていない…?


 貴族達の頭には、疑問が浮かんだ。


5才の第2王子と15才の王太子が同じ仕事…?


「第2王子でもできる執務だ。お前はいらない」


「そんなぁ~!」


 国王の言葉に、項垂れる王太子。


「お前の望み通りだろう。婚約破棄して、そこの浮気相手と婚約できるんだ。喜ぶが良い」


「そんな…あんまりです…」


「浮気して、簡単に婚約を破棄する人間が信頼されるか。お前達2人は北の塔に幽閉する!連れて行け」


「待ってください父上!」


 王太子と男爵令嬢は、騎士達に連れて行かれた。


「皆のもの!第2王子が王太子になった。これからしっかり支えてくれ!」


 国王の言葉に、貴族達は礼をした。



私は、王太子妃教育を受けている事から、第2王子の婚約者となった。

 第2王子は私より10才下だけれど、お茶会の代理で来た時以来、仲良くやっている。


 第2王子改め王太子は、毎日元気に執務をしている。


いずれ、名前を書く以上の仕事もするようになるだろう。


読んでいただきありがとうございます

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― 新着の感想 ―
やってることは同じ名前を書くだけのお仕事ですが、それでみんなをイラっとさせる兄とほっこりさせる弟くん、どっちが周囲に対して有益なのか火を見るより明らかですね(^^) ちょこんと座って一生懸命お名前を書…
頑張れ五歳児!
二人で幽閉されて3食昼寝付きの生活なら学園にいるときとあまり変わらないですね。むしろ名前を書くだけの義務もなくなって幸せな時間を満喫できます。 国王はご褒美をあげたかったんですかね。
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