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森と鋼のあいだ ー大往生 のち 恋をするー  作者: ヒトツキト樹


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8/21

第1章 知るために、外へ ①

❖ ここまでのあらすじ

百年を生き、大往生を迎えた百合江。

穏やかに人生を終えたはずの彼女は、

目を覚ますとエルフとして生まれ変わっていた。


ユリエルはこの世界について、学び、2回目の軍議に向かいます。


それから数日、ユリエルは書庫に通った。


白樹の幹をくり抜いた書庫は、昼と夜で光の色が変わる。昼はやわらかく、夜は青く澄む。文字は魔術で刻まれ、指先でなぞると、わずかに温度を持っていた。


リュネは、ユリエルより先に書庫にいた。


 「むずかしい?」

頭の上から声が降る。


 「ええ、とても」

 「ねむい?」

 「少しね」

 

すると、もふ、と頬に体を押しつけてくる。


慰めているつもりらしい。

ユリエルは笑う。


百年戦争は、なぜ始まり、なぜ終わらないのか。

鋼の民は地下を掘削する。

魔力は森を循環している。

 

ーーうーん…やっぱりむずかしいわね


思わず、天井をあおぐと外から差し込む美しい光に少しホッとする。

 

――分からないままにしたくないの。


 「魔力は、森を流れているようね」


リュネに話すように、口に出して整理する。


 「ながれ?」


 「ええ。だから森が弱れば魔力も弱まるし、その逆も起こる」


元のユリエルが倒れた理由は、記録として残っている。だが、その時の決意や焦りは、百合江には分からない。


分かるのは結果だけ。

だから、決めつけない。

ただ、繰り返さないと心に置く。


 次の軍議。


王の間の空気は、前よりもわずかに張りつめている。

ユリエルは軍議の開始と同時に立ち上がった。


「陛下。発言をお許しください」

 

「許可する」


王は目を細める。         

   

ーー前回の軍議では精彩を欠いていたが、 さて、 今回は…


 「前回はご期待に沿えず申し訳ございませんでした。」

「今いちど、森と鋼がぶつかる“場所”の調査を進言いたします」


ざわり、と視線が集まる。


 「押し返すか、防ぐかの前に、相手を知ることが必要です。いきなり掘削を止めさせることはできません。けれど、近く行われる捕虜交換は、戦場ではない場所で相手を見る機会になります」


王は静かに問う。


 「何を見る」


 「姿勢と、目的です。掘削が資源のためか、戦略のためか。言葉の端に、手がかりがあるはずです」


反対の声が上がる。

 

「危険だ!」

 「敵の前に出るなど…」


そのとき。

 「……陛下」


セラヴィが前に出た。

声音は穏やかだが、はっきりしている。

 

「私は反対です」




「森と鋼のあいだ」を読んでいただきありがとうございます。作者のヒトツキト樹です。


戦いありきでは無いユリエルは、きっと軍議では異端なのでしょう…でも、争いだけが解決では無い。百合江おばあちゃん、がんばってほしいです。


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