第1章 余波と、残像 1
「さぁ、森へ戻りましょう」
目の端が熱いのは、強い風のせいかもしれなかった。
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森へ戻る道は、行きよりも長く感じられた。
境を越えた瞬間、乾いた匂いが薄れ、湿りを含んだ森の香りが肺に満ちる。足裏には再び苔の柔らかさが戻り、白樹の幹が視界を包み込む。だが胸の奥に残る鋼の気配だけは、簡単には消えなかった。
王宮に戻ると、すぐに報告の場が設けられた。
刺客は魔術至上派の若い貴族。単独犯と見られているが、広間に流れる空気は冷たい。
「敵軍の将を庇うとは…」
「軽率だったな」
貴族たちの視線が向けられる。
ユリエルは静かに受け止めた。
ーーあらあら、この人たちは本当に……
ーー仕方ないわね
「おっしゃる通りです。けれど、あの場で血が流れることの意味が分からないことの方が遥かに軽率で
あると感じますが、いかがですか?」
広間が静まり返る。
挑発ではない。
あくまでも、問いだ。
王がゆっくりと口を開いた。
「刺客は処罰する。そして関わりのある者がいるかどうかは、私が責任をもって調査する」
静かながらも重い宣言。
「今回の件で鋼との関係を悪化させることはせぬ。均衡は保つ」
つまり、過剰反応は許さないという意味だった。
王の言葉で、その場は収まった。
ーーうーん、結局、調査も話もできなかったわね
ーーそれに、あの鋼の将……
ユリエルは足早に王の間から立ち去った。
「森と鋼のあいだ」を読んでいただきありがとうございます。作者のヒトツキト樹です。
物語の展開の関係で、少し短めなエピソードです。
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