表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
森と鋼のあいだ ー大往生 のち 恋をするー  作者: ヒトツキト樹


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/21

第1章 名を呼ぶ声 1

ユリエルとセラヴィは、ドワーフの国との捕虜交換へ向かう。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー


捕虜交換の場へ向かう道は、森の奥からゆるやかに景色を変えていった。


白樹の幹が重なり、苔が厚く、踏みしめても音を吸い込む森の内側。そこから幹の間隔が少しずつ広がり、下草が減り、土の色が深緑から淡い茶へ移ろう。やがて足元に小石が混じりはじめ、風が包むものから押すものへと変わる。


森と鋼の境に近づくにつれ、森の匂いの奥に鉄の匂いが混じった。


白樹が途切れた先は、岩と低木の地だった。湿りは薄れ、空気は乾き、森と鋼の匂いが、まだ混ざらぬまま隣り合っている。


リュネが頭の上で小さく身じろぐ。


 「……ユリィ?」


 「あらあら、大丈夫よ」


平静を装い、そう答えながら、胸の奥が緊張で微かに震えている。


境界の中央に捕虜。その背後に鋼の将。


ーーあの人が、ドワーフの将……


距離があるのに、存在がはっきりと伝わる。

細身だが無駄のない体躯。重厚な鎧。揺れない立ち姿。剣に触れずとも、抜けば速いと分かる。


 「レン」


鋼の陣営で側近の声が響いた瞬間、ユリエルは世界が傾いた気がした。


――……レン

――…蓮

 

百合江の心臓が強く打つ。

前世での蓮との別れの情景が、昨日のことのように溢れ出る。


――眩暈がする


鋼の将が一歩前に出る気配を感じ、ユリエルは今に戻る。 

鋼の将の瞳は漆黒だった。

星のない夜空のような、深い黒。


百合江の記憶の中の蓮も、同じ瞳をしていた。静かな黒の奥に、感情が高ぶると赤銅の光が滲む瞳。


目の前の彼は、低く、澄んだ声で静かに名乗る。


 「鋼の王の名代、王太子レンヴァルト」 


 「本日の捕虜交換を、つつがなく執り行う」

 

宣言は簡潔で、揺らぎがない。背後の鋼の兵が同時に姿勢を整える。


――だめよ。今はユリエルとしての役目がある


ユリエルも前へ出る。

 「エルフ王の名のもと、本日の――」


 その瞬間。


 「うわぁぁぁ!!!」


 森側の列から影が飛び出した。



「森と鋼のあいだ」を読んでいただきありがとうございます。作者のヒトツキト樹です。


とうとう、鋼の国と交わるところまで進みました…!


ぜひ、ブックマークをして、続きを楽しみにしていただければ嬉しいです。

リアクション、評価も励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ