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第8話 そういうフィッツジェラルド神聖王国特有のルールを


そういうフィッツジェラルド神聖王国特有のルールを、わたしもカリンちゃんも勉強させられているんだよねえ。


わたしはカリンちゃんのお付きの人扱い? 客人?

だから、ここの離宮にずっといるけど。


カリンちゃん聖女様だから、王様がお住まいのお城とか、白の魔法師団と一緒に神殿とか。そういう場所にも赴かないといけないらしくて。


……貴族のご令嬢のマナーまでも学ばされているカリンちゃん。聖女役、ホント大変よねえ。

わたしはマナーのお勉強は一回しただけで、免除となりましたけど。


その分離宮でのんびりと……は、できないけど。スキルアップに時間を取ることができる。


あと、たまに、というか二日に一回くらいは、青の騎士団の副団長、最初の召喚の時のもいたイグニス・シェレンバーグ副団長がわたしに会いに来てくれる。

不便はないかとか、ティエリー達はよくやっているかとか。

一緒にのんびりお茶して、というか雑談してくれる。

その程度の余裕はある。

ま、雑談の中で色々教えてくれている感じなのよね。


家庭教師にガッツリと、この世界のことを習うよりも、イグニス副団長との雑談の中で得た知識のほうが、わたし、おぼえている……。


さすがイグニス副団長。できる男は違うなあ……なんて。


で、そのイグニス副団長。

当然、できる男は忙しい。

今日もめっちゃ疲労している。


「おはようございます、イグニス副団長。目の下、真っ黒ですけど、夜とかちゃんと寝ています?」

「……みっともない姿を見せて、申し訳ない」


すっと下げられる頭。最敬礼。

いえ、動作は機敏だし、背筋はびしっとしているし。

眼光は鋭いし……なんだけど。目の下のクマがねえ……。


「……とりあえず、わたしのテントに入って下さい。疲れ取れますよ」

「申し訳ない。感謝します。この十日ほど、まともに寝ていないので……」


疲労回復テントだからね。

と、はい、具現化!


「あ、あれ……?」


出たのはいつもの小さいテントじゃなかった。

 

「大きい……?」


そう、中学生くらいの身長のジョナサン君が、膝を抱えて座る程度の大きさ……だったはず。なのに、今、わたしが具現化したテントは……ジョナサン君が横になって眠れるくらいの幅がある。

しかも、テントの中に、エアーマットっぽいのまであらわれた。ほら、あの、空気を入れて膨らますやつ!


「テントが大きくなった上に……、これは……、何だ?」


エアーマットを手に、しげしげと眺めているイグニス副団長。


「多分、キャンプ用の簡易マットです」

「まっと……?」


あ、マットという言葉もないのね、この世界。


首を横に傾げているイグニス副団長。……ちょっと大型犬みたいでかわいい。


ジョナサン君は、例えるのならマルチーズ……かな?

で、イグニス副団長は……一見したところ、シベリアンハスキーとかシェパードとかなんだけど。たまーにゴールデンレトリバーみたいな可愛らしさというか親しみやすさが……って、犬に例えるのは失礼かな。


剣を手に、背筋を伸ばしている時は、うおおおおお! 騎士様! かっこいいいい! とか思うけど。

テントの中に座って、背中を丸めている時なんてほっこりするし。


「鑑定してみますね」


鑑定! と言ってみたら、もう、表示が出た。


「具現化スキル『テント』 LV2 回復量(小) 一日に二人分だけ、身体能力や魔力を回復可能。追加備品、敷物一人分」


あー、マットは敷物と変換されるのね。うむうむ。

あと備品が追加されるのか、このスキル……。うーん、謎機能!


「敷物を敷いて、その上に寝転んでみてください」

「わ、分かった……」


素直にマットの上に横になるイグニス副団長。


横になった途端に、速攻寝落ち……。いびきとかはかいていないけど、死んだように、微動だにしない……。


で、数分の後、「かっ!」と目を開けた。


「体が軽い……」

「回復したんですね?」

「ああ……」


テントの中でボケっとしているイグニス副団長。あら、なごむわぁ……。

なんて思っていたら、部屋のドアがいきなり開いた。


「あ、ああああああああああっ! 今日こそあたしが使わせてもらおうと思ったのにいいいいいいいい!」


プリーステスローブ姿のカリンちゃんが、わたしの部屋に走り込んできた。


「ずるいよイグニスさん!」


髪の毛のセットもしていない。……身支度の途中で逃げてきたっぽいな。聖女様は大変だなあ……なんてね。


「疲れてんの! 疲れてんのよっ! 淑女のマナーだとか宝珠がどうこうとか! しかもあのクソ王太子がっ! ベタベタベタベタセクハラしてきてっ! もう嫌あああああ! 日本に帰してえええええええ!」


唾を飛ばしながらでも、美少女だからすごいなカリンちゃん。

でも。


「セクハラ?」


それは駄目でしょう。王太子殿下。いくら外見が美形でも、ノーセクハラ。やっちゃダメ。


「あのクソ野郎っ! 朝から晩までベタベタベタベタっ! 『この俺様に相応しい聖女としてのふるまいを身につけたまえ』とか何とかっ! 鬱陶しいっ! お前なんかに相応しい相手になんてなりたくないわよっ! 日本に帰りたいから仕方がなく聖女やってやってるのにっ!」


むきいいいいいいいいって感じに、喚きまくるカリンちゃんにも慣れました……。あははは。カリンちゃん、悪い子じゃないんだけど、本当に王太子殿下が嫌いみたい。

でもクソ野郎は駄目だと思うよ……。


「申し訳ございません、聖女様……」


イグニス副団長は、慌ててテントから這い出てきて、直立不動の体勢を取る。

謝ったイグニス副団長を、カリンちゃんは睨む。


「イグニス副団長も酷いっ! あたしがっ! テント使いたかった! 酷いっ!」


いや、イグニス副団長が勝手にテントを使ったわけではないのよ。

すごーく疲れていて目の下クマで真っ黒だから、わたしが入ってくださいよって言ったのよー……なんて言っても無駄かな。


とりあえず、わたしはカリンちゃんの肩をポンと叩く。


「大丈夫だよ、カリンちゃん」

「アイリスお姉様……」


何故だかカリンちゃんは、わたしのアイリスの名の後に、お姉様をつける……。

ま、いいか……。中学校と高校の時で、慣れてるし。


「大丈夫だよ、わたしのテントのスキル。能力アップ。なんと『一日に二人分だけ、身体能力や魔力を回復可能。追加備品、敷物一人分』って鑑定表示が出た」

「ふ、二人……。それに、ああああああ! テントが大きくなっているっ! しかもエアーマットまで」


神様にお祈りするポーズのカリンちゃん。


「お姉様……、素敵……。ああ、テント……」


素敵なのは、わたしなの? テントなの?


「さ、カリンちゃん。レベルアップしたばかりのテントスキル。試してみるのはどうかな?」


カリンちゃんはふらふらと、テントの中に入って行って、コテンと横になった。

あはは、猫みたい。


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