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聖女召喚に巻き込まれた就活中の一般人、具現化スキル『テント』で異世界を東奔西走!  作者: 藍銅 紅@『前向き令嬢と二度目の恋』2巻 電子2/10


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第57話 覚えのある白さ。

覚えのある白さ。そう……前に見た、白い巨人。七人の神様たちに、わたしとカリンちゃんは囲まれていた。


それから、その七人がすっと後ろに下がる。

どこからともなく歩み出てきたのが……よくあるファンタジーアニメの女神様みたいな人。

人? 

あからさまに一番偉い神様っぽい。

その女神の後ろに三人の従者的な感じ。

七と一と三。合計十一人。ああ、神様だと十一柱とかって言わないといけないか。


なんて、わたしはぼんやりと白い神様たちを見ていたんだけど……。


「な、ナニこれナニこれナニこれえええええ!」


パニック状態のカリンちゃんが。

あー……。そうか。

わたしは夢で、この神様たちを見たことがあるから、あれかーみたいな感じだけど。

いきなり十一柱ののっぺりとした白い巨人に囲まれたら……うん、動揺するね。

しかも、わたしたち、宙に浮いているし。

上も見えないし、下も見えない。

真っ白。


えーと、じゃあ、カリンちゃんの手でも握ろうか。

ぎゅっと掴むと「お、お姉様あああああああ」って、半泣きで抱きついてきた。よしよし、大丈夫だからね、多分。


『宝ジュのシュウフク、御クロウであった……』


女神っぽい人が私とカリンちゃんに言う。

キーンと、耳鳴りがするけど、なんとか言葉の意味は分かる。


チューニングのあっていない楽器の高音と低音を、同時に無理やり大音響で聞かされているみたい。


「もっと出力を落として喋って。耳が痛いし頭まで痛くなる!」


出力って言いかたがあっているのかどうか分からないけど。このまま神様たちの声を聞かされたら、また盛大な頭痛が起こるに違いない。


だったら、相手の出方を待つよりも、言いたいことを言ってしまおう。


「四つの宝珠は修復したわ! これでわたしたちは元の世界に帰れるんだよね⁉」


この世界にわたしたちを呼び寄せたのは、白の魔法師団の皆さんかもしれないけど。

彼らがわたしたちを呼んだのは、宝珠が壊れたからでしょう。

この世界の曜日の名になるくらいに浸透している七人の神様。

四つの宝珠を修復した途端に、この女神と三人の従者みたいな神様が現れた。

七人が、すっと後ろに下がって、この四人を前に出したってことは……、神様の格としては四人のほうが上……だよね、多分。

一番偉そうな女神みたいな神様もいるし。


推測。四つの宝珠イコール女神様と三人の従者。ただし、宝珠は何百年か経つと壊れる。壊れるから、七人の神様が修復しようと聖女を呼びだすって構造。


何で壊れるのかっていったら……経年劣化とかじゃなくて、前に夢に見たことが正解なら。


女神様の旦那さんである男神が魔的なものに侵されている。

で、それを四人……四つの宝珠で封じている。

でも、宝珠はいつか壊れるから、その請われたときの修復にとセーフティガード的な神様が七人いるんだろう。


多分。


『勇者と聖女に告ぐ。我が夫たる男神を侵したる魔を払え』


……音声出力は控えてもらえたようだけど、いきなり命令? ムカムカする。

怒りって、頭が真っ白になるけど。

妙に冷静になるときもある。

今のわたしは後者だった。


「何百年ごとなのか……とか知らないけど、宝珠が壊れるたびに、どっかから聖女なり勇者なりを呼びだして、修復させて、魔を払わせようとして。でも、繰り返しているってことは、つまり、聖女は宝珠を治せても、勇者は魔を払えず、また数百年ごとに同じことの繰り返しってことよね」


女神を睨んだら、女神はゆっくりと頷いた。


「つまり、魔は払えない。代々の勇者はどうなったの?」


答えない。

死んだか、魔に取り込まれたのか。分からないけど、ろくな結果じゃないよね。


「付き合えない。わたしには元の日本に戻って、父と母と兄に伝えないといけない言葉がある。宝珠の修復まではやったんだから、元の世界に帰してもらってもいいじゃないの!」


迷った。こちらの世界で就職が出来ればいいやって、そのためにもわたし、ここで役に立とうと思った。

でも……、せっかく勇気をためたの。

イグニス副団長がわたしの話を聞いてくれた。

白の魔法師の人が差し出してくれたあったかいスープ。

出会ったカリンちゃん。

わたしは、わたしの思う通りの人生を選びたい。

だから、お父様とお母様の希望通り、優太お兄様と婚姻を結ぶなんてできない。

でも、優太お兄様にはちゃんとしあわせになってほしい。

カリンちゃんのいる関東圏でもどこでもいいから、もう一度ちゃんと就職活動をして、職を得て、自立する。


自分の足で立って、生きる。


神様なんかに付き合っていられない。

ここまでは、してあげたんだから、後は数百年は大丈夫なんでしょ! そしてその後はまた聖女を呼ぶんでしょ!

どのみち繰り返しになるのに、魔に対峙なんて、できません! 元の世界に帰してよ!


『……我らの力も有限だ。次に、宝珠が壊れたら、もう修復はできない』

「は?」


後ろに控えている七人の神様。その神様が、たとえばお花だとしたら、その花弁が一枚一枚、剥がれ落ちていくみたいな感じで、ほろほろと、はらはらと、少しずつ形が崩れ落ちていく……。


「な、なにあれ……」


カリンちゃんが、わたしの腕をぎゅっと強く掴む。その痛みが、今、わたしが見ているもの、声が、夢じゃないと知らせてくれるみたいだった。


『我らが、魔に侵された男神を押さえていられるのもあと数百年……。その後のこの世界は……あの魔に侵され……』


このフィッツジェラルド王国の場所で、魔的なものに侵された神様の旦那様のご遺体を苗床に、魔物がポコポコと生まれてきて。


この世界を魔で満たす……ってこと?


今じゃない。数百年の後の話。その頃には……フィッツジェラルド王国で知り合った人たち……イグニス副団長、ナイジェルさん、ジョナサン君、ブロニー・ベネットお爺ちゃん、マグノリアさん、カメリアさん、それから騎士団のみんなとか魔法師団のみんなとか……ついでにキーファー第三王子もみんなとっくに死んでいる。


そんな子孫の子孫の子孫の……、もっと先の世代で、この世界がどうなるともわたしには関係ない。


知り合いが生きている間は、多分無事。カリンちゃんはちゃんと四つの宝珠を修復した。だから、数百年はこの世界は魔を押さえていられるはずだ。


だけど……、あのかわいいオルカたちは……、どうなんだろう?

あの子たちは魔物だから、何千年も生きるのかもしれないし……。


だいたい、わたしが頑張って魔を倒そうとしても……、歴代の勇者だって魔に負けていたんでしょう? だから、宝珠が壊れて、修復して……を繰り返しているんでしょう?


わたし、これから、自立して、自活して、自分の人生を歩いていこうって決めたばかりなんだよ?


自分のじゃない、他人の、知らない……とは言えないけど、異世界のために、命を懸けるなんて、そんな勇者なんてやってやれるか!


わたしは無関係だ。さっさと元の世界に戻せ。


……そう言ってやりたかった。


やりたかったのに……。


きゅいきゅいと楽しそうに、きらっ☆彡、なんてウインクをかますオルカたちや、もふもふのわんこたちの顔が浮かぶのよ……。



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