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聖女召喚に巻き込まれた就活中の一般人、具現化スキル『テント』で異世界を東奔西走!  作者: 藍銅 紅@『前向き令嬢と二度目の恋』2巻 電子2/10


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第54話  お犬様、十頭。

お犬様、十頭。

十匹じゃないよ! でっかいから十頭だよ!

わたしをカリンちゃんとイグニス副団長とナイジェルさんのお犬様は、犬だけ。

残りの六頭の後ろにはそりが合って、そのそりに物資を積む。すんごい大荷物……。薬とかもあるけど、おおむね食料だそうです。

うん、十人分、数十日の食糧プラス吹雪とかそういう事態を想定して、必要量の三倍くらい摘んでいるみたい。肉とか肉とか肉とか。そりに積んでいれば、勝手に凍るから保存は大丈夫。

問題なのは、元々食料を長期保存用にビン詰めとか缶詰めのほう。

寒さで、ビンが破裂……。わあ……。

缶なんて、開けようと手で触れたら……引っ付いて離れないって……。怖!

だから、革袋に小分けに入れて、木箱に詰めるんだって。

そんなこんなで、準備が大変なんだそうです。

えーと。ま、持ち物は全部イグニス副団長やナイジェルさんにお任せして。


わたしとカリンちゃんは、お犬様に乗って、大氷原を走ることに集中です。

お犬様は元気に走る走る。

先頭のイグニス副団長の乗るお犬様が、どうやらリーダー犬みたいで。他のお犬様はそのリーダー犬の後をきちんと追いかけて走る。

だから、ホント、わたしはお犬様に跨っているだけ。

すっごく楽しいです。

空は蒼く、凍った地面は太陽の光を反射して。更にはダイヤモンドダストみたいな小さな氷の結晶的な何かが、時折ゆっくりと降ってくる。


「うわー……、キレイ」


ほけーっと空を見上げていたら、わたしの横をお犬様に乗って走っているイグニス副団長がぼそっと「妖精結晶だ」と言った。


「妖精結晶? わたしの世界ではダイアモンドダストって言うんですよ」


きれいな表現だなって感心したんだけど、イグニス副団長の顔が厳しくなった。


「妖精結晶が降る後には、猛吹雪を伴う強風が起こります。ここで急いでテントを設営しましょう」


お犬様たちを止めて、しんがりのナイジェルさんを待って。

テント設営です!


人間だけだったらね。

薪ストーブが使用可能レベル4のテントだけでも大丈夫なんだけど……。

お犬様&大荷物。


お犬様は吹雪の外に放置しても大丈夫らしいけど……、毛皮が濡れる。濡れるとわたしたちが跨って乗れない。

なので、お犬様もテントに入れるの。

だけど、人間用に暖房を入れたテントではお犬様には暑すぎるのよね……。


なので、テントの設営には頭を捻ったわ。


まず、レベル4のテントを具現化。その横にレベル8のテント。更にイグニス副団長が用意してくれたこちらの世界の天幕も、横並び一直線に並べる。

そして、三つのテントを防水布とロープで繋いでいくの。

外に出なくても、三つのテントの中を行き来できるようにね。


レベル4の中で薪ストーブを使用すれば、天幕を通って、暖められた空気はレベル8まで届く。レベル8も、床のグランドシートが真空断熱構造だから、更に毛布を敷けば、底冷えというか、地面からの冷気はシャットダウン。

天幕のほうはぶっちゃけ寒い。

寒いけど、お犬様にとってはその寒さが快適なのかもしれないね。


荷物も、その天幕の中に入れておく。


急いで天幕設置までして、ほっと息をついた途端にものすごい強風が、テントを吹き飛ばしそうなくらいに吹いてきた。


だ、大丈夫なのかなあ……。テント吹き飛ばない?

カリンちゃんとレベル4のテントの中の薪ストーブの前で、手を取り合って震えています。


そうしたら、ナイジェルさんが、何やら風魔法を展開してくれています。


「魔法の風を、外の強風にぶつけて、テントが吹き飛ばされないようにしております」


もう一人の白の魔法師の人が説明をしてくれた。

ナイジェルさんが二時間、風魔法を展開したら、次の人と交代。

次の魔法師も二時間風魔法を展開したら、次の人と交代。

次の魔法師が二時間風魔法を展開したら、またナイジェルさんに戻る……って。


「あ、あの……三人でローテーションなんて、体力とか魔力とか持ちますか?」


思わず心配になった。

そうしたら、ナイジェルさんがにっこりと笑った。


「いやあ、アイリス様のこのテントの中で、回復しながらの魔法展開ですので。一刻ずつ交代せずとも永遠に魔法を展開できそうですよ」


で、でも無理はしないでください……。






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