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聖女召喚に巻き込まれた就活中の一般人、具現化スキル『テント』で異世界を東奔西走!  作者: 藍銅 紅@『前向き令嬢と二度目の恋』2巻 電子2/10


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第50話 状態異常回復

状態異常回復。

状態の、異常を、回復させる。


たとえば、カードゲーム。

たとえば、スマホのファンタジー系ゲーム。

そのほかPRG系のお話の中での状態異常って、毒・気絶・麻痺なんかがわりと多いと思うんだよね。

だから、ゲームの中の状態異常回復っていうのは毒状態の解除とか、気絶状態の解除ってことで。


でも、わたしのレベル5のテントの状態異常回復っていうのは、それとちょっと違うのかなって。

いや、広義では同じかもしれないけど。


だって、「異常」な「状態」を「回復」させるんでしょう?

近視が治るんだったら……、体の、異常な部分が、全部治るって考えてもいいんじゃないかって。

だったら、火傷だって治るかも……って。


きちんと考えていたわけじゃなくて、とっさの思い付き。

結果的にうまくいっただけ。


近視を治す。

火傷を治す。


だったら……。カリンちゃんの頭痛にも効果があるかもしれない。


わたしはテントを仕舞って、立ち上がる。


「ジョナサン君、手は治ったけど、体にはショックが残っているかもしれない。無理しないでしばらく休んで。大丈夫だからとか思わないで。ゆっくり下山して。いい? ゆっくりだよ」

「は、はい……」

「ホントはもっとテントの中で休ませてあげたいんだけど。ごめん、わたしはカリンちゃんを追いかけるから」


軽く屈伸して、息を吸って吐いて。


「先に行くね!」


山の斜面を、転ばないように気をつけながら降りる。

追いつくのは無理かもしれない。でも五合目まで向かっているんだから、到着地点は分かっている。

少しでも早く、カリンちゃんの元へ辿り着いて、頭痛を治してあげること。

今、わたしができるのはそれだけ。


急いで下山していたら、後ろからものすごい速さでイグニス副団長が追いかけてきた。


「アイリス様っ!」

「え⁉」

「失礼っ!」

「え、えええええっ⁉」


走りながら、横抱きに抱き上げられて。


「い、イグニス副だんちょおおおおおお!」


宝珠とかジョナサン君とか騎士団の指揮とかは!


「指示は出しました! 今はアイリス様をカリン様の元にお届けすることが最優先でしょう!」


さ、さすが! 副団長! 状況判断のできるいい男!


なんて言う余裕もない。


すごい速さで、山道を駆け下りるというよりも、跳躍してませんか!

うわあああああああ! イグニス副団長の身体能力がすごすぎる!

恥ずかしいとかそんなこと、考えている余裕はない。わたしはただ、イグニス副団長にしがみついていることしかできない!

イグニス副団長の邪魔にならないように。とにかく荷物と化す。


走って、走って……。


「ナイジェルっ! 待てっ! 止まれ!」


お神輿テントでカリンちゃんを運ぶ青の騎士の皆さんと、それにどうこうするナイジェルさんに追いついた!


「どうした⁉」


ナイジェルさんが振り向いて、イグニス副団長を見て。


「いいから止まれ! カリン様を下ろせ!」


ナイジェルさんと青の騎士の皆さんは、戸惑いながらも言われたとおりにお神輿を下ろして。

わたしは、イグニス副団長に抱き上げられたまま、叫ぶ。


「カリンちゃんをこっちのテントに!」


叫びながら、レベル5のテントを具現化する。


「テントが斜面から滑り落ちないように、騎士団のみんな、押さえてて!」


イグニス副団長はわたしをそっとおろしてくれて。

それから、戸惑っているナイジェルさんを押しのけて、お神輿テントの中からクッションごとカリンちゃんを抱き上げて。

レベル5のほうのテントにカリンちゃんごと入る。


カリンちゃんは相当頭が痛むのか、クッションにしがみついたまま、声も上げない。気絶しているのかも……と思った時に、


「あ……れ……」


小さな声が、クッションから漏れた。


「カリンちゃん、どう……?」


そっと近寄って、尋ねる。

今まで、油汗を流しながら、ぎゅうぎゅうとクッションにしがみついていたカリンちゃんが、信じられないみたいな顔で、わたしを見た。


「あ、アイリス、お姉様……?」

「頭痛、どう……?」

「痛みが……、急速に引いて……」


はー……、良かった……。

わたしの体から、力が抜ける。


「状態異常、回復……、頭痛にも、効いた……」


安心して、馬鹿みたいに口をぽかっと開けて。

わたしは、笑った。気が抜けて、力なく、笑った。


「え、え、え? お姉様……何かしたんですか? スキルアップとか……」

「あ、あはははは……、ごめんねカリンちゃん。もっと早く思い付けばよかったんだけど……」


イグニス副団長が、端的に、カリンちゃんに説明をしてくれた。


「あー……、なるほど、状態異常回復……、そ、そうか、言われてみれば……」


カリンちゃんも、何で今まで気がつかなかったんだろうって言って、二人で言いあって。よかったって何度も言って。


「あー、じゃあ、テント、解除するね」


斜面で、テントを支えてくれていた騎士団の皆さんにお礼を言って。

わたしたちは、そのまま五合目の拠点まで向かうことにした。


「んー……! 頭痛がしないって、なんて素晴らしいの!」


カリンちゃんはご機嫌だ。

それはそうだ。あの頭が割れるほどの頭痛がなくなったんだものね。


「でもしばらくはゆっくりしようよ」

「はーい」


スキルで火傷とか頭痛を治して、それで体に全然影響がないのならいいんだけど。


五合目の拠点でぼんやりしながらこれまでのこととこれからのことを考える。


聖女召喚。

聖女はカリンちゃん。目的は四つの宝珠の修復。で、今は三つ目まで直せたから、あと一つを残すのみ。


聖女の力っていうのはどうやら巨大な七人の神様の力を使っているらしい……というのがわたしの予想。根拠はあんまりない。ただ、大学の先輩たちから教授を受けたラノベの展開からの予測というか予想というか。


で、巨大な力を人間が使うにあたって、頭痛という弊害が出る。


その頭痛を治せるのが、状態異常を回復するテント。


わたしの力は神様の力なのか、それとも、この世界にあるスキルというものをわたしが使えるだけなのか。


疑問は残るけど。


疑問の解消なんてきっとできないよねえ。神様のところに乗り込んでいって、どうなんだ! とか聞けないだろうし。

仮に聞くことができても……、うーん。


たとえばパソコン。

たとえば銀行のATM。

仕組みなんて知らないけど、パソコンでいろんな情報を検索できるし、銀行のATMでお金は引き出せる。


カリンちゃんの聖女の力も、わたしのテントスキルも、パソコンとかATMとかと同じで、仕組みはわからなくても、使えるってカンジなのかな?


まあ、後一ヶ所のみだし、仕組みなんて知らなくてもいいか。


うん、それよりも、四つとも宝珠を修復した後のことを考えないとね。


考えるというか、覚悟を決めるというか。


……ごめんね、お父様、お母様。わたし、やっぱり優太お兄様と結婚はできないよ。兄としか思えないもの。


カリンちゃんと一緒に元の世界に帰って、ちゃんと言って。


……また、就職活動か。

うわあああ……。


いっそ地元で働くのではなくカリンちゃんが住んでいるあたりで職を得ようかな。

その方がいいような気がする。


大学の同期はほとんど九州で職を得ているから、他県に出ることは考えていなかったんだけど。


もしかして、この世界に召喚されたのって、わたしが地元を離れて、一人で、他県で生きて行けるようにって、神様がカリンちゃんと出会わせてくれたのかも。


なーんて。

さすがに違うよねえ。

単なる偶然。


でも、きっと運命かな。なーんて。


異世界に、たった二人だから、仲良くなれたのかもしれないし。

でも、きっと。日本に帰った後も仲良くできると思うんだよね。


さあ、とりあえず、四つ目の宝珠目指して、また馬車で移動になるんだから、その間いろいろ考えよう。


あれ? イマサラながらなんだけど……。考えると言えば……。

今回、カリンちゃんが宝珠を直したとき。


わたし、過去を見なかったな……?


あれ……?


どういうことだろう?

予測が違ったのかな……?


だけど、その夜。わたしは、壮大な夢を見た。


七人の神様。ううん、本当は十二人いた、彼らの夢を。



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