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第5話 疑問は残る。

 疑問は残る。

でもまあ、とりあえず、わたしのスキル『テント』とやらが、役に立つような感じでよかった。


わたしを採用するとお得ですよーって、主張できそう!

では、本腰入れて、売り込みを……。

と、思ったら……。

それまで黙っていたというか、茫然としていた聖女な美少女が、ようやく正気を取り戻したのか、喚きだした。


「何なのよ! ここはどこ何、あなたたちは何⁉ あたしを元の場所に返してよっ!」


あ、涙目。


そーかー。そうだよねえ。普通、こういう反応だよねえ。

いきなり誘拐されたようなものだものね。

予想界の出来事が起こった時、いきなりは怒れないのよ。わたしも昔そうだったから、わかる。

ショックが大きければ大きいほど、茫然とするの。

呆然とする期間が過ぎたら、ようやく「嫌だ」とか、自分の意見を主張できる。

うんうん、わかる。


「あと一時間で撮影始まるの! ようやく取れた仕事なのに!」


ロリータチックなご衣裳と、撮影ということは、この子モデルさん⁉

うわー、納得のお仕事。さすが美少女!

というか、いいなあ、お仕事があるの!


羨ましがっていたら、美少女、大号泣。あら……、ごめんなさい。

フツーは、異世界にいきなり召喚なんて、びっくりして、信じられなくて、怖いよね。しかも、もうすぐ撮影まであるのに……て、叫ばざるを得ない。


「聖女様……」


キーファー殿下とやらが、座り込んで泣きじゃくっている美少女に手を伸ばすけど、その手は叩かれた。


「あたしは聖女なんかじゃないっ! そんなの知らない! アンタたちが勝手にあたしを誘拐して、こんなところに連れてきて、聖女だなんか言っているだけっ!」

「いや、しかし……。宝珠には確かにあなたが聖女だと……」

「うるさい、うるさい、うるさいっ! あたしには無関係よっ! 帰してよ! 今すぐ元の場所に帰して!」


叫んで、顔を両手で覆ってまた泣きじゃくって。


えっと……、この状態じゃ、売込みは……難しいな。

どうしようかな。

でもまあ、美少女を泣かせている状態はよくないよね。

ちょっと考える。

マンガとかアニメでよくある「異世界召喚」系のお話だと……。

聖女が異世界に召喚された。もう日本には帰れない! っていうパターンが多い気がする。

日本には帰ることはできるけど、何らかの条件をクリアしないと帰れない! というパターンもあるけど。

ああ、自由自在に行ったり来たりもあるかー。

この場合、どうかな?

とりあえず、話しやすそうなジョナサン君に聞いてみる。


「ねえ、ジョナサン君。わたしとあの女の子って元の世界に戻れるの?」

「え、えっと……、それは……」


ジョナサン君は宝珠のブロニーおじいちゃんをちらっと見る。


「我らの国の四つの宝珠。聖女様が修復すれば……」

「帰れるのね?」


ブロニーおじいちゃんは頷いたけど。

……顔つきからすると、まだ何かありそう。

まさか、命と引き換え……とかじゃないよね。四つもあるんだったら、聖女の命と引き換えっていうのはなさそうかな。

あとは……結界の場所が、魔界の奥とか、ダンジョンで魔物を倒した先にあるとか。そういう系かもしれないけど。

今は……、泣いている美少女をなだめるのが先か。


わたしは美少女に近寄ってみた。


「ね、日本に帰れる方法、あるみたいだよ」


美少女がのろのろと顔を上げた。あー、泣き腫らした目でも美少女だな。


「あなたも……、日本人なのよね」

「うん。ほらこのリクルートスーツ見てよ。周囲のファンタジックな皆さんとは違うでしょ。大学四年生、絶賛就職活動中。不採用通知は四十九通! やさぐれている時だったのよ、この世界に連れてこられちゃったのは」


おどけたカンジに言ってみる。

この世界の人間じゃないよー。

あなたと一緒の日本人だよー。

同郷だよー。


安心してくれたのか、美少女は泣き止んだ。


「わたしが聖女様とかだったら、おおう! 職に就けるのかー。じゃあ五十回目で採用! ラッキー! だったのよねえ。でも、残念ながら、わたしは聖女様じゃなくて、テントとかいう訳が分からないスキルとやらが使えるだけみたいで、ちょっとは混乱しているんだけど」

「……お姉さん、混乱しているようには見えない」

「あー、まあ、就職活動で、圧迫面接とか、キツイこと、言われ続けたのに比べれば。異世界に召喚程度でおたおたできないって言いますかー」


セクハラもどきもあったしー。昭和ですかって感じの男尊女卑もあったしー。


「まあとにかく、あの白髭のおじいちゃんの言うことからすると、聖女様が四つの宝珠を修復すれば、日本に帰れるみたいだから」

「あたしが……?」

「まあ、他に方法がなければ、やるしかないかもね。あ、でも大丈夫。わたしも一緒に行くから」

「一緒に……?」

「そうっ! 一緒! あーっ! 分かった!」


敢えて大きい声で言ってみる。


「わたしのテント! 聖女様に同行するためのスキルなんじゃないかなあ!」

「え……? どういうこと……?」

「だって、すごーく大変な感じがするでしょ。で、疲れた後、回復って必要だよ絶対に! わたしのスキル、回復みたいだもん!」


聖女様の回復のためのスキル……か、どうかなんて、本当のところは分からない。

でも言い切ってみる。


美少女を泣き止ませて、前向きにさせる。

それから、もちろんわたしの就職!

面接官の皆様……、じゃなくて、異世界の皆様に、わたし、お役に立ちますよーって示すことができる。


一挙両得。それ以上。いろいろオッケーって感じに持っていく!

よし、やるぞー。


「ね。あなたが、聖女様なら、きっとわたしは、その聖女様のサポートなのよ。疲れたら回復する。ほら、疲れ果てていたジョナサン君が、わたしのテントに入って眠ったら、一気に元気になったでしょ! そういう感じ!」

「あ、そう……ね……」

「きっとそうだよ! ねえ、皆さんもそう思いませんか⁉」


ニコニコニコーっと、笑顔で話をふってみる。

とりあえず、一番偉そうな人。


王子様か、魔法団長……。


身分的には王子様のほうが上だろうけど。

王子様、まだ若いよね。多分、わたしより年下……。

金髪緑瞳で、彫りの深い顔。背はわたしと同じくらい。西洋人じゃなくて、異世界人だけど、ヨーロッパ貴族みたいなお顔では、年齢は分からないなあ。

うーん……。若い、王子様、ねえ……。王太子殿下ならともかく。

王様の愛人の息子さんとかだったら……権力的にも微妙よねえ。


それに、王子、王子ねえ……。

ネット小説とかの『婚約破棄モノ』の阿呆王子みたいに、『真実の愛』を求めて、婚約破棄して、悪役令嬢にざまぁされちゃう脳内お花畑系阿呆王子が思い浮かぶ……。


一人称『俺様』なんて、いかにも脳内お花畑の阿呆王子。


だったら、白の魔法団長のおじいちゃんと交渉したほうがいいよねぇ……。



12月1日から毎日更新予定です。

(12月中は毎日更新。1月からはペースダウンします)


よろしくお願いいたします。

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