第46話 宝珠が溶岩の下?
宝珠が溶岩の下?
ええと……。
まず今、わたしたちがいる東の山は活火山。
フィッツジェラルド神聖王国の方にはなぜだか被害がない。溶岩流はすべて他国に向かって流れて行く。
異世界ならではの不思議な現象なのか、それともあの白い巨人の神様が何らかの理由でフィッツジェラルド神聖王国を守ってくれているのかは、分からないけど。
とにかくマグマが流れているのよね。
あ、現在進行形で流れているんじゃなくて、今は流れていないけど、ちょっと前に流れた……かな?
火山が噴火して、溶岩が流れたせいで、宝珠が納められていたはずの祠が壊された。
うん、今じゃない。どのくらい前か分からないけど、現在進行形ではない。今は溶岩は流れてはいない。
あと、ジェラルドさんたちが調査できるってことは、多分火砕流ではなくて、溶岩流だよね……。
火砕流だったら、噴火で吹き出した火砕物が火山ガスとまざりながら一気に流れ下るのよ、しかも高速道路を走っている車並みのスピードで。怖!
魔法使いでも、そんな中で宝珠を探すのは無理。そんなことしないで逃げてーってカンジ。
溶岩流なら、マグマが流れ出るスピードはゆっくり。歩いて逃げられる。
そのくらいのゆっくり流れるマグマと一緒に宝珠が流されて……、次第にマグマが冷えて固まって……、その固まったか、固まりつつある溶岩の下に宝珠がある?
よくもまあ、そんなものを見つけられたものだわ。魔法師団ってすごい。魔法ってすごい。
で、ええと、とにかく、マグマが流れて、ある程度冷えたか、冷えつつあるマグマの塊? その中と過疎の下とかに、宝珠があると……。
って、ことは、やっぱり今、現在進行形でマグマが流れているんじゃない。
前に流れて、今は、冷えつつあるってカンジなのね。
うーんと、大学で受けた授業の知識を呼び起こせ!
たしか……、ハワイとかの例では、十五メートル程度の深さの溶岩湖が千度以下になって完全に固結するには一年程度かかったって。で、百度度以下にまで冷却するには四年程度の時間がかかったとか何とか。
現在の東の山の状況が、このハワイの例とイコールではないとしても。
固まりつつあるというジョナサン君の言葉からすると……。
絶対に百度以下ってことはない。
カリンちゃんが手で触れるような温度じゃない。
「あの……、宝珠の場所が分かったのはいいけど、それ、取り出せるの?」
魔法でなんとかなるのかな? 魔法師団の皆さんがいるんだし……。
それに、宝珠、溶けているんじゃないの? 不思議物質とかで、千度以上でも溶けないの? でも、壊れるんだよねえ……。どういう物質? 少なくとも日本にはぜったいにない不思議物質よねえ。魔法物質かもしれないけど……。
神様が作ったものだとしたら、壊れないようにすればいいものを……って、神様でもそういうのは無理かな?
「……取り出せるかどうか、それが問題で」
「だよねえ……」
「それでですね、危険はあるんですけど、聖女様にその、宝珠が埋まっているであろう場所に、行っていただけないかと……」
「は? あたし⁉」
これまで黙ってご飯を食べていたカリンちゃんが、思わずといったふうで、声を上げた。
「はい……。申し訳ないんですが、僕たちでは場所の特定までしかできなくて。後は聖女様のお力でなんとかならないか……と」
「さすがにこの手で触れないと、修復なんて無理よ!」
うーん、マグマの下の宝珠を、直接触れないで、修復……。む、無理そう……。
でも、取り出せないのなら、行くしかないよね。
「宝珠はどのあたりにあるの?」
ジョナサン君の説明をまとめると、活火山の山頂から、フィッツジェラルド神聖王国とは反対方向に、ゆっくりと流れて行った溶岩流。
その溶岩流が山のふもとまで流れて行ったみたいなんだけど。
まず、宝珠が納められていた祠の残骸が、八合目あたりで発見された。で、その八合目付近を魔法で探索したら、溶岩流の中というか、溶けて、流れて、冷えて、固まりつつあところで、聖なる反応があった……と。
「んー、じゃあ、八合目まで行くしかないかー」
高山病再びにならないように、慎重に、体を慣らしながら行きますか……。
体調と体力を考慮しながら、ゆっくりと八合目まで登って行った。今度は自分の足で。ラマ・グラーマに乗れば楽なのはわかっている。だけど、自分の体の様子を確認しながら、ゆっくりと歩いたほうが高度順応できそうで。
体調的に無理な場合は、一日で五百メートルも進まない。
ゆっくりゆっくり。テントで休みながら、山登り。
休憩の時には、テントを出して、なるべく休む。とにかくわたしとカリンちゃんは、騎士団の皆さんや魔法師団の皆さんより体力がないからね。
そうして少しずつ登っていくうちに、ようやく八合目。
とはいっても、今は東の山の、フィッツジェラルド神聖王国側にいるので。
これから上に登っていくのではなくて、横移動。
他国側に向かう。
なので、赤の戦闘兵団の皆さんたちが、拠点となる場所を選んで、ある程度地面をならしてくれている。
うん……、体を斜めにして寝るのは疲れが取れないからね。
平らになって、横になれるようにって。
テントが張れるようにもなって。ありがたいわ。
感謝しつつ、横移動。
でも、フィッツジェラルド神聖王国側から他国側に向かうにつれて、拠点を作るのも難しくなってきた。
というか、作れない。
山全体が溶岩流でも覆われているわけじゃない。川の流れというか、なんか人間の体の血管みたいに、枝分かれして流れながら、山の下のほうへ流れているから。
まあ、溶岩のない部分は普通に歩ける。
だけど、溶岩が流れたところからは……まだ煙が……燻ぶっていたり……。
うん、これ、触ったら熱い。火傷するどころか、触った部分の肉、溶けるんじゃない? そこまでしない? 大丈夫?
恐々進んで。
わたしとカリンちゃんが歩けない場所は、魔法でガードされた木の板とか、すのこみたいなのを、地面に敷いて、その上を歩く。
敷いてくれるのがねえ、赤の戦闘兵団の皆様なのよ。
「ごめんなさい! お世話をおかけいたします! 怪我のないように、ゆっくり慎重にお願いしますっ!」
いや、ほんと! 身分差のある世界とは言え、下っ端である赤の戦闘兵団の方々がっ! あれこれと土木作業……。危険任務、ご苦労様です……。
「マグマで火傷とかしないように気を付けて! もし何かあったらすぐ治療を回復をっ! 休憩きちんととってね!」
声掛けをしたら、赤の戦闘兵団の皆様に驚かれてしまった。
「オレら、下っ端で使い捨てですからねえ」
「お貴族様なんか、死んでもいいからさっさと仕事しろしか言われたことなかったのに」
「聖女様とアイリス様はお優しいですねえ……」
うわああああ。やっぱり身分差のある世界だよ、ここっ! 怖いなあ……。
わたし、人として当たり前のことしか言っていないし、危険なことさせてしまっているのを申し訳なく思うんだけどな……。
とにかく、赤の戦闘兵団の皆さん、青の騎士団の皆様。そして、白の魔法師団のみんなのおかげで。
わたしとカリンちゃんは、このあたりに宝珠が埋まっているという場所に辿り着いたのでした。




