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第44話 眩しい光に包まれて、思わず目を瞑って……

眩しい光に包まれて、思わず目を瞑って……それから、目を開けたら、何もない真っ白な空間だった。

上も下も、右も左も分からない。

足場のない場所に浮かんでいる。

宇宙とか、無重力空間だったら、こんなふうに浮くのだろうか?

でも宇宙なら暗いよね……?

何だろう、ここ……?


なんとなく上を向いて……ぎょっとした。


巨人が……いた。しかも、一体ではなく七体。


自由の女神とか、仙台にある高さ百メートルの観音立像とか。

そういう巨人が七人、わたしの周りをぐるっと取り囲んでいる。


わたしを見下ろしてくる十四の瞳。その顔も髪も真っ白。着ている服も、ギリシャの神様みたいな感じに白くて大きな布を身に纏っているだけ。腕も白い。体も髪も衣装も、全部が大理石で出来ているみたい。中性的な顔立ちで、男性か女性かも分からない。そもそも性別、あるのかな……。キーファー殿下みたいにきれいな顔立ちではあるんだけど、真っ白で陰影もないから、美形って感じもしない。


ホント、白い巨人。


ああ、そうか。真っ白な空間と思ったのは、ちがった。真っ白な巨人たちに囲まれているから、白い空間だと思ったんだ。


あまりに異次元すぎて、怖いとすら思えない。

考えることを脳が拒否。

目の前に見えているこの現象も、脳が受け入れられない。


巨人の一人の口が開く。


「なぜ、ここに?」


声なのに、まるで爆発音。耳を押さえても、脳ごと痛い。


「我らの存在が大きく、汝の存在が小さすぎるのだ」

「壊れた宝珠の時間を過去に戻せ。それが聖女の役目だ」

「お前は聖女を助け導き……」


もっといろいろ言われたけど、聞き取れない。鼓膜じゃなくて、脳に直接突き刺さるような大音響のハウリング。

言葉を聞き取ろうなんて無理。

痛い痛い痛い痛い痛いっ! それしか考えられない。痛みで気が狂う! ううん、気も狂えないほどに痛い! 痛い以外にもう何も考えられないっ!


ただ、頭を押さえて、体を丸めて、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い……!


もういっそ、気絶させて……と思ったら、どこからともなく小さな女の子の笑い声が聞こえてきた。今度は何⁉


なんとか薄目を開けたら……。多分、わたし、この場所、知っている……。


「あははははは! お兄様、もっと!」

「いいよ! 背中、押すからね! そーれ!」


ブランコに乗っている女の子。その女の子の背中を押している男の子は……。


「優太お兄様だ……」


ああ……、これ、わたしが五歳くらいの時の……。


北九州工業地帯が一望できる山。ケーブルカーとスロープカーを乗りついで辿り着く山頂。そこには展望台があって、それから、何故か子ども向けの滑り台とかブランコがあるの。わたし、このブランコに乗るのが好きだった。まるで空まで飛んで行けそうな爽快感。わたしの背中を押してくれる優太お兄様の優しい手。


ああ……、こんなこともあったっけ。


お父様とお母様はこの山頂から見る夜景がお気に入りで、わたしと優太お兄様をよく連れてきてくれた。夜景が素晴らしいのよ、この山頂。でも昼間も好きだった。


懐かしく思っていたら、また風景が変わった。


レセプション……とか? パーティ会場?

セミフォーマル的に着飾った男女が集まっているけど、名刺交換をしている人もいる。結婚式の二次会とかではないみたい。ビジネス寄りの会合みたい。

正面には大きなモニタ。天井には大きなシャンデリア。

何だろうこれと思ったら、大勢の人たちがいきなりしゃがみ込んだり、テーブルの下に隠れたりした。シャンデリアが揺れる。

地震?

そう思った瞬間に、揺れていたシャンデリアが落ちた。


「あ……っ!」


シャンデリアの真下には人がっ!


思わず目を瞑ったら……、スマホの着信音が響いてきた。


「はい……、はい、はあっ⁉」


電話に出たのは男の人。わたしのお父様に似ている? でも若い。


「あなた、どうなさったの?」


男の人のいる部屋に入ってきたのは、お腹の大きい女の人。わたしのお母様に似ているけど……若い。


男の人が、茫然としながら「……が、死んだ」と呟いた。


「え⁉」

「取引先のパーティに夫婦で参加していたところ、地震が起きて、シャンデリアが……」


あ、さっき見た風景のこと? 


「夫婦でって……優実さんも?」

「ああ。幸弘兄さんと優実姉さん、二人とも……」

「ご、誤報じゃないの? 病院に搬送されたとか……」

「その病院から連絡があったそうだ」

「ゆ、優太君は……」

「ベビーシッターと一緒に自宅で……」

「無事なのね……」


優太……って、優太お兄様?


さっき見たのはもしかして……。

優太お兄様のお父様とお母様がお亡くなりになった場面なの?


今見えている、お腹が大きな女の人がわたしのお母様で、そのお腹の中にわたしがいる……ってコト?


見聞きしたことのないはずの記憶。

過去の記録映像でも見せられているの?


でも、こんな場面を記録しているわけはない。


だとしたら……。


ああ……、そうか、カリンちゃんの能力を発動すると、何故だかわたし、過去を思い出して……。


でも、今回は、知っている過去を思い出すんじゃなくて……、わたしが知らない過去も見せられている……?


なんでだろう?

どうしてだろう?


分からないけれど、きっと過去の出来事なんだ。


頭が痛まなかったら、もっといろいろ考えられそうだけど……、痛い。

でも、さっきほどは痛くない。ハンマーで頭を殴られるレベルじゃなくて、ズキズキするレベル。


少しは収まってきたのかな……。だったら、良かったけど。


巨人も、過去らしき風景も、よくわからないまま。


聖女の役目とか……、あれは何だったんだろう?


わからないけど、やっぱりカリンちゃんが聖女の力を使うと過去を見る。


聖女の役目は、壊れた宝珠の時間を過去に戻すこと? だから、宝珠の修復イコール宝珠を過去に戻しているってことで、わたしもその修復作業に引きずられている……のかな。宝珠は過去に、わたしは影響を受けて過去を見るとか過去を思い出すとか……。

聖女を助け導き……って、やっぱりわたし、カリンちゃんのサポートのために召喚された……?


分からない。頭が痛い。


「ごめんなさい、アイリスお姉様っ!」


突然、カリンちゃんの声が聞こえた。

今度はわたしの過去ではなく、カリンちゃんの過去でも見せられるのか……。勝手にカリンちゃんの過去を覗きたくはないんだけど……。


「お姉様っ!」


泣きそうなカリンちゃんの声に、わたしはなんとか目を開けた。泣いている。泣かなくていいよって言いたかったけど、喉がからからに乾いていて、声が上手く出せない。

声が出ずに、息だけを吐く。


「アイリスお姉様っ!」

「アイリス様!」


カリンちゃんとジョナサン君と……、テントの外にはイグニス副団長も。

ああ、これ、過去とかじゃない。巨人がいた空間でもない。


わたしが、具現化したテントの中だ。

消えろと念じない限り、テントはずとそのままだから、気を失ったりしても、消えることはない。

良かった。

何が何だか分からないけど、頭の痛さはだいぶマシになったし、訳の分からない場面でもないし。どうやらテントの中で寝ている。

このテントの中だったら、そのうち回復するだろう。回復量も(大)だし。きっと、すぐに治る。


わたしはほっと息を吐いた。


「お姉様……、良かった……」


わたしが目を開けて、安心したみたいに、泣き出したカリンちゃん。

どうしたのとか、泣かなくていいよとか、何か言ってあげたかったんだけどない。


「アイリス様……、十日も目が覚めなくて……」


ジョナサン君の声に「十日も?」とか言いたかったんだけど、やっぱり無理で。


イグニス副団長は、わたしを見ると、すぐに、コップに入った水とスプーンを持って帰ってきた。


「アイリス様、まずはお水を」


カリンちゃんとジョナサン君が場所を開ける。イグニス副団長がわたしの近くまで進み出てくれた。


ああ、喉がカラカラで、声が出ないから。お水はありがたい。

スプーンで水を掬って、寝たままのわたしの口元に、スプーンをそっと寄せてくれた。

口の中に広がるお水が、恐ろしいほどに美味しい。甘露ってこういう味なんだろうか。

この世界、硬水だから、沸かしたお湯を冷ましたもののはずなんだけど……。


一口飲んで、二口飲んで。

続けて、少しずつ、水を飲ませてもらっているうちに、段々と、お水の味が普通になってきた。


ああ、普通の水が甘露に思うくらい、わたし、喉が渇いていたんだなあ……。


「あ、りが……、イ……ニス副……長……」


さすが気の利く男。今はお水がありがたい。


「まずは水分をお取りください。十日も目が覚めずにいたのですから。時々こうして水分だけはお口に入れされていただいておりましたが、それでも乾いていたのでしょう」


話してくれていることを理解していると示すために、わたしは頷いた。


「このテントの中でなければ、お命も危なかったかもしれませんが。こうしてお目覚めになったこと、安心しました」


わたしは、頷いた。


「ごめんなさい、ごめんなさい! あ、あたしが、力の発動を、試してみようなんて、いきなりしなければ……」


あ、そうか。そういえば、テントの中で発動したら、カリンちゃんの頭痛はなくなるかもしれないとか、そんなことを話していたんだよね。

で、宝珠がないのに、カリンちゃんがいきなり聖女の力を使ったから、わたし、カリンちゃんの手に触れて……。

つまり、カリンちゃんお力は、わたしに発動させられたということ……?


でも、わたし自身は過去に戻っていないよね。

過去を、見ただけ。

多分、過去、っていう感じだけど。


ブランコに乗って、優太お兄様に背中をしてもらったのは、確実にわたしの過去。

シャンデリアや若かりし頃のわたしのお父様やお母様の会話は……、多分、過去にあっただろうと思われること。


だけど、あの白い巨人たちは……、絶対に過去じゃない。


ラノベでよくある展開から推測すると……、あの神様たちが、何かしたとか。そういうご都合主義的な展開なのかな……。


うーん、神様。


もしも、この世界の神様が、あの白い巨人だとしたら。


わたしが今見た出来事は、神様がわたしに見せたことなのか。

それとも、宝珠がないのに聖女の力を発動してしまったことによる事故的なことなのか。


考えても分からない。


わたしの回復まで少々お待ちくださいませ……ってところかな。


とりあえずわたしは、なんとか片手を動かして、泣いているカリンちゃんの頭に手を伸ばし、その頭をゆっくりと撫でてみた。





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