第43話 複数人、十人以下の、声……
「複数人、十人くらいの人の、声……」
「うん。多分十人よりは少ないと思うんだけど。『戻せ』とか『時間』とか……かなあ……?なんていうのか、大音量でハウリング状態? 反響しちゃってよく聞こえない声が、わあわあ言っている感じで……」
大音量でハウリング……。それは耳が痛くなったり、頭が痛くなったりしそう。あ、だから頭痛がするのかな?
「他に気がついたことってある?」
「んー、なんていうのか、工事現場で大音響! みたいで、話しかけられているみたいだけど。何を言われているのか、うまく聞こえなくて」
「そっかー」
「『戻せ』とか『時間』とかも……、多分、そんなこと言っているのでは? って程度で。実は違う言葉かも」
「んー、違うことも想定して、でも、戻せと時間とくれば、時間を元に戻すとか? 過去に逆行とか? そういう感じかな~」
「かもしれない……」
さて、先輩たちに教えてもらったラノベの知識を借用。
わたしの脳内細胞、働け!
そして、先輩たちのような妄想を!
考えろ!
召喚された聖女が、聖女パワーで、宝珠を修復。カリンちゃんがやっているのはそういうこと。
でもその聖女パワーというのは何なんだ?
わたしの具現化スキルとは違うみたいだし。
わたしのスキルもなんだか分からないけどね。わたしとカリンちゃん、同時に召喚されたのに、使っている能力は全く違う。
具現化とスキルという言葉はこの世界にあるんだから、わたし以外にも、具現化という力を使える人は多分いる……と、推測される。スキルも同様。この世界にはなんらかのスキルはある。
だけど『テント』はない。この世界にはないモノ。
わたしの世界には『テント』はあるけど、それは単に日差しなんかを遮るだけのモノ。スキルなんて、ない。
んー、とすると、カリンちゃんの聖女パワーって言うのは、具現化ではなく、スキルではない……? 特別中の特別な力……。スキルだけど特別な感じ……? んー、分からない。
いや、宝珠を修復するための力を持つ女性を聖女とこの世界では呼んでいる……のはわかるの。
じゃあ、その特別な力の源は?
カリンちゃんが元々超能力者だったってことなのかなあ……?
わたしたちの世界では、普通の人間だったけど、こっちの世界に来たら使える力を有していたとかなんとか。
んー、いろんな説は考えられる。でも、考えたことが正解かどうかは分からない。
だけど、分からないまま放置じゃなくて、ちゃんと考えたい。
少なくとも、宝珠を修復した後の、すごい頭痛くらいは無くせるようにしてあげたいんだよね。そのために、聖女の力を知りたいんだけど……。
んー、宝珠を修復すると頭痛がして、で、その時に戻せとか時間とかの言葉が聞こえたような気がする……。うーん。手がかり不足。名探偵でもわかりませんね!
時間を元す……で、宝珠の修復……。
修復だから、壊れたものを修理……。
いや待てよ。
戻すで、時間ときたら……。
しかも、わたしも。何故だか過去を思い出すしねえ……。
もしかして、宝珠を修復って……、宝珠の時間を過去に戻して、元の状態にしているとか……。
「あはははは。まさかー」
考えすぎかなーなんて。
「まさかって、何ですか? 何か思いつきましたか、アイリスお姉様」
「あ、えーと……」
さすがに根拠もないのに過去に戻している云々なんて、思い付きというか、テキトーすぎることは言えない。ええとー。あ。
「あ、あのね。宝珠を修復するときなんだけど」
「はい」
「頭が痛くなってからテントに入るんじゃなくて。最初からテントに入って、それで修復したらどうかなーって」
今思い付いた。と言うか、もっと早く思い付いたらよかったのに。
「最初から、テントで回復状態だったら、頭痛いのもなくな……らないかもしれないけど」
「痛まないかも! ですね!」
喜びでカリンちゃんの目が輝いた! 初めて会ったときはピンク色の目だったけど、やっぱりあれ、カラコンで。今はちゃんとこげ茶色の瞳だけど。きらっきらだわ。
かわいい。
「痛まないと嬉しいなー」
「うん」
だから、東の祠の宝珠が見つかったら、今度はテントの中で修復をしてみてねー……って、言おうとしたら……。
「ちょっと実験してみます」
「え」
「テントの中で、聖女の修復パワーを使ったら、本当に頭が痛まないかどうか」
言いながら、カリンちゃんはまるで宝珠を手にしているかのように、両掌を合わせて。そして、力を発動してしまった。
「ま、待ってカリンちゃんっ!」
わたしは思わず手を伸ばして、カリンちゃんの腕に触れてしまった。
無駄に力を使って、頭痛の回数を増やすだけかもしれないから、今実験しないで、ちゃんと宝珠が見つかってから……と言う前に。
テントの中に光があふれる。
あ、あああああ……!
そして、わたしの視界は真っ白になって、何も見えなくなった……。




