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第41話 暇で、テントにはベッドがあって、ごろごろして。

暇で、テントで、毛布を敷いて、ごろごろして。

女の子が二人以上いたら、そりゃあもうおしゃべりするよね!


朝起きて、身支度をして、ご飯を食べて。おしゃべりをして。

昼ご飯を食べて、おしゃべりをして。三時のおやつを食べて、散歩をしながら、おしゃべりして。

夕ご飯を食べて、お風呂に入って、寝るまでおしゃべり。


超堕落生活!


侍女さんとか雑役メイドさんとかも増えたので、おやつが……、充実……!

このままでは肥える……。


な、なるべく、山の五合目と六合目あたりを往復して、体を鍛えねば……。


しかし、人間は易きに流れるのです……。


お茶とお菓子付きのおしゃべり楽しい……。


もう、わたしとカリンちゃん。姉妹かっていうくらいに仲良しよ!


話す話す話す! 朝から晩までずーっと一緒に居て、しゃべくりまくっているのに飽きない。仲良し。


カリンちゃんは、わたしの大学の仲間や先輩たちと違ってアニメとかラノベとかはあんまり知らないみたいだけど。

わたしの話はおもしろそうに聞いてくれる。

アニメソングなんかは、結構知っていた。

アニメは見なくても、コンビニとかでは流れているもんね……。

この世界にカラオケはないから、独唱的に歌う。

騎士や魔法師の人たちも興味深げに聞いてくれるし、山で歌うと肺活量的に訓練になりそうだし。

歌って、喋って。

このままずっとこんなふうに過ごしたいなーなんて、ちょっとは思うけど。

このままだとナイジェルさんたちが永遠に宝珠を探さないといけなくなるから、それはそれで大変。

それに暇になると、ちょっと優太お兄様のことを考えたり……。


なんてことを思っていたら、カリンちゃんがふっと……真顔になった。


「……アイリスお姉様」

「ん? なあに?」

「……あたしの話、してもいいですか?」

「もちろん!」


美少女で、モデルさんにもなったカリンちゃんのお話だから、美容系の話とか、モテとか、業界裏話とかかなーって、気楽に答えたんだけど。


カリンちゃんは、ベッドに腰を掛けたまま、じっとうつ向いたままで。


話というより、悩み相談とか、真剣なお話かと思って。

わたしも寝そべっていた体を起こして、ベッドに座る。


「……あのね、お姉様。あたし、今まで、友達、いなくて」


カリンちゃんみたいにきれいでかわいい女の子なんだから、クラスの中心人物になって、男の子からもモテモテで~なんて思うのに。


「一人も、いないの。クラスの女子からは嫌われるし。男子は付きまとって鬱陶しいし。それか揶揄ってきたりとか」

「カリンちゃん……」


掃き溜めに鶴レベルで、かりんちゃんがきれいでかわいすぎるから、遠巻きにされていたとか?


「遠巻きにして、無視してくれるんなら、それでもいいの。だけどね、人気のある男の子とかがいて、ソイツからあたし、告白されるでしょ。で、あたし、お断りするの。そうするとね……。もう最悪ルート」


カリンちゃんの口元が歪む。ああ、これは、相当嫌なこと、されて来たな……。

予想は、つく。

付くけど、わたしの想像より、カリンちゃんがされてきたことは……悪かった。


「その男を好きだった別の女子が居て、あたしがフッてになった心の男に前から好きだったとか言うのよね。それで、そいつらはめでたく恋人同士になりました。二人でイチャついていればいいものを、わざわざあたしの前でベタベタするのよ」

「そ、それは……」


酷いというか……そういう人たち、ムカつくんだけど。


「男のほうはね、あたしからフラれても、別の女から好きって言われるくらい、俺は持てる男なんだぞ。俺をフルなんて、見る目ない女だなとか。女のほうは、あたしの方が愛されているのよ、ふふん! みたいに」

「……そいつら、阿呆でしょ」

「うん、そうなの。阿呆よね。あたしがどうでもいいってシラケていたら、数週間で別れるくらいの馬鹿同士。で、分かれた理由がねえ、あたしのせいなんだって」

「……どうしてカリンちゃんのせいになるの」

「さあ? 馬鹿の考えは分からないわ。でも、そんなことばっかり何度も何度も……」


両手を、固く握って。カリンちゃんの声が震えて。


「……あんまりにおんなじことが繰り返されて、めんどくさくなって、告白されたら一応オツキアイとかもしてみたけど。くだらない自慢話ばかりされて、どうでもいいから放置していたら、相手の男は勝手に煮詰まって、オレのコト、好きじゃないだろって怒鳴って。うん、好きじゃないよって答えると、決まって言われるの。じゃあ、何で告白にオッケーしたんだって。面倒だからって答えたら、殴られそうになったり……。そんなのばっかりで」


酷いね、とか。

相手が悪かったね、とか。

もっといい人が世の中にいるよ、とか。


そんな薄っぺらい言葉、言えなくて。

かといってかける言葉はなくて、わたしはただ、立ち上がって、カリンちゃんをそっと抱きしめた。


泣いているのか、カリンちゃんの体が震えている。

つらかったよね。

なんて、言えないけど。


「……だから、あたし、芸能人になろうと思ったの。あたしくらいのレベルの顔の女の子なんて、芸能界なら当たり前にいるでしょう? だったら、芸能界だったら、あたし、普通に生きられるかな……って」


芸能界……歌手とかモデルとか女優とか。

多分、カリンちゃんは、そういう人たちの中に紛れていても、もっとずば抜けてきれいでかわいいと思う。

たとえば美少女コンテストとかに出たら、審査員が満場一致で優勝者に選ぶとか。

街の中で歩いていたって、きっと目を惹かれる。スカウトとか、すぐにされそう。


「だから、モデルになりませんかって、声を掛けられた時、すぐに話に乗った。トレーニングも順調にこなして、ようやくモデルデビューできるって時に、この世界に召喚されて……」

「それは、悔しいね……」


普通に、生きて、みたくて。

ようやく、その場所を掴めそうだったのに。


聖女として、召喚。


「うん。せっかく、普通に生きられるかもって思ったのに、この世界で聖女なんて特別扱いされて。ホント呆然としたし。召喚なんてした上に、あたしに一目ぼれしたとか何とか言ってくるキモい王子なんてぶん殴ってやりたかったけど……」


だけど、と。カリンちゃんは笑顔になった。


「この世界に召喚されて、あたし、アイリスお姉様に出会えた。それだけは神様に感謝してる」

「カリンちゃん……」




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