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第4話 偽名じゃないけど本名じゃない名前!

偽名じゃないけど本名じゃない名前!

わたしの名前は「あやめ」なのよね。で、植物のあやめの学名って「アイリス・サングイネア」っていうのよね。大学のゼミで資料を作る時、学名をチェックしていたから覚えている。

わたしの本名の「白石あやめ」じゃないけど、「あやめ」の学名だから、嘘じゃない……って言っていいよね。


「えーと、わたしはアイリスって呼んでくれる?」

「かしこまりました! アイリス様! それで、この『テント』のスキルは、どうやって身体能力や魔力を回復するのですか?」

「いや、そんなこと言われても、わたしの世界にスキルなんてものなかったし、能力を持っていても、使い方なんて分からない……けど。まあ、テントだから、とりあえず、中に入ってみては……」


うん、スキルなんてマンガとかアニメの世界。

テントは……、入るしかないんじゃないかな? まさかテントで相手を殴れとか言わないよね……? いや、それもありなのか……?


ジョナサン君は「わかりました!」と言って、テントの中に入って……。


「わあ……狭いですねえ」


うん、確かに狭いだろうね。

一人用のテントだし。ジョナサン君、見た目と身長、一般的な中学生の男の子的だから、手ントの中で、膝を抱えて座ってなんとか入れるってカンジ。


「何か、あったかい気がし……、ま……す……」


ジョナサン君の目がとろんとしたと思ったら、膝を抱えたまま、そのまま眠ってしまったよ……?


えええ?

何が起こっているんだろう?


あっという間にジョナサン君、「ぐーかーぐーかー」って、マンガみたいないびきをかいて寝ていますが。


えええ? 眠っちゃうの? 王子様とか身分の高い人の目の前で? こんなに大勢の人たちがいるのに?


これが若さか……? なんて、冗談かましている場合じゃない。


ブロニーおじいちゃん団長とキーファー殿下が「ジョナサン、キサマ、何をやっている!」って怒鳴った。

あ「激おこぷんぷん!」みたいな顔になっている。

あ、表現がちょっと古いかな。

これ、大学の授業で習ったんだけど。「ギャル語怒りの6段活用」っていう表現があって。

おこ(弱め)

まじおこ(普通)

激おこぷんぷん丸(強め)

ムカ着火ファイヤー(最上級)

カム着火インフェルノォォォォオオウ(爆発)

激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリーム(神)なんだって。

あははは。

おもしろーいって、授業で学生はみんな笑っていたんだけど。

いや、これ、流行語大賞とかにノミネートされただけじゃなくて、教授とか「リズミカルな響きは耳に残る」「何より本当に流行っていることが信じられないほどインパクトのあるダサさ」とか真面目な顔で講義してくれたの。

ま、そんな感じでお二人は、やや強めの怒り顔。

青マントのイグニス氏は、さっきからずっと無表情キープ。

ちなみに聖女とされた女の子は……、さっきからずっと無表情っていうか、茫然としたままだ。


ええと、どうしよう。

わたしが何か場を取り持つべきか……。こういう場面で上手いこと言えるようなら、四十九回も就職試験に落ちていないか……。あああ……。


果てしなく落ち込みそうになったら、突然、ジョナサン君の目が「かっ!」と開いた。


「これ! すごいです!」


え、え、え? 何?


ジョナサン君がテントの中から這い出てきて、そして言った。


「一晩寝て休んだくらいに体がすっきりしています! 超回復です!」


ぴょんぴょん跳ねているし。

やっぱり子犬みたいだなー。


「そ、そ、そう、なの?」

「はい! 聖女様の召喚儀式で、使い果たしたはずの体力と魔力! 完全に回復しています!」


魔法陣的な図形の周囲にへたり込んでいる他の白いローブの人たちと、ジョナサン君。

比べてみたら、確かに全然違う。


他の人たちは、疲労困憊。なんだったら、目の下にくまもできている。

ジョナサン君は、元気ハツラツ。某ドリンク剤のテレビコマーシャル……おっと。


まあ、そのくらいの、差。


「よ、よかったね……」

「はい!」


ジョナサン君も元気でよかった。

わたしのテントのスキルも使えそうでよかった。


でも……、さっきの鑑定みたいな表示では……。


具現化スキル『テント』 LV1 回復量(小) 一日に一人分だけ、身体能力や魔力を回復可能……って、ことだったよね……?


回復量(小)なの? (大) じゃないの?









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