第34話 そうか、わたし、苦しかったんだよね
そうか、わたし、苦しかったんだよね……。
道を自由に選ばせてもらっているのではなくて、狭い選択肢の中からしか選べない。
贅沢と言えば、ゼイタク。
でも、わたし、大学に入って、自由ってものを知ってしまった。
カラオケ、ライトノベル、アニメ……エトセトラ。
偏った趣味かもしれないけど、大学の先輩たちの教えてくれるものは、つまりなんでもあり。
公式はこうだけど、こんなふうに解釈もできる。
二次創作に、BL。原作では表記などはないのに、妄想を羽ばたかせて、好みのカップリングを作ったり、キャラクターの過去を捏造したりとか。
「妄想は、自由! 表現の自由よ!」
熱く語ってくれた先輩。主張してくれたことの意味は半分も理解できなかったけど。
そうか、自由って、本当はなんでもありなんだなって。
心の求めるままに自己を主張していい。
わたしが、大学で、同級生や先輩たちに教えてもらったこと。
「でも常識の範囲でね☆ 自分の主張は自由だけど、相手に自分の意見を押し付けちゃうのは駄目だよ☆」
だったら……、お父様とお母様がずっとわたしにしてきたことは……。
自由に選んでいい……ではなくて、押しつけなのかな。
わたし、押し付けられてきた……?
優太お兄様とわたしに結婚してもらって、優太お兄様が本当にお父様とお母様の息子になる。
お父様とお母様の夢を。希望を。念願を。
ああ……。
優太お兄様は大好きだけど。
優太お兄様と結婚なんてできないよ。
ごめんね。
お父様とお母様にそう言ったら。
お父様もお母様も、きっと驚く。驚いて……、どうしてあやめちゃんはそんなことを言うの? 優太さんのこと、好きでしょう? 本当の家族になりたくないの?
わたしを責める。
ごめんなさい、無理ですって言っても、わたしが、納得して、優太お兄様との結婚を承諾するまで、きっと……。
自由選択に見せかけた押し付けだったんだ。
わたしが、その押し付けを、完全に拒否できれば良かったのに。
わたしも、中途半端だ。
お父様とお母様の、期待を裏切りたくない子ども。
両親に対する申し訳なさと。
両親に反発する心。
両方が、ある。
就職活動をして、親元から離れよう。
でも、完全な親子断絶じゃないの。
中途半端な逃げ。
半端だから、きっと、就職先が決まらなかった。
半端だから、内定先は決まらなかった。
多分、そういうこと。
内定が取れずにいたまま、大学を卒業してしまったら。
逃げきれずに。
仕方がないと言いながら、優太お兄様と結婚したのかな……。
あああ……嫌だな。
そう思った瞬間に、ふっと。意識が元に戻った。
南の時と同じように。
カリンちゃんが宝珠から手を離して、へたり込んで。
マグノリアさんとカメリアさんが、左右からカリンちゃんを支えていた。
「大丈夫ですか、聖女様!」
「う……、頭、痛い……」
ぐったりとしているカリンちゃん。西の宝珠が光を放っている。カリンちゃんが修復したんだ。
早く、テントに連れて行かないと。
回復を……って思いながら、わたしは気がついた。
そういえば、南の結界島で、カリンちゃんが宝珠を修復した時。
あのときもわたし、優太お兄様のことを思い出していた。
「カリンちゃんが、宝珠を修復すると、わたし、何故だか優太お兄様のことを思い出す……」
何故だろう?
何か関連があるのか……、それとも……。
優太の兄様のことを思い出しているだけなのか。それとも……過去の記憶が刺激されたということなのか……。
考えても分からないけど。
ただ、不思議だなって……、この時は、ただ、そう思った。
それよりも、カリンちゃんとのほうが心配だった。




